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外科手術の腕に男女差はあるのか

長時間に及ぶ手術、術後管理での病院泊まり込みなど不規則な仕事のためか、外科における女性医師の割合は低いものです。
近隣、県立病院のホームページをみたら2割が女性医師、市民病院外科は1割ほどでした。

外科手術におてい、男性医師、女性医師で差があるのか

手術スキルの良し悪しを男性医師と女性医師で比較できるものだろうかという命題に取り組んだ研究報告が先日ありました。

(Citation: Satkunasivam R et al. Comparison of postoperative outcomes among patients treated by male and female surgeons: a population based matched cohort study. BMJ. 2017 Oct 10;359:j4366)

私が専門とする内視鏡での印象ですが、手技は、資質とそれを育てる環境(病院の研修システム)の二つに大きく依存します。個人的な意見ですが、男女差は関係ありません。

外科手術では男女差があるのでしょうか。
研究報告によると、外科手技の腕にほぼ差はなし、
おおむね女性医師の方が結果良好でした。

形成外科(plastic surgery)においては、男性医師にくらべ女性医師の方が良好な結果

男性医師と女性医師の手技差、統計学的手技を用いて検討しています。
2007年から2015年の8年間にカナダ、オンタリオで施行された執刀医の性別含め検討できる手術について検討しています。
25種類の手術分野に分けて調べています。
形成外科(plastic surgery)においては、女性医師の方が有意に良好な結果でした。
耳鼻科的外科処置は、男性医師の方がやや良好。
その他結果、ほとんどの手技は男女差ありませんでした。

外科手術後30日以内死亡率は女性医師の方が男性医師より低い

手術後30日以内死亡率を男性医師と女性医師にわけて比べています。
男性医師と比較して女性医師が執刀した場合は、死亡率が0.88(1が同じ、1より少なければ女性医師の方が低いことを示す)、12%ほど低い結果でした。

内科的な入院患者さんの経過を男性医師、女性医師で比較した検討がJAMAに報告されていましたが、その結果も助油性医師の方が男性医師が主治医よりも良好な結果でした。
(Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians. JAMA Intern Med. 2017 Feb 1;177(2):206-213)

参考記事
・入院患者さんの予後(死亡率、再入院率)が担当医師の性別で差|女性医師の方が男性医師よりも入院患者さんの予後がよい

内視鏡手技の話を最初に述べたように、手技に関しては、個人の資質+病院環境が大きく影響します。

統計的に、男性医師と女性医師の優劣をつけることに意味はありませんが、今回の検討で、ほとんどの手術で男性医師、女医医師の手術の腕に大きなさが見いだせなかったことに意義があると考えます。

まとめ
・外科手術の腕を比較検討した興味深い研究結果、ほとんどの手術で男性医師女性医師に差がありませんでした。
・形成外科においては女性が優位、耳鼻科手術においては男性が優位な結果でした。

参考記事
・主治医は40歳未満の若手医師がいいのか。担当医師の年齢が入院死亡率に影響|高齢医師より若手医師の方が入院死亡率が低い

潰瘍性大腸炎治療薬アサコールは1日1回投与でも寛解維持効果あり

潰瘍性大腸炎治療は多く分けて2本の軸に分かれます。
1本の軸は、大腸に潰瘍ができて潰瘍から出血、腹痛があるときの、直す治療。
もう1本は食生活、薬で潰瘍が治ったあと、再燃を防ぐ、寛解期の治療です。

潰瘍性大腸炎治療は、活動期、寛解期(落ち着いているとき)に分けて判断

大腸カメラで大腸粘膜の状態を精密検査して、落ち着いた状態になっている事を確認できれば(寛解期)、このままの薬の量で維持するか、
薬を減量するか、
1日の薬を飲む回数をへらすか、
など判断します。

薬を飲む回数は3回より2回、2回より1回、少ない方がよいのは当然ですが、
減らすことで潰瘍性大腸炎が再発してしまうのは困ります。
どこまで回数を減らして大丈夫であるかを判断する基準となる素晴らしい報告がありましたので紹介いたします。

ペンタサやアサコールを毎日3回きちんと飲み続けるのは難しい

血圧の薬、糖尿病の薬、潰瘍性大腸の薬でも、
薬の種類により1日1回の薬、1日3回毎食後と、
薬をのむ回数はさまざまです。

西宮市中島クリニックに通院されている方に処方する時
「薬が余っているので今回は7日分減らしてください」
と言われ処方する日数を減らすことがあります。
減らす薬はいつも、1日3回服用の薬です。

薬が余ってくるのはこんなパターンです。
・朝昼夜と3回薬のんでいる方が、週末朝起きるのが起きて、朝昼兼用となり、1日2食となった。
・職場に薬を持って行くのを忘れ、昼が飛んでしまった。
・夜外食したので薬を飲むのをわすれた

1日3回飲んでくださいと言うのは簡単でも、実際には難しいものです。

もちろん、そのことは私もよく理解しています。
血圧の薬でも糖尿病の薬でも、薬の効果が同じであれば、1日3回の薬よりも1日1回の薬を西宮市中島クリニックでは処方するように心がけています。

では潰瘍性大腸の治療ではどうでしょう、
アサコールを潰瘍性大腸炎で内服している方へ、私はこのように伝えています。
アサコールやペンタサを朝3錠、昼3錠、夕3錠、1日9錠のんでいる方には
「朝昼晩3錠つづ飲んでください。もし飲み忘れたら、1回の量は多くなってもいいので、1日で9錠のみ切ってください」
と伝えています。
朝忘れたら、昼6錠、夜3錠でもいいですよ。
と説明しています。

(注意:糖尿病や血圧の薬などはこのような変則的な服用しないでください。低血糖、血圧低下の危険があります)

潰瘍性大腸炎が落ち着いた状態(寛解)で1日1回と3回を1年間、効果を比べた結果

20年以上前は、血圧の薬アダラート(ニフェジピン)は効果持続時間が短いので、朝、昼、夜3回のんでいました。
その後、アダラートLが開発され、少し持続時間がながくなり、朝、夜、2回の服用に減りました。
さらに、アダラートCRが開発、一日中効果が持続するようになり、1日1回の服用となりました。

血圧降下の作用も1日1回の徐放剤と3回の薬と比べ遜色ないことがわかっています。

アダラートを処方する時にはアダラートCRを中心に処方します。アダラートLやアダラートを使うことは少なくなっています。

潰瘍性大腸炎でも、服用回数をへらしても効果が同じであるかどうかの検討がされています。

ペンタサ(時間依存型徐放製剤)では潰瘍性大腸炎が落ち着いている時期(寛解期)に1日3回と1回を比較した日本での報告がすでにあります。
結果、効果に差はなく、1日1回の内服が添付文書上も認められています。

アサコール(pH依存型徐放性製剤)の1回と3回服用を比較した日本での報告はいままでありませんでした。

アサコールの服用回数による効果を比較した結果が、2017年5月始めて報告されました。

(Citation: Hibi T et al. 2.4 g Mesalamine (Asacol 400 mg tablet) Once Daily is as Effective as Three Times Daily in Maintenance of Remission in Ulcerative Colitis: A Randomized, Noninferiority, Multi-center Trial. Inflamm Bowel Dis. 2017 May;23(5):822-832)

寛解期(落ち着いた状態:血便スコア0かつ活動指数UCDAIスコア2以下)で
・アサコール(400mg)6錠を1日1回
・アサコール(400mg)6錠を1日3回に分けて服用

1年間潰瘍性大腸炎の再燃を起こさないかどうか確認比較

結果
1日1回 無再燃率 88.4%
1日3回に分けて服用 無再燃率 89.6%
差は、-1.3%(95%信頼区間-6.2~3.7)

アサコールを1日1回と3回に分けて服用で差ががありませんでした(比劣性が確認されました)

治療効果に差がないことが確認できましたので、中島クリニックではアサコールの処方回数を積極的に減らす方針です。

まとめ

潰瘍性大腸の寛解維持には、アサコールの服用回数を減らすことを考慮できる。(注意:薬の1日用量は同じです。3回に分けて飲んでいた量を1回にしてまとめて服用するということです。非常に大切な薬ですのでくれぐれも、自己判断せず主治医に相談してください)

 

 

ベビーアスピリン、名前はベビーでも大人用|胃カメラや大腸カメラを受ける時にはベビーでも普通のアスピリンでも、アスピリンと名のつくものをのんでいたら医者に伝えよう

ベビーアスピリン
かわいい響きです。
赤ちゃんではない、ベビーについてのお話です。

参考記事
・バファリンとアスピリンの微妙な関係
・旅の常備薬。海外で薬を買うとき気をつけること

ベビーアスピリンとは

大腸内視鏡検査は、のんでいる薬、全身状態をチェックした上で検査を受けていただきます。

この時に大切なのが、血をいわゆる「さらさらに」する薬を飲んでいるかどうかです。

脳梗塞や狭心症など血管が詰まる病気予防のために
アスピリン、プラビックス、パナルジン、エフィエントなどなど、
書き出すといくらでもありますが、
血をさらさらにする、抗血小板薬をのんでいると、
ポリープを切るなど処置後出血の原因となります。

検査前に入念にこのたぐいの薬を服用していないか問診します。

アメリカから大腸検査を受けにこられた方に、このたぐいの
抗血小板薬(Antiplatelet agents)をのんでいないか聞くと
「ベビーアスピリンのんでいるよ」
「友達もみんな、薬局でかって健康のためにのんでいるよ」
みたいな感じです。


(Citation: walmart.com https://www.walmart.com/c/kp/baby-aspirin)

baby bed ベビーベッド 赤ちゃん用ベッド
babies’ wear ベビー服
baby face ベビーフェイス 童顔

ベビーが付くことばは、赤ちゃん 関連ですが、

「ベビーアスピリン」は「赤ちゃん用のアスピリン」
ではありません。

ベビーには「少量」の意味があって、

ベビーアスピリンは赤ちゃん用ではなく、
アメリカでは
大人用の低用量アスピリンをベビーアスピリンとよびます。

通常のアスピリン量が330mg
それに対して、低用量アスピリンは100mg~81mg

アメリカ人、アスピリン大好きで
脳梗塞予防のため、朝起きたらベビーアスピリン1錠
なんか体調すぐれないので、アスピリン
常備薬です。

ベビーアスピリン、低用量アスピリンには血栓を予防する働きがあり、脳梗塞や心筋梗塞の予防となります。

さらには、アスピリンが大腸がんを予防する働きもあります。

参考記事
アスピリンに大腸がん予防効果あり

いいことずくめの、アスピリンですが
逆に胃や腸からの出血、脳出血など重篤な副作用もありますので、自己判断でのむのは、やめておきましょう。

胃カメラ・大腸カメラ検査前にアスピリンを休薬するべきか

アスピリン(アセチルサリチル酸)は血小板の作用を抑え、血を、さらさらにする働きがあります。

その昔、10年ほど前までは
アスピリンを飲んでいる時に、
胃カメラ・大腸カメラ検査時に
生検(ポリープや腫瘍の組織を採取)すると、
出血の危険があるので、
検査1週間前からアスピリンを止めましょう
と休薬していました。

しかし、アスピリンを止めることで、
血栓ができ脳梗塞を起こしたりすることの方が危険であることが明らかになりました。

アスピリンなどの抗血小板薬は、検査の時に休薬する方向性から、真逆の継続下で検査する方向性に今はなっています。

2012年7月の日本消化器内視鏡学会からの消化器内視鏡診療ガイドラインにも明記されています。

アスピリンなど抗血小板薬をのんでいても、胃カメラ、大腸カメラ検査できます。

内視鏡検査前に、医師から処方されている
アスピリンを自己判断で
「休薬しない」ようにしてください。

生検はアスピリンをのんでいても大丈夫ですが、
大腸ポリープを「切除」するとなると休薬が必要です。
その場合は主治医の許可をえてから、アスピリン休薬です。

参考記事
・胃カメラ検査時のアスピリンなど抗血栓薬服用について

まとめ
胃カメラ・大腸カメラ検査前に、医師から処方されている
アスピリンを自己判断で「休薬しない」

サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針

厚生労働省から抗微生物薬適正使用の手引が発表されました。
抗生物質を適正に使いましょうという手引きです。
かぜを引いたら抗生物質が全てに必要なわけでなく、逆に抗生物質を何が何でも使わないのが正しいわけでないという話です。
必要な時のみ適切に使いましょうという手引きです。

(抗微生物薬適正使用の手引きに関する参考記事)
いいものとどいたよ。抗微生物薬適正使用の手引き 厚生労働省

普段健康な方(基礎疾患がない)の下痢、特にサルモネラ、キャンピロバクターについてのお話です。

食中毒で多い、サルモネラ腸炎、カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎に抗生物質が必要かどうかについてです。

腹痛、それも我慢できないしぶるような腹痛、下痢、発熱で受診される方、食中毒の可能性を疑って食べたものを聞きます。

卵や牛レバ刺しなどから感染するサルモネラ腸炎
加熱不十分な鶏から感染するカンピロバクター腸炎
の可能性を想定しての問診です。

病原性大腸菌、ノロなどの可能性ももちろん考えながら診察しますが、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎に絞って書きます。

サルモネラであれば潜伏期間が半日から2日程度
キャンピロバクターは潜伏期間がややながく2日から7日程度

体調悪くなる前1週間ぐらいの間に
火の通っていない鶏、
保存状況が怪しい卵など
食べた記憶ないか問診します。

もしあれば、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の可能性高く、便を培養して原因菌を確認します。

今年も、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎、中島クリニックで多数経験しています。
鶏からのキャンピロバクター腸炎、ホント多いことに驚きます。
生の鶏、余り火の通っていない鶏にはお気を付けください。

私は、鶏サシは絶対に食べないようにしています、そして患者さんにも、そのように必ず指導しています。
生が美味しいのは分かりますけどね。
キャンピロバクターなどという病気を知らなかった大学2年頃までは気にせず食べてましたけど。
キャンピロバクター腸炎、その後に頻度は低いながらに起きる手足の神経が麻痺するギランバレー症候群を診ていると、
キャンピロバクター腸炎の怖さ身にしみます。

抗微生物薬適正使用の手引に明記されています。
サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針
「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨する。」
なっています。

中島クリニックでも、健常者の全身状態のよい軽症下痢に対して、抗生剤は投与していません。
逆に抗生剤を投与することで、腸内細菌バランスがかわり下痢が長引くことがあります。
健康な大人でサルモネラ腸炎に抗菌薬治療をしても、
下痢や発熱などの症状期間が短くならないとの報告、さらには保菌状態を長引かせる報告もあります。

ほとんどの、軽症の健康な大人のサルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎は抗生剤なしで治ります(self-limiting)。

ここまで、抗生剤不要の話が中心でしたが、
絶対に抗生剤を投与しないわけではなく、重症度が高い下痢血便、海外渡航後の高熱を伴う下痢には、便検査(便培養)した後に、抗生剤必要と判断したら投与します。

大事な点は「基礎疾患のない健常者の軽症腸炎」で抗生剤不要であるということです。
「基礎疾患のない」
「軽症」
の2点がポイントです。

「基礎疾患」とは、人がもともと、もっている慢性的な病気のことですが、

感染症が悪化する危険がある「基礎疾患」は
以下です
・3 カ月未満の小児又は65 歳以上の高齢者
・ステロイド及び免疫抑制剤投与中の患者
・炎症性腸疾患患者
・血液透析患者
・ヘモグロビン異常症(鎌状赤血球症など)
・腹部大動脈瘤がある患者
・心臓人工弁置換術後の患者

上記基礎疾患をもっている場合、敗血症(ばい菌が血液の中に入ってしまう)や重症化することがあるので要注意かつ、抗生剤投与を視野にいれる必要あります。

自己判断は危険ですので、体調不良時
必ず医師の診察をうけ、全身状態を評価
治療方針を仰いでください。

まとめ
厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引き
「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨する」

いいものとどいたよ。抗微生物薬適正使用の手引き 厚生労働省

所属する西宮市医師会から宅配物が定期的に届きます。
いつもは、西宮市の応急当番や二次救急病院リストや事務連絡が入っています。

それに加え、今回はA6サイズの厚生労働省からの小冊子
「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」
が入っていました。

たった7ページ、ペラッペラッの冊子ですが、内容の濃い濃い珠玉の一品です。
医師のみならず、誰もが読んでも損はない内容です。

急性気道感染症(いわゆる「かぜ」なども含む)
急性下痢症
にフォーカスをあてた抗生物質(抗菌薬)適正使用の手引きです。

厚生労働省からの抗微生物薬適正使用の手引、
シンプルかつ治療方針について根拠となった文献も巻末に列記されており、すばらしい内容です。

さらに、1点この手引きのよい点を強調しておくと、
対象を
「基礎疾患のない学童期以降の小児と成人」
と限定していることです。

基礎疾患とは、その人がもともと、もっている慢性的な病気のことです。
リウマチでステロイドを服用しているとか
糖尿病で治療中
などのことです。

手引きには、かぜや下痢をどのように治療するか、抗生物質が必要かどうかの判断について、記載されています。

手引きに記載されているのは、
「基礎疾患のない」かつ「軽症」と判断できれば、
必ずしも、抗生物質が必要なわけではないですよ
というメッセージです。

各論として、サルモネラ・キャンピロバクターなど食中毒の治療に関しては後日ブログに書きます。

(追記)ブログ記事
サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針

 

抗微生物薬適正使用の手引きは下記リンクからPDFダウンロードできます。

・抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 – 厚生労働省

高齢者の栄養状態がわかる簡単なアンケート| MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)

高齢の方が健やかに過ごせているか
食事、排泄、入浴などADL(日常生活動作)が保てているか
確認するために、

体重が減っていないか、
食事をとれているか、
外に散歩にでかけたりしているか、など
診察では、日常生活のようすを問診します

(おすすめ記事)
・肝硬変とサルコペニアの関係|サルコペニアって何だ。筋肉量低下による生活の質が低下

高齢者の栄養状態簡単な問診で分かるアンケートフォームがありますので紹介いたします。

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)です。

6項目の点数を足して評価します。
14点満点で、高い方が栄養状態良好です。

12-14 ポイント 栄養状態良好
8-11 ポイント 低栄養のおそれあり
0-7 ポイント 低栄養

6項目は
・食事量
・体重増減
・日常の動作
・ストレスの有無
・精神、認知症の有無
・BMI(身長と体重から計算する肥満度) からなります。

精神的ストレスの有無の項目は、漠然とした主観的なものではありますが、採血の必要なく、簡単に評価できるのがMNA-SF特徴です。

http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-5/z3.pdf
上記アドレスから、日本語問診票がダウンロードできます。

英語版しかありませんが、iPhone用のアプリもあります。アップルストアで「MNA」で検索するとみつかります。

MNA-SF、是非ご活用ください。

採血が必要となりますが、アルブミン(ALB)やコレステロール(T-Cho)などの測定、コリンエステラーゼ(ChE)のような肝臓の蛋白合成能を示す数値などもチェックすると、非常によい栄養の指標となります。

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)簡易栄養状態評価表)

(Citation: http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-5/z3.pdf)

A 過去3 ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、咀嚼・嚥下困難などで食事量が減少しましたか?
0=著しい食事量の減少
1=中等度の食事量の減少
2 = 食事量の減少なし

B 過去3 ヶ月間で体重の減少がありましたか?
0=3 kg 以上の減少
1=わからない
2 = 1~3 kg の減少
3 = 体重減少なし

C 自力で歩けますか?
0=寝たきりまたは車椅子を常時使用
1=ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない
2=自由に歩いて外出できる

D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
0=はい
2=いいえ

E 神経・精神的問題の有無
0=強度認知症またはうつ状態
1=中程度の認知症
2=精神的問題なし

F BMI
0=19 未満
1=19 以上、21 未満
2=21 以上、23 未満
3=23 以上

合計ポイント
12-14 ポイント 栄養状態良好
8-11 ポイント 低栄養のおそれあり
0-7 ポイント 低栄養

たばこを吸っているほうがアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?

一昨日、関西学院大学人間福祉学部4年生N君に「禁煙外来」について熱く語りました。
「なぜ喫煙をやめられないのか」を研究テーマとして卒業論文に取り組んでいて、実際にどのような治療に取り組んでいるかについてインタビューを受けました。

ニコチン依存症とは
ニコチン依存症の判断基準
禁煙治療成功率
禁煙治療外来とは別に、日常で禁煙をする方法
などについてお話いたしました。

熱心に参考資料を集め、真摯にインタビューしている姿、感銘をうけました。
すばらしい卒業論文になると期待しております。

さて、外来でよく聞かれる質問があります、
「たばこを吸っているとアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?」
「たばこを吸っている方が、ぼけにくいと読んだのですが」

答えは「NO」です。
タバコで、アルツハイマー病は増えます。

1990年前半に、
「タバコはアルツハイマー病発症予防に働く」
趣旨の論文報告がいくつかありました。

これらの論文の多くはcase control study(症例対照研究、後ろ向き検討)の手法を用いた検討です。
アルツハイマー病を発症した人、していない人の2群に分けて、それぞれの群がたばこを吸っている人が多いが少ないか比較するのです。

この方法で調査すると、アルツハイマー病を発症した人の喫煙割合が、発症していない人の喫煙率より低いデータがでました。
この結果から
「タバコはアルツハイマー病発症予防に働く」
と解釈したのです。

しかし、この検討には非常に大きな落とし穴があります。
喫煙者は肺がん、脳梗塞などさまざまな血管の病気のために、寿命が短い傾向があります。
喫煙者は他疾患で亡くなる人が多いため、アルツハイマー病を発症する人が相対的に減ります。

これが、タバコを吸う方がアルツハイマー病が減るように見えた理由です。

タバコとアルツハイマー病の関連を調べるためには、
case control study(症例対照研究)の後ろ向き検討ではなく、
タバコを吸う人、吸わない人を選んで、今後どのような病気なるかを年数かけて観察する、前向き検討であるcohort study(コホート研究)が理想です。

1990年後半になり多くのコホート研究の結果がでました。
その結果はいずれも、
たばこは、アルツハイマー病のリスクを高める結果でした。

(Citation: Breteler MM et al. Smoking and risk of dementia and Alzheimer’s disease in a population-based cohort study: the Rotterdam Study. Lancet. 1998 Jun 20;351(9119):1840-3)

喫煙のアルツハイマー病発症リスクは2.2
タバコで倍に増えます。

まとめ
たばこを吸っているほうがアルツハイマーになりにくいのは本当ですか?
いいえ、逆に増えます。

レントゲンで肺炎が分からないことがあるのですか?

高熱、治らない咳などで病院に行って、
胸のレントゲンを撮ると
医者が「肺炎です、入院して治療しましょう」
肺炎で入院治療となるまでの経過はだいたい、こんな感じでしょう。

レントゲンで肺炎が分からないことあるのですか?

答えは「はい」です。

先日もレントゲンに写らない、肺炎を経験しています。

その方は高熱、治らない咳で中島クリニックを受診しました。
聴診器で胸の音を聞くと、片方の肺でゴロゴロという雑音(ラ音)が聞こえます。
聴診で肺炎と診断いたしました。
肺炎の程度を確認するため、胸部レントゲンを撮ると
「きれいな肺」です。
聴診では明らかに肺炎の音がするので、確認のために採血いたしました。
採血では白血球増多、好中球の増多あり、明らかに細菌性肺炎です。
胸部CTを撮れば、もちろん肺炎の影は見つかります。

レントゲンに写らない、
正確には肺炎の影が淡いため
胸のレントゲンでとらえられない肺炎、あります。

だからこそ、丁寧に聴診を行って、異常な呼吸音がないか耳で確認して、異常に気づくことが大切なのです。

市中肺炎(健康な人もしくは軽い基礎疾患をもっている程度の人がなる肺炎)の原因菌で多いのは
肺炎球菌
インフルエンザ桿菌
マイコプラズマ
です。

特にマイコプラズマ肺炎は、レントゲンで分かりにくいこともあるのが特徴です。

入院せずに治療出来る程度の病状であれば、
胸部レントゲン正常でも肺炎、
ありうることは、何となく想像できるでしょう。

では、入院が必要なほど重い肺炎で
胸部CTで影が分かるけれど、胸部レントゲンで分からない肺炎
あるのでしょうか?

答えは
「ある」
のです。

こんな報告が先日ありました。

 

Self WH et al. Community-Acquired Pneumonia Visualized on CT Scans but Not Chest Radiographs: Pathogens, Severity, and Clinical Outcomes. Chest. 2017 Aug 9. pii:S0012-3692(17)31392-2.

アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビル、
ヴァンダービルト大学病院が中心となって、
市中肺炎で入院した大人2251人の胸部レントゲン、CT、入院経過などを詳細に検討しました。

入院が必要な肺炎、イコール比較的重症度の高い肺炎です。
ほとんどの症例は胸部レントゲンで肺炎を認めています。

しかし、
3%は胸部レントゲン正常、だけど、肺炎でした。

入院が必要な程の重症度でも、胸部レントゲンに肺炎が写らない事があるとは驚きです。

胸部レントゲンに写る、写らないの差はあっても、
入院期間、敗血症、その他重症度に差はありませんでした。

まとめ
肺炎診断に、胸部レントゲンは欠かせない
まれに、胸部レントゲンに写らない肺炎もある

 

運動や重力負荷が体に大切|宇宙飛行士の骨密度減少

昨日、市民フォーラムで「身近な生活習慣を見直してみよう
~最適睡眠時間、運動、体重、食事、アルコール、タバコ、サプリメント~」と題して講演させていただきました。
(参考記事:中島クリニック院長が西宮市医師会市民フォーラムで講演いたします)

私は生活習慣一般の話を担当させていただき
泌尿器科の吉岡先生からはCKD(慢性腎臓病)について
栄養科学研究所鞍田からは具体的な食事についてご講演いただきました。

フォーラムで他の先生方の話を伺い、改めて減塩、運動の大切さを再認識いたしました。
フォーラムを終えての雑感です。

昨日は、久しぶりの秋晴れ、遊びにでかけたくなるような爽やかな気候でした。
天気がいいのでみんな出かけてしまって、フォーラム参加者が少ないのではないかと不謹慎な思いがよぎった瞬間もあったのですが、全くの杞憂でした。
300人を超える方々にフォーラム参加いただき盛会となりました。行楽の誘惑に負けず、参加いただき誠にありがとうございました。

私はトップバッターとして、生活習慣病予防、広い範囲のお話をさせていただきました。
病気の治療もちろん大切ですが、ほんの少しの生活スタイルの改善で簡単にできる「予防」も大切です、というメッセージを懸命に伝えさせていたきました。
100回以上「予防」連呼した気がします。

運動に関して、
理想は毎日緩やかな運動ですが、
週1回だけする運動でも、
十分に病気を予防する働きがあることを紹介いたしました。

(参考記事:週末だけ運動する『Weekend Warrior週末戦士』でも効果あり。死亡率低下|忙しくて毎日運動できない方に朗報。週1-2回だけの運動でも有効)

鞍田先生の話で興味深かったのは日本人の塩分摂取量についてです。

日本人塩分取り過ぎです。
Intersalt Cooperative Research Groupで世界の塩分摂取量を調べたら、上位3位はアジアの国。
中国、日本、韓国の順です。

日本は世界第2位。

1位: 中国 14.3g/日
2位: 日本 12.4g/日
3位: 韓国 12.1g/日

参考までに
米国 8.3g/日
デンマーク 8.2g/日
と10g未満です。

さらに時代をさかのぼり、石器時代は
塩分摂取量0.5-3g/日
と塩分ほとんど撮って居なかったのですね。昔は塩は貴重品でした。

現代人、とくに日本含めたアジア、塩分取り過ぎは明らかです。

鞍田先生のスライドで、自身が骨折して片腕ギブスをしている写真がありました。
骨折しているあいだ筋肉が落ちないように蛋白質を普段以上に摂ってすごしたけれど、
治ってギブスがとれた腕はやせ細っていた。
運動や重力の負荷がなければ、いくら栄養をとっても筋肉はつかない。
宇宙飛行士が宇宙で運動をしていても、地球に帰ると筋肉や骨が衰えていて立てない。
という話印象的でした。

ほんと、その通りなんです。私も骨折経験者です。
中学時代に利き手前腕の骨を骨折したことがあります。
ギブスをしていると服を着替えるのも一苦労。
片手ギブスしていると、定規で線をひくのも大変です。
トイレの時は、ほんと困りました。とくに大の時。

1ヶ月ギブスして、ギブスをはずしたその腕をみた瞬間、余りにもやせ細った自分の腕をみて愕然とします。
廃用性萎縮、使わないと筋肉目に見えて衰えます。

運動負荷ほんと大切です。

宇宙での話がでたので骨密度の話を紹介しておきます。
聞きかじった知識なので、数字うろおぼえですが、
無重力空間では1ヶ月で平均2.5%骨密度減少、6ヶ月で15%も減少すると、聞いた覚えがあります。

調べたらNASAのデータありました。

(Citation: Subregional Assessment of Bone Loss in the Axial Skeleton in Long-term Space Flight. https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/experiments/118.html)

国際宇宙ステーションで過ごした宇宙飛行士の骨塩量の変化、地球に帰ってきてからどれぐらい回復するかの調査結果が公表されています。
・骨の外側(皮質)は平均1ヶ月で1.6-1.7%骨密度減少、
・骨の内側(柵状組織)は平均1ヶ月で2.2-2.5%骨密度減少、
・宇宙飛行は平均で11%の大腿骨骨塩量減少、減った骨塩量は地球に帰って1年経っても部分的にしか回復しない、
・骨密度低下が著しいのは骨盤、大腿、下腿の骨

重力による負荷は、筋肉のみならず、骨にも大切なことがわかる報告です。

地球に戻った宇宙飛行士が、自力で立てず、抱きかかえられながらスペースシャトルから降りる姿、納得できます。

まとめると
・日本人は1日12-13gも塩分とっている。減塩意識する必要ある。
・運動や重力の負荷がないと、筋肉、骨密度は目に見えて落ちる。

塩分、運動に関する雑感でした。

マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプ|C型肝炎治療は12週間からさらに短縮され8週間治療時代へ

C型肝炎治療薬マヴィレット配合錠、腎障害や耐性遺伝子変異があっても効果の高い、いわば優等生タイプの治療薬が先日製造認可を受け、早ければ年内にも処方できるようになります。

C型慢性肝炎は、インターフェロンフリー治療(インターフェロンを使わない治療)の登場により、100%近く治る病気となりました。

つい2年ほど前まで治療の中心だったインターフェロン治療に代わり
・ハーボニー(ソフォスブビル、レディパスビル)
・ヴィキラックス(オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル)
・エレルサ/グラジナ(エルバスビル/グラゾプレビル)
などが現在治療の中心となっています。

今月新たな、インターフェロンフリー治療薬が製造承認を受けました。
マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)です。

(Citation: https://www.healio.com/)
アメリカでは1ヶ月先行して8月にFDAの承認を受けています。

ひとことで、新しいインターフェロンフリー治療薬、マヴィレット配合錠をあらわすとすれば、
「優等生タイプ」
です。

参考記事
・2015年以降のC型肝炎治療はインターフェロンフリー治療(DAA)が主流
https://www.nakajima-clinic.com/2015/09/279/

・いよいよ最終コーナーにさしかかったC型肝炎治療
http://www.nakajima-clinic.com/2015/09/276/

従来のインターフェロンフリー治療薬、
効果は十分に高くすばらしい治療薬です。
しかし、
腎機能障害があるときには使えない
ウイルスジェノタイプが1b以外使えない
L31Y93耐性変異があるときには避けた方がよい
などなど、
薬によりそれぞれ細かい注意点があり、
患者さんの腎機能、C型肝炎ウイルスの耐性変異など全てを総合的に判断して、治療方法を決定する必要がありました。

しかし、マヴィレット配合錠は、これら全ての問題をクリアしています。
・腎障害があっても治療できる
・耐性変異をもっていても、効果がある
・ウイルスジェノタイプは1b含め、どのタイプでも効く(これをパンジェノタイプといいます)
さらには
・従来インターフェロンフリー治療が12週間だったのが8週間で終了する(注意:他治療で消えず再治療症例は12週まで延長可)
・過去に他の治療で消えなかった患者さんにも効果がある
と、どような背景、基礎疾患をもったケースでも効く、まさに優等生タイプの治療薬です。

(Citation: マヴィレット配合錠添付文書)

国内第III相試験のデータでは
初回治療では
ジェノタイプ1(日本人に最も多いタイプのウイルス)では、
腎機能が悪くても良くても、
耐性変異が有っても無くても、
慢性肝炎でも肝硬変でも、
8週間の内服で
99.1~100%の高い治療効果です。

(Citation: Mensa FJ et al. Glecaprevir and pibrentasvir for 12 weeks for hepatitis C virus genotype 1 infection and prior direct-acting antiviral treatment. Hepatology. 2017 Aug;66(2):389-397)

こちらは、海外のデータですが、
過去に別の治療で消えなかった方へのマヴィレット配合錠投与で
95%がウイルス消えています。

まとめ
・マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプの治療薬
・腎機能が悪くても良くても、Y93耐性変異が有っても無くても、慢性肝炎でも肝硬変でも、8週間の内服で99.1~100%の高い治療効果

中島クリニックでは
C型慢性肝炎(ジェノタイプ1b:日本人に最も多いタイプ)
の治療を
・ハーボニー
・ヴィキラックス
・エレルサ・グラジナ
から選択して、患者さんの状態、治療中薬剤、L31Y93耐性遺伝子変異など総合的に判断しておこなっています。

今後は
・マヴィレット
も含め総合的に判断して治療法を選択することになります。

補足)ダクルインザ/スンベプラは治療効果、副作用の面から現在は使っておりません。
ジメンシーは特殊なケースで適応あると考えております。