私は胃カメラ検査において2つ大切な事があると考えています。「検査が苦しくない事」と「検査が正確である事」です。当たり前と思われるかもしれませんが、この2点はしばしば相反するのです。
検査を楽に受けていただくためには検査を行う医師の熟練が最も大切ですが、それ以外に胃カメラが細ければ細い程、検査が楽に受けられるのも事実です。今日はこの細いカメラの話を中心にいたします。
胃カメラが細い程検査が楽に受けられるのであれば、細いカメラ(鼻から通す胃カメラ)の方が、従来の胃カメラより優れている印象を受けますが、良いことばかりではありません。従来のカメラが直径9mmほどで既に十分に細い精密機械ですが、それを約半分の5mmにしているため全てをさらにコンパクトにする必要があります。コンパクト化した経緯で犠牲になった点があります。それは「視野角」です。視野角とは見える範囲が大きいか小さいかを示す数値と思ってください。従来の胃カメラが視野角140度、経鼻カメラが120度です。ごくわずかですが、視野角が経鼻カメラの方が小さいのです。
鼻からのカメラが開発された当初は、この視野角の20度の差が「検査の正確さ」において従来の胃カメラに比べ同じか、劣るか議論が分かれた点です。7年程前に開発された当初は私も鼻からのカメラが「楽なことは」分かっていましたが、もし「正確さ」において劣るのでは本末転倒であると考え導入を見合わせておりました。しかし多施設から、鼻からの胃カメラは従来のカメラと胃癌の診断能が全く遜色なし、さらに早期胃癌発見においては従来カメラより経鼻カメラの方が良いとのデーターさえでております。(消化器内視鏡2008Vol.20 No.4 胃と腸2008 Vol43 No.8 Digestive Endoscopy2008 Vol.4 N0.4など)、そこで安心して経鼻カメラを当院でも導入いたしました。
まさに「楽で」「正確」のともすれば相反する2点を鼻からの胃カメラは満たしてくれるのです。