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■厚生労働省から抗微生物薬適正使用の手引が発表
厚生労働省から抗微生物薬適正使用の手引が発表されました。
抗生物質を適正に使いましょうという手引きです。
かぜを引いたら抗生物質が全てに必要なわけでなく、逆に抗生物質を何が何でも使わないのが正しいわけでないという話です。
必要な時のみ適切に使いましょうという手引きです。
(抗微生物薬適正使用の手引きに関する参考記事)
いいものとどいたよ。抗微生物薬適正使用の手引き 厚生労働省
普段健康な方(基礎疾患がない)の下痢、特にサルモネラ、キャンピロバクターについてのお話です。
■サルモネラ腸炎、カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎に抗生物質は必要なのか
食中毒で多い、サルモネラ腸炎、カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎に抗生物質が必要かどうかについてです。
腹痛、それも我慢できないしぶるような腹痛、下痢、発熱で受診される方、食中毒の可能性を疑って食べたものを聞きます。
卵や牛レバ刺しなどから感染するサルモネラ腸炎
加熱不十分な鶏から感染するカンピロバクター腸炎
の可能性を想定しての問診です。
病原性大腸菌、ノロなどの可能性ももちろん考えながら診察しますが、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎に絞って書きます。
サルモネラであれば潜伏期間が半日から2日程度
キャンピロバクターは潜伏期間がややながく2日から7日程度
体調悪くなる前1週間ぐらいの間に
火の通っていない鶏、
保存状況が怪しい卵など
食べた記憶ないか問診します。
もしあれば、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の可能性高く、便を培養して原因菌を確認します。
今年も、サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎、中島クリニックで多数経験しています。
鶏からのキャンピロバクター腸炎、ホント多いことに驚きます。
生の鶏、余り火の通っていない鶏にはお気を付けください。
私は、鶏サシは絶対に食べないようにしています、そして患者さんにも、そのように必ず指導しています。生が美味しいのは分かりますけどね。
キャンピロバクターなどという病気を知らなかった大学2年頃までは気にせず食べてましたけど。
キャンピロバクター腸炎、その後に頻度は低いながらに起きる手足の神経が麻痺するギランバレー症候群を診ていると、キャンピロバクター腸炎の怖さ身にしみます。
■「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨
抗微生物薬適正使用の手引に明記されています。
サルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎の治療方針
「健常者における軽症のサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎に対しては、抗菌薬を投与しないこと推奨する。」
なっています。
中島クリニックでも、健常者の全身状態のよい軽症下痢に対して、抗生剤は投与していません。
逆に抗生剤を投与することで、腸内細菌バランスがかわり下痢が長引くことがあります。
健康な大人でサルモネラ腸炎に抗菌薬治療をしても、下痢や発熱などの症状期間が短くならないとの報告、さらには保菌状態を長引かせる報告もあります。
ほとんどの、軽症の健康な大人のサルモネラ腸炎、キャンピロバクター腸炎は抗生剤なしで治ります(self-limiting)。
ここまで、抗生剤不要の話が中心でしたが、
絶対に抗生剤を投与しないわけではなく、重症度が高い下痢血便、海外渡航後の高熱を伴う下痢には、便検査(便培養)した後に、抗生剤必要と判断したら投与します。
大事な点は「基礎疾患のない健常者の軽症腸炎」で抗生剤不要であるということです。
「基礎疾患のない」
「軽症」
の2点がポイントです。
■基礎疾患をもっている人とは
「基礎疾患」とは、人がもともと、もっている慢性的な病気のことですが、
感染症が悪化する危険がある「基礎疾患」は
以下です
・3 カ月未満の小児又は65 歳以上の高齢者
・ステロイド及び免疫抑制剤投与中の患者
・炎症性腸疾患患者
・血液透析患者
・ヘモグロビン異常症(鎌状赤血球症など)
・腹部大動脈瘤がある患者
・心臓人工弁置換術後の患者
上記基礎疾患をもっている場合、敗血症(ばい菌が血液の中に入ってしまう)や重症化することがあるので要注意かつ、抗生剤投与を視野にいれる必要あります。
自己判断は危険ですので、体調不良時
必ず医師の診察をうけ、全身状態を評価
治療方針を仰いでください。