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ベビーアスピリン、名前はベビーでも大人用|胃カメラや大腸カメラを受ける時にはベビーでも普通のアスピリンでも、アスピリンと名のつくものをのんでいたら医者に伝えよう

ベビーアスピリン
かわいい響きです。
赤ちゃんではない、ベビーについてのお話です。

参考記事
・バファリンとアスピリンの微妙な関係
・旅の常備薬。海外で薬を買うとき気をつけること

ベビーアスピリンとは

大腸内視鏡検査は、のんでいる薬、全身状態をチェックした上で検査を受けていただきます。

この時に大切なのが、血をいわゆる「さらさらに」する薬を飲んでいるかどうかです。

脳梗塞や狭心症など血管が詰まる病気予防のために
アスピリン、プラビックス、パナルジン、エフィエントなどなど、
書き出すといくらでもありますが、
血をさらさらにする、抗血小板薬をのんでいると、
ポリープを切るなど処置後出血の原因となります。

検査前に入念にこのたぐいの薬を服用していないか問診します。

アメリカから大腸検査を受けにこられた方に、このたぐいの
抗血小板薬(Antiplatelet agents)をのんでいないか聞くと
「ベビーアスピリンのんでいるよ」
「友達もみんな、薬局でかって健康のためにのんでいるよ」
みたいな感じです。


(Citation: walmart.com https://www.walmart.com/c/kp/baby-aspirin)

baby bed ベビーベッド 赤ちゃん用ベッド
babies’ wear ベビー服
baby face ベビーフェイス 童顔

ベビーが付くことばは、赤ちゃん 関連ですが、

「ベビーアスピリン」は「赤ちゃん用のアスピリン」
ではありません。

ベビーには「少量」の意味があって、

ベビーアスピリンは赤ちゃん用ではなく、
アメリカでは
大人用の低用量アスピリンをベビーアスピリンとよびます。

通常のアスピリン量が330mg
それに対して、低用量アスピリンは100mg~81mg

アメリカ人、アスピリン大好きで
脳梗塞予防のため、朝起きたらベビーアスピリン1錠
なんか体調すぐれないので、アスピリン
常備薬です。

ベビーアスピリン、低用量アスピリンには血栓を予防する働きがあり、脳梗塞や心筋梗塞の予防となります。

さらには、アスピリンが大腸がんを予防する働きもあります。

参考記事
アスピリンに大腸がん予防効果あり

いいことずくめの、アスピリンですが
逆に胃や腸からの出血、脳出血など重篤な副作用もありますので、自己判断でのむのは、やめておきましょう。

胃カメラ・大腸カメラ検査前にアスピリンを休薬するべきか

アスピリン(アセチルサリチル酸)は血小板の作用を抑え、血を、さらさらにする働きがあります。

その昔、10年ほど前までは
アスピリンを飲んでいる時に、
胃カメラ・大腸カメラ検査時に
生検(ポリープや腫瘍の組織を採取)すると、
出血の危険があるので、
検査1週間前からアスピリンを止めましょう
と休薬していました。

しかし、アスピリンを止めることで、
血栓ができ脳梗塞を起こしたりすることの方が危険であることが明らかになりました。

アスピリンなどの抗血小板薬は、検査の時に休薬する方向性から、真逆の継続下で検査する方向性に今はなっています。

2012年7月の日本消化器内視鏡学会からの消化器内視鏡診療ガイドラインにも明記されています。

アスピリンなど抗血小板薬をのんでいても、胃カメラ、大腸カメラ検査できます。

内視鏡検査前に、医師から処方されている
アスピリンを自己判断で
「休薬しない」ようにしてください。

生検はアスピリンをのんでいても大丈夫ですが、
大腸ポリープを「切除」するとなると休薬が必要です。
その場合は主治医の許可をえてから、アスピリン休薬です。

参考記事
・胃カメラ検査時のアスピリンなど抗血栓薬服用について

まとめ
胃カメラ・大腸カメラ検査前に、医師から処方されている
アスピリンを自己判断で「休薬しない」

サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針

厚生労働省から抗微生物薬適正使用の手引が発表されました。
抗生物質を適正に使いましょうという手引きです。
かぜを引いたら抗生物質が全てに必要なわけでなく、逆に抗生物質を何が何でも使わないのが正しいわけでないという話です。
必要な時のみ適切に使いましょうという手引きです。

(抗微生物薬適正使用の手引きに関する参考記事)
いいものとどいたよ。抗微生物薬適正使用の手引き 厚生労働省

普段健康な方(基礎疾患がない)の下痢、特にサルモネラ、キャンピロバクターについてのお話です。

食中毒で多い、サルモネラ腸炎、カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎に抗生物質が必要かどうかについてです。

腹痛、それも我慢できないしぶるような腹痛、下痢、発熱で受診される方、食中毒の可能性を疑って食べたものを聞きます。

卵や牛レバ刺しなどから感染するサルモネラ腸炎
加熱不十分な鶏から感染するカンピロバクター腸炎
の可能性を想定しての問診です。

病原性大腸菌、ノロなどの可能性ももちろん考えながら診察しますが、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎に絞って書きます。

サルモネラであれば潜伏期間が半日から2日程度
キャンピロバクターは潜伏期間がややながく2日から7日程度

体調悪くなる前1週間ぐらいの間に
火の通っていない鶏、
保存状況が怪しい卵など
食べた記憶ないか問診します。

もしあれば、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の可能性高く、便を培養して原因菌を確認します。

今年も、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎、中島クリニックで多数経験しています。
鶏からのキャンピロバクター腸炎、ホント多いことに驚きます。
生の鶏、余り火の通っていない鶏にはお気を付けください。

私は、鶏サシは絶対に食べないようにしています、そして患者さんにも、そのように必ず指導しています。
生が美味しいのは分かりますけどね。
キャンピロバクターなどという病気を知らなかった大学2年頃までは気にせず食べてましたけど。
キャンピロバクター腸炎、その後に頻度は低いながらに起きる手足の神経が麻痺するギランバレー症候群を診ていると、
キャンピロバクター腸炎の怖さ身にしみます。

抗微生物薬適正使用の手引に明記されています。
サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針
「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨する。」
なっています。

中島クリニックでも、健常者の全身状態のよい軽症下痢に対して、抗生剤は投与していません。
逆に抗生剤を投与することで、腸内細菌バランスがかわり下痢が長引くことがあります。
健康な大人でサルモネラ腸炎に抗菌薬治療をしても、
下痢や発熱などの症状期間が短くならないとの報告、さらには保菌状態を長引かせる報告もあります。

ほとんどの、軽症の健康な大人のサルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎は抗生剤なしで治ります(self-limiting)。

ここまで、抗生剤不要の話が中心でしたが、
絶対に抗生剤を投与しないわけではなく、重症度が高い下痢血便、海外渡航後の高熱を伴う下痢には、便検査(便培養)した後に、抗生剤必要と判断したら投与します。

大事な点は「基礎疾患のない健常者の軽症腸炎」で抗生剤不要であるということです。
「基礎疾患のない」
「軽症」
の2点がポイントです。

「基礎疾患」とは、人がもともと、もっている慢性的な病気のことですが、

感染症が悪化する危険がある「基礎疾患」は
以下です
・3 カ月未満の小児又は65 歳以上の高齢者
・ステロイド及び免疫抑制剤投与中の患者
・炎症性腸疾患患者
・血液透析患者
・ヘモグロビン異常症(鎌状赤血球症など)
・腹部大動脈瘤がある患者
・心臓人工弁置換術後の患者

上記基礎疾患をもっている場合、敗血症(ばい菌が血液の中に入ってしまう)や重症化することがあるので要注意かつ、抗生剤投与を視野にいれる必要あります。

自己判断は危険ですので、体調不良時
必ず医師の診察をうけ、全身状態を評価
治療方針を仰いでください。

まとめ
厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引き
「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨する」

いいものとどいたよ。抗微生物薬適正使用の手引き 厚生労働省

所属する西宮市医師会から宅配物が定期的に届きます。
いつもは、西宮市の応急当番や二次救急病院リストや事務連絡が入っています。

それに加え、今回はA6サイズの厚生労働省からの小冊子
「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」
が入っていました。

たった7ページ、ペラッペラッの冊子ですが、内容の濃い濃い珠玉の一品です。
医師のみならず、誰もが読んでも損はない内容です。

急性気道感染症(いわゆる「かぜ」なども含む)
急性下痢症
にフォーカスをあてた抗生物質(抗菌薬)適正使用の手引きです。

厚生労働省からの抗微生物薬適正使用の手引、
シンプルかつ治療方針について根拠となった文献も巻末に列記されており、すばらしい内容です。

さらに、1点この手引きのよい点を強調しておくと、
対象を
「基礎疾患のない学童期以降の小児と成人」
と限定していることです。

基礎疾患とは、その人がもともと、もっている慢性的な病気のことです。
リウマチでステロイドを服用しているとか
糖尿病で治療中
などのことです。

手引きには、かぜや下痢をどのように治療するか、抗生物質が必要かどうかの判断について、記載されています。

手引きに記載されているのは、
「基礎疾患のない」かつ「軽症」と判断できれば、
必ずしも、抗生物質が必要なわけではないですよ
というメッセージです。

各論として、サルモネラ・キャンピロバクターなど食中毒の治療に関しては後日ブログに書きます。

(追記)ブログ記事
サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針

 

抗微生物薬適正使用の手引きは下記リンクからPDFダウンロードできます。

・抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 – 厚生労働省

高齢者の栄養状態がわかる簡単なアンケート| MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)

高齢の方が健やかに過ごせているか
食事、排泄、入浴などADL(日常生活動作)が保てているか
確認するために、

体重が減っていないか、
食事をとれているか、
外に散歩にでかけたりしているか、など
診察では、日常生活のようすを問診します

(おすすめ記事)
・肝硬変とサルコペニアの関係|サルコペニアって何だ。筋肉量低下による生活の質が低下

高齢者の栄養状態簡単な問診で分かるアンケートフォームがありますので紹介いたします。

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)です。

6項目の点数を足して評価します。
14点満点で、高い方が栄養状態良好です。

12-14 ポイント 栄養状態良好
8-11 ポイント 低栄養のおそれあり
0-7 ポイント 低栄養

6項目は
・食事量
・体重増減
・日常の動作
・ストレスの有無
・精神、認知症の有無
・BMI(身長と体重から計算する肥満度) からなります。

精神的ストレスの有無の項目は、漠然とした主観的なものではありますが、採血の必要なく、簡単に評価できるのがMNA-SF特徴です。

http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-5/z3.pdf
上記アドレスから、日本語問診票がダウンロードできます。

英語版しかありませんが、iPhone用のアプリもあります。アップルストアで「MNA」で検索するとみつかります。

MNA-SF、是非ご活用ください。

採血が必要となりますが、アルブミン(ALB)やコレステロール(T-Cho)などの測定、コリンエステラーゼ(ChE)のような肝臓の蛋白合成能を示す数値などもチェックすると、非常によい栄養の指標となります。

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)

(Citation: http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-5/z3.pdf)

A 過去3 ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、咀嚼・嚥下困難などで食事量が減少しましたか?
0=著しい食事量の減少
1=中等度の食事量の減少
2 = 食事量の減少なし

B 過去3 ヶ月間で体重の減少がありましたか?
0=3 kg 以上の減少
1=わからない
2 = 1~3 kg の減少
3 = 体重減少なし

C 自力で歩けますか?
0=寝たきりまたは車椅子を常時使用
1=ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない
2=自由に歩いて外出できる

D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
0=はい
2=いいえ

E 神経・精神的問題の有無
0=強度認知症またはうつ状態
1=中程度の認知症
2=精神的問題なし

F BMI
0=19 未満
1=19 以上、21 未満
2=21 以上、23 未満
3=23 以上

合計ポイント
12-14 ポイント 栄養状態良好
8-11 ポイント 低栄養のおそれあり
0-7 ポイント 低栄養

たばこを吸っているほうがアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?

一昨日、関西学院大学人間福祉学部4年生N君に「禁煙外来」について熱く語りました。
「なぜ喫煙をやめられないのか」を研究テーマとして卒業論文に取り組んでいて、実際にどのような治療に取り組んでいるかについてインタビューを受けました。

ニコチン依存症とは
ニコチン依存症の判断基準
禁煙治療成功率
禁煙治療外来とは別に、日常で禁煙をする方法
などについてお話いたしました。

熱心に参考資料を集め、真摯にインタビューしている姿、感銘をうけました。
すばらしい卒業論文になると期待しております。

さて、外来でよく聞かれる質問があります、
「たばこを吸っているとアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?」
「たばこを吸っている方が、ぼけにくいと読んだのですが」

答えは「NO」です。
タバコで、アルツハイマー病は増えます。

1990年前半に、
「タバコはアルツハイマー病発症予防に働く」
趣旨の論文報告がいくつかありました。

これらの論文の多くはcase control study(症例対照研究、後ろ向き検討)の手法を用いた検討です。
アルツハイマー病を発症した人、していない人の2群に分けて、それぞれの群がたばこを吸っている人が多いが少ないか比較するのです。

この方法で調査すると、アルツハイマー病を発症した人の喫煙割合が、発症していない人の喫煙率より低いデータがでました。
この結果から
「タバコはアルツハイマー病発症予防に働く」
と解釈したのです。

しかし、この検討には非常に大きな落とし穴があります。
喫煙者は肺がん、脳梗塞などさまざまな血管の病気のために、寿命が短い傾向があります。
喫煙者は他疾患で亡くなる人が多いため、アルツハイマー病を発症する人が相対的に減ります。

これが、タバコを吸う方がアルツハイマー病が減るように見えた理由です。

タバコとアルツハイマー病の関連を調べるためには、
case control study(症例対照研究)の後ろ向き検討ではなく、
タバコを吸う人、吸わない人を選んで、今後どのような病気なるかを年数かけて観察する、前向き検討であるcohort study(コホート研究)が理想です。

1990年後半になり多くのコホート研究の結果がでました。
その結果はいずれも、
たばこは、アルツハイマー病のリスクを高める結果でした。

(Citation: Breteler MM et al. Smoking and risk of dementia and Alzheimer’s disease in a population-based cohort study: the Rotterdam Study. Lancet. 1998 Jun 20;351(9119):1840-3)

喫煙のアルツハイマー病発症リスクは2.2
タバコで倍に増えます。

まとめ
たばこを吸っているほうがアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?
いいえ、逆に増えます。

レントゲンで肺炎が分からないことがあるのですか?

高熱、治らない咳などで病院に行って、
胸のレントゲンを撮ると
医者が「肺炎です、入院して治療しましょう」
肺炎で入院治療となるまでの経過はだいたい、こんな感じでしょう。

レントゲンで肺炎が分からないことあるのですか?

答えは「はい」です。

先日もレントゲンに写らない、肺炎を経験しています。

その方は高熱、治らない咳で中島クリニックを受診しました。
聴診器で胸の音を聞くと、片方の肺でゴロゴロという雑音(ラ音)が聞こえます。
聴診で肺炎と診断いたしました。
肺炎の程度を確認するため、胸部レントゲンを撮ると
「きれいな肺」です。
聴診では明らかに肺炎の音がするので、確認のために採血いたしました。
採血では白血球増多、好中球の増多あり、明らかに細菌性肺炎です。
胸部CTを撮れば、もちろん肺炎の影は見つかります。

レントゲンに写らない、
正確には肺炎の影が淡いため
胸のレントゲンでとらえられない肺炎、あります。

だからこそ、丁寧に聴診を行って、異常な呼吸音がないか耳で確認して、異常に気づくことが大切なのです。

市中肺炎(健康な人もしくは軽い基礎疾患をもっている程度の人がなる肺炎)の原因菌で多いのは
肺炎球菌
インフルエンザ桿菌
マイコプラズマ
です。

特にマイコプラズマ肺炎は、レントゲンで分かりにくいこともあるのが特徴です。

入院せずに治療出来る程度の病状であれば、
胸部レントゲン正常でも肺炎、
ありうることは、何となく想像できるでしょう。

では、入院が必要なほど重い肺炎で
胸部CTで影が分かるけれど、胸部レントゲンで分からない肺炎
あるのでしょうか?

答えは
「ある」
のです。

こんな報告が先日ありました。

 

Self WH et al. Community-Acquired Pneumonia Visualized on CT Scans but Not Chest Radiographs: Pathogens, Severity, and Clinical Outcomes. Chest. 2017 Aug 9. pii:S0012-3692(17)31392-2.

アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビル、
ヴァンダービルト大学病院が中心となって、
市中肺炎で入院した大人2251人の胸部レントゲン、CT、入院経過などを詳細に検討しました。

入院が必要な肺炎、イコール比較的重症度の高い肺炎です。
ほとんどの症例は胸部レントゲンで肺炎を認めています。

しかし、
3%は胸部レントゲン正常、だけど、肺炎でした。

入院が必要な程の重症度でも、胸部レントゲンに肺炎が写らない事があるとは驚きです。

胸部レントゲンに写る、写らないの差はあっても、
入院期間、敗血症、その他重症度に差はありませんでした。

まとめ
肺炎診断に、胸部レントゲンは欠かせない
まれに、胸部レントゲンに写らない肺炎もある

 

運動や重力負荷が体に大切|宇宙飛行士の骨密度減少

昨日、市民フォーラムで「身近な生活習慣を見直してみよう
~最適睡眠時間、運動、体重、食事、アルコール、タバコ、サプリメント~」と題して講演させていただきました。
(参考記事:中島クリニック院長が西宮市医師会市民フォーラムで講演いたします)

私は生活習慣一般の話を担当させていただき
泌尿器科の吉岡先生からはCKD(慢性腎臓病)について
栄養科学研究所鞍田からは具体的な食事についてご講演いただきました。

フォーラムで他の先生方の話を伺い、改めて減塩、運動の大切さを再認識いたしました。
フォーラムを終えての雑感です。

昨日は、久しぶりの秋晴れ、遊びにでかけたくなるような爽やかな気候でした。
天気がいいのでみんな出かけてしまって、フォーラム参加者が少ないのではないかと不謹慎な思いがよぎった瞬間もあったのですが、全くの杞憂でした。
300人を超える方々にフォーラム参加いただき盛会となりました。行楽の誘惑に負けず、参加いただき誠にありがとうございました。

私はトップバッターとして、生活習慣病予防、広い範囲のお話をさせていただきました。
病気の治療もちろん大切ですが、ほんの少しの生活スタイルの改善で簡単にできる「予防」も大切です、というメッセージを懸命に伝えさせていたきました。
100回以上「予防」連呼した気がします。

運動に関して、
理想は毎日緩やかな運動ですが、
週1回だけする運動でも、
十分に病気を予防する働きがあることを紹介いたしました。

(参考記事:週末だけ運動する『Weekend Warrior週末戦士』でも効果あり。死亡率低下|忙しくて毎日運動できない方に朗報。週1-2回だけの運動でも有効)

鞍田先生の話で興味深かったのは日本人の塩分摂取量についてです。

日本人塩分取り過ぎです。
Intersalt Cooperative Research Groupで世界の塩分摂取量を調べたら、上位3位はアジアの国。
中国、日本、韓国の順です。

日本は世界第2位。

1位: 中国 14.3g/日
2位: 日本 12.4g/日
3位: 韓国 12.1g/日

参考までに
米国 8.3g/日
デンマーク 8.2g/日
と10g未満です。

さらに時代をさかのぼり、石器時代は
塩分摂取量0.5-3g/日
と塩分ほとんど撮って居なかったのですね。昔は塩は貴重品でした。

現代人、とくに日本含めたアジア、塩分取り過ぎは明らかです。

鞍田先生のスライドで、自身が骨折して片腕ギブスをしている写真がありました。
骨折しているあいだ筋肉が落ちないように蛋白質を普段以上に摂ってすごしたけれど、
治ってギブスがとれた腕はやせ細っていた。
運動や重力の負荷がなければ、いくら栄養をとっても筋肉はつかない。
宇宙飛行士が宇宙で運動をしていても、地球に帰ると筋肉や骨が衰えていて立てない。
という話印象的でした。

ほんと、その通りなんです。私も骨折経験者です。
中学時代に利き手前腕の骨を骨折したことがあります。
ギブスをしていると服を着替えるのも一苦労。
片手ギブスしていると、定規で線をひくのも大変です。
トイレの時は、ほんと困りました。とくに大の時。

1ヶ月ギブスして、ギブスをはずしたその腕をみた瞬間、余りにもやせ細った自分の腕をみて愕然とします。
廃用性萎縮、使わないと筋肉目に見えて衰えます。

運動負荷ほんと大切です。

宇宙での話がでたので骨密度の話を紹介しておきます。
聞きかじった知識なので、数字うろおぼえですが、
無重力空間では1ヶ月で平均2.5%骨密度減少、6ヶ月で15%も減少すると、聞いた覚えがあります。

調べたらNASAのデータありました。

(Citation: Subregional Assessment of Bone Loss in the Axial Skeleton in Long-term Space Flight. https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/experiments/118.html)

国際宇宙ステーションで過ごした宇宙飛行士の骨塩量の変化、地球に帰ってきてからどれぐらい回復するかの調査結果が公表されています。
・骨の外側(皮質)は平均1ヶ月で1.6-1.7%骨密度減少、
・骨の内側(柵状組織)は平均1ヶ月で2.2-2.5%骨密度減少、
・宇宙飛行は平均で11%の大腿骨骨塩量減少、減った骨塩量は地球に帰って1年経っても部分的にしか回復しない、
・骨密度低下が著しいのは骨盤、大腿、下腿の骨

重力による負荷は、筋肉のみならず、骨にも大切なことがわかる報告です。

地球に戻った宇宙飛行士が、自力で立てず、抱きかかえられながらスペースシャトルから降りる姿、納得できます。

まとめると
・日本人は1日12-13gも塩分とっている。減塩意識する必要ある。
・運動や重力の負荷がないと、筋肉、骨密度は目に見えて落ちる。

塩分、運動に関する雑感でした。

マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプ|C型肝炎治療は12週間からさらに短縮され8週間治療時代へ

C型肝炎治療薬マヴィレット配合錠、腎障害や耐性遺伝子変異があっても効果の高い、いわば優等生タイプの治療薬が先日製造認可を受け、早ければ年内にも処方できるようになります。

C型慢性肝炎は、インターフェロンフリー治療(インターフェロンを使わない治療)の登場により、100%近く治る病気となりました。

つい2年ほど前まで治療の中心だったインターフェロン治療に代わり
・ハーボニー(ソフォスブビル、レディパスビル)
・ヴィキラックス(オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル)
・エレルサ/グラジナ(エルバスビル/グラゾプレビル)
などが現在治療の中心となっています。

今月新たな、インターフェロンフリー治療薬が製造承認を受けました。
マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)です。

(Citation: https://www.healio.com/)
アメリカでは1ヶ月先行して8月にFDAの承認を受けています。

ひとことで、新しいインターフェロンフリー治療薬、マヴィレット配合錠をあらわすとすれば、
「優等生タイプ」
です。

参考記事
・2015年以降のC型肝炎治療はインターフェロンフリー治療(DAA)が主流
https://www.nakajima-clinic.com/2015/09/279/

・いよいよ最終コーナーにさしかかったC型肝炎治療
http://www.nakajima-clinic.com/2015/09/276/

従来のインターフェロンフリー治療薬、
効果は十分に高くすばらしい治療薬です。
しかし、
腎機能障害があるときには使えない
ウイルスジェノタイプが1b以外使えない
L31Y93耐性変異があるときには避けた方がよい
などなど、
薬によりそれぞれ細かい注意点があり、
患者さんの腎機能、C型肝炎ウイルスの耐性変異など全てを総合的に判断して、治療方法を決定する必要がありました。

しかし、マヴィレット配合錠は、これら全ての問題をクリアしています。
・腎障害があっても治療できる
・耐性変異をもっていても、効果がある
・ウイルスジェノタイプは1b含め、どのタイプでも効く(これをパンジェノタイプといいます)
さらには
・従来インターフェロンフリー治療が12週間だったのが8週間で終了する(注意:他治療で消えず再治療症例は12週まで延長可)
・過去に他の治療で消えなかった患者さんにも効果がある
と、どような背景、基礎疾患をもったケースでも効く、まさに優等生タイプの治療薬です。

(Citation: マヴィレット配合錠添付文書)

国内第III相試験のデータでは
初回治療では
ジェノタイプ1(日本人に最も多いタイプのウイルス)では、
腎機能が悪くても良くても、
耐性変異が有っても無くても、
慢性肝炎でも肝硬変でも、
8週間の内服で
99.1~100%の高い治療効果です。

(Citation: Mensa FJ et al. Glecaprevir and pibrentasvir for 12 weeks for hepatitis C virus genotype 1 infection and prior direct-acting antiviral treatment. Hepatology. 2017 Aug;66(2):389-397)

こちらは、海外のデータですが、
過去に別の治療で消えなかった方へのマヴィレット配合錠投与で
95%がウイルス消えています。

まとめ
・マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプの治療薬
・腎機能が悪くても良くても、Y93耐性変異が有っても無くても、慢性肝炎でも肝硬変でも、8週間の内服で99.1~100%の高い治療効果

中島クリニックでは
C型慢性肝炎(ジェノタイプ1b:日本人に最も多いタイプ)
の治療を
・ハーボニー
・ヴィキラックス
・エレルサ・グラジナ
から選択して、患者さんの状態、治療中薬剤、L31Y93耐性遺伝子変異など総合的に判断しておこなっています。

今後は
・マヴィレット
も含め総合的に判断して治療法を選択することになります。

補足)ダクルインザ/スンベプラは治療効果、副作用の面から現在は使っておりません。
ジメンシーは特殊なケースで適応あると考えております。

インフルエンザワクチン厚生労働からの通知|平成29年度インフルエンザワクチン (2017/2018シーズン)

「一部の地域でワクチン接種の予約ができない事態が起きている」
「一部の地域でインフルエンザワクチンが入手できなかったり、例年並みの数量を確保できなかったりする医療機関が相次いでいる」などのニュース報道で混乱が予想される状況です。

冷静に対応いただくための情報提供として厚生労働省からの通知を紹介いたします。

(参考記事)
今年のインフルエンザワクチン株の情報
今年のインフルエンザワクチン|平成29年度インフルエンザワクチン株 (2017/2018シーズン)

ポイントは2点
・インフルエンザワクチンは2527.5万本製造される見込み
・ワクチン株の決定(A型2種類、B型2種類のインフルエンザワクチン株をどれにするかの選定)で再審議があり決定が遅れた影響もあり、ワクチン供給が例年より少し遅れる見込みです。しかし、11月から12月上旬には十分量供給見込み

(Citation: 厚生労働省ホームページ)

昨年のワクチン使用量が2642万本です。
今年の製造見込みが2527.5万本
昨年比 2527.5÷2642万本=95%

以上の厚生労働省からの情報を簡潔に表現すれば。

昨年の95%と十分量が製造見込み。
供給は少し遅れるが、11月から12月上旬には十分量供給される。

ニュースでワクチン不足と聞けば心配になるとは思います。十分量供給される見込みです。
取り付け騒ぎのようにならず、かかりつけ医の先生に相談して、状況確認しながら昨年までと同じようにインフルエンザワクチン予約してください。

まとめ
・インフルエンザワクチンは2527.5万本、昨年使用量の95%と製造される見込みです。
・ワクチン株の決定(A型2種類、B型2種類のインフルエンザワクチン株をどれにするかの選定)が遅れた影響もあり、ワクチン供給が例年より少し遅れる見込みですが、11月から12上旬には十分量供給さえる見込みです。

中島クリニックは例年通り、電話でのインフルエンザワクチン予約は行わず、診察の時に一人一人接種するかどうか相談してから予約ています。
糖尿病や心臓病など持病をもっている高齢の方を最優先にインフルエンザワクチン接種しております。

日本のピロリ菌は欧米のピロリ菌よりたちが悪い

ピロリ菌が胃がんの原因であることは疑いのない事実です。
また、ピロリ菌を除菌すると胃がんの予防につながります。

(参考記事)
中島クリニックのピロリ菌除菌成功率についてのデータ
92.5%が1回の治療で除菌に成功しています。

・院長研究論文がヘリコバクター学会誌に受理掲載されました。「ヘリコバクターピロリ一次除菌におけるボノプラザンの有用性ー抗菌薬感受性ブレイクポイントとの関連検討ー

ピロリ菌は全て悪者かといえばそうでもなく、ピロリ菌に感染していても、国によって発がん率が全く違うのです。

日本ではピロリ菌感染から効率に胃がんが発生します。
発がん率は年率0.5%です。
0.5%と聞くと少ない印象をもたれるかもしれませんが、
10年で5%、ピロリ菌感染者10年の間に20人に1人、胃がんに罹患することになります。
かなり高い数値です。

一方、アメリカや英国ではピロリ菌に感染していても、ほとんど胃がんが発生しません。
しないわけではありませんが、
日本と比べると格段に低率です。

発がん率に差があるので、
胃がん発がん率の高い、日本や中国ではピロリ菌除菌は非常に有効な予防となります。
日本人男性NNT15.3
日本人女性NNT23.0
中国人男性NNT15.1
中国人女性NNT23.7
と非常に低い数値(ピロリ菌除菌効果が高い)

逆に
アメリカ人男性NNT163.4
アメリカ人女性NNT245.1
英国人男性NNT94.9
英国人女性NNT163.4
と軒並み100前後の数値と高く(数字が高いと効果が乏しい)
除菌による胃がん予防効果がさほどありません。

(Citation: Ford AC, et al. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.BMJ. 2014 May 20;348)

(参考記事)
・ピロリ菌除菌による胃がん予防効果|治療効果を数値で比較してみる

国によって胃がんの発がん率が全くことなることから、
ピロリ菌の病原性に差があるのは
現象論として分かっていました。

ただ、なぜ違いがあるのかは分かっていませんでした。
ピロリ菌がもっているCagAという病原性蛋白質に差があるのだろうと、推測しているだけでした。

この差がなぜかを解明した論文がつい先日、医学雑誌Cell Reportsに報告されました。

(Citation: Hayashi T et al. Differential Mechanisms for SHP2 Binding and Activation Are Exploited by Geographically Distinct Helicobacter pylori CagA Oncoproteins. Cell Rep. 2017 Sep 19;20(12):2876-2890. )

東アジア型のピロリ菌のCagA
欧米型のピロリ菌のCagA
の立体構造をアミノ酸レベルで解析して
たった、一つのアミノ酸配列の違いが、
病原性に差をうみだしている原因であることを突き止めています。

「アミノ酸レベルで解析」と書くと
とたった10文字ですが、気が遠くなるような、多大な労力と精緻さを要する研究であることは、論文から伝わってきます。
原著論文がインターネット上に公開されておりますので、興味ある方はどうぞ。

アミノ酸残基の違いによる立体構造の差が、発がん性の差につながることを証明しています。

ピロリ菌がもっているCagAという蛋白質が、胃細胞の中の「SHP2」酵素と結び付くことで、「SHP2」が活性化されれて癌化します。

東アジア型ピロリ菌のCagAフェニルアラニン残基
欧米型ピロリ菌のCagAアスパラギン酸残基
たった一つのアミノ酸による立体構造の差が、CagAとSHP2の結合力の差となっています。

東アジア型ピロリ菌のCagAの方が強固にSHP2酵素と結合するので発がん率が高いのです。

まとめ
日本のピロリ菌は欧米のピロリ菌より発がん率が高い