消化器と内科を中心とした日常診療を行っておりますが、ここ数年企業の海外進出等にともなって、海外赴任前に必要なワクチンの相談、喘息吸入薬を機内に持ち込んでよいか、などなど、渡航に関する相談が増えてきていました。
一度きっちりと、系統立て、渡航医学を勉強する必要性を強く感じ挑戦したのが国際渡航医学認定試験(International Society of Travel Medicine Certificate of Knowledge Examination)でした。
http://www.istm.org/webforms/Members/MemberResources/cert_travhlth/default.aspx
認定試験勉強を通じて、ロングフライト症候群、高山病、マラリア予防薬、渡航前予防接種などの基礎的な知識を得る事ができたのが大きな収穫でした。
幸い合格する事ができましたが、テストかなり難しかったです。
テストが英文なので英語がむづかしかったと言う事ではなく、テスト内容そのものが難しく感じました。英文そのものは平易な表現でした。
国際渡航医学認定試験(CTH)に挑戦される方のために、どんな感じで勉強をしたか、テストの雰囲気等々以下思った事をメモ書きいたします。
長文になると思うのでご容赦を
ホテルのbanquetがテスト会場です。ざっと周りを見回すと、9割以上がアメリカ-ヨーロッパ系の人々、ごく少数、韓国、日本からの挑戦者と言う感じ。
まずは入り口で本人確認の登録を行う。
ISTMからメール添付で受験票があらかじめ送られてくるので、それをプリントアウトして持参。その受験票とパスポートの名前、写真を照合して本人確認終了。
受験番号、座席が決まる。
テスト受付の方はfriendlyでテストまで時間があるので、
How about making vitamin D outside the lobby(ロビーの外で太陽浴びてビタミンD作ったらどう?)みたいな感じで緊張気味の受験生の気持ちを和ませてくれる。
さすがマイアミ、太陽がまぶしい。最後に暗記ものの確認などをする。
デッキで過ごすのもあきて、ロビーのソファーが空いたのでそちらへ移動。
するとこの茶色の問題集を手にした40代位?フランス人?の女性が声をかけてくれる。
You, too are going to have the test.(あなたもテスト受けるのね)みたいな感じ。
向かいに座っている60代位の男性も会話に寄ってくる。みんな結構陽気。
フランス人の女性が男性にWe are twins.何の事かと思ったら、私が手にしている問題集と自分の持っている問題集が全く同じなのでWe are twins(私たち双子)と。
ジョークのセンス有るな~と変な所で感心。
向かいのシニアは、そんな問題集あるんだ、と言うリアクション。CTHを受ける人でMCQの存在を知らない方がいることに驚く。その方は様々なコピーを貼ったスクラップブックの様な自作ノートで勉強。勉強法は人それぞれ違うようだ。
開始時間になり、いよいよ自分の席に着く。テストに関する説明を受けたあとに、テスト問題を口外しませんと言う誓約書に記入。
この誓約書のために過去問が存在しない事が、対策が難しい最大の理由。
テスト時間は約4時間。早い人は2時間過ぎあたりで途中退出。私は最後まで粘ったが、最後まで会場に残っていたのは受験者の1/3位。
時間が足りなくて最後ま解けなかったと言うことは全くなく、2択まで絞れるがAにするかBにするか迷うタイプの問題が結構あり、それらを余った時間をめいいっぱい使って考えた感じ。
テスト終わっての感想は、難しかったの一言。自信もって回答できた問題も多数あるが、2択で絞りきれない問題、渡航前consultationに来た方へのアドバイスのような正解があってないような問題、などなど不確定要素が多いのが難しく感じた理由かもしれない。
2010年現在、私含め日本人で国際渡航医学認定(CTH)合格者は延べ58人だそうだ。
テキスト、テスト勉強に関して
私がCTH勉強を始めたのが一昨年の11月位。テストが3月なので約5ヶ月間とりくんだことになる。日常診療が終わった後、深夜に時間をつくって勉強する日々だったので、限られた時間で必死に取り組んだと言う感じ。
学生時代の試験勉強と違い、働きながらの勉強は時間が足りない。
使ったテキスト、参考資料
1.Mcqs in Travel and Tropical Medicine: 3rd Edition 唯一の問題集
2.Travel Medicine 教科書 通称Keystone
3.CDC Health Information for International Travel 教科書
http://www.amazon.co.jp/Health-Information-International-Travel-2010/dp/0702034819/ref=pd_sim_fb_2
4.CISTM8 Study Group 参考資料
outline#1~#48にまとめられている
http://www.the-travel-doctor.com/bodyofknowledge.htm
2.Keystoneがtravel medicineの教科書なので2を読破すれば良いのかもしれないが、時間的にそれば難しい。
まず1.MCQに取りかかった。感染症を専門としているDrであればMCQ結構解けるのかもしれないが、MCQ1回目は殆ど解けない状態。ワクチンのセクションならなんとかなるかと思い解くも、日本で認可されていないワクチンや接種スケジュールも日本と海外では全く異なり、これまた殆ど解けず。
MCQに関連する部位を2.Keystoneもしくは3.CDCで調べると言う事をひたすら繰り返す。調べる時に使う頻度は2.Keystone 8割 3.CDC 2割ぐらいか。
MCQ2回目にとりかかる時はすでに、年明けている状態。
4.CISTM8 Study Groupが作成した資料はプリントアウトするとコピー用紙の厚みにして4cm程になるほど膨大。非常によくまとまっているので、必要な所のみピックアップして読んだ。主にマラリア予防のsection
1と2を軸に知識を蓄えテストの日を迎えた。と言うより、満足行く所まで勉強するまえにテスト当日になってしまう感じ。
実際の診療でも重要でありテストでも重要なポイントはやはり「マラリア予防」と「ワクチン」
マラリア予防は、
渡航先条件(例えば熱帯熱マリアのリスクが有るかどうか)を踏まえ予防薬を選ぶ。
渡航先条件+Pt条件(妊婦、てんかん既往、子供など)を踏まえ予防薬を選ぶ
などの複合パターンを理解する必要あり。
日本で診療している限りマラリアの予防薬相談受ける事は殆どない。マラリア予防薬は一からの勉強となるので知識を整理するのに時間かかった。
マラリアに関しては2.Keystoneと4.CISTM8 Study Groupの資料は熟読をおすすめ。
妊婦 1st trimester chroloquine/proguanil OK atovaquone/proguanilは不可(正確には不明)
2nd trimester となるとmefloquineもOK
artemether/lumefantrine、doxycycline不可
子供 chroloquine mefloquine OK
8才以上の子供はdoxycycline OK
atovaquone/proguanil不可
と極々簡単に書くとこんな感じだと思いますが、このあたり要確認です。
予防接種は
2.Keystoneに一覧表が載っているので、気合いで暗記必要か。
yellow feverやmeningococcalなどのワクチンは渡航先により必要かどうか大きく変わるので、アフリカ(特にsub Sahara)、南米などの流行地域も有る程度把握しておく必要あり。
以上、テスト会場の雰囲気、使ったテキストに関して、思いつくままに書いてみました。
今後CTH受けられる方の参考になれば幸いです。