日本人の半数にあたる、
6000万人がヘリコバクターピロリに
感染しています。
しかし、感染率は世代によって大きくことなります。
ピロリ菌をもっている割合は
年齢に比例して急増、
70才以上では7割から8割以上の方がもっています。
ピロリ菌をもっているかどうかは、
生まれ時の衛生状況で決まります。
戦後のような
十分に上下水道整備されていないの生まれ
高率にピロリ菌感染
逆に、今の日本のように
上下水が完備され
きわめて衛生環境がよい時代なると
ピロリ菌感染率は、下がります
目次
■若者のピロリ菌感染率
上下水道が完備され、経口糞便感染する病気は激減しています。
A型肝炎は経口糞便感染します。
昭和の時代は多くの人が感染、
急性肝炎をおこしたり、
しらない間に感染したりしていました。
その結果高齢者の多くはA型肝炎の抗体(感染すると陽性になる)をもっています。
逆に、上下水道が完備された環境で育った今の若者は
ほとんどA型肝炎の抗体をもっていません。
同じことがピロリ菌にもいえます。
高齢者は高率に陽性、
いまの若者は激減、
ある医学部の入学者を対象に
ピロリ菌有無を調べたところ、
陽性率7-8%でした。
いまの若者のピロリ菌陽性率は
10%を下まわっています。
■佐賀県での中学校3年生を対象としたピロリ菌検診
ピロリ菌を中学生や高校生のあいだにチェック
若いうちに、ピロリ菌を除菌
胃がんを撲滅する取り組みが
さまざまな自治体でおこなわれています。
佐賀県では中学校3年生を対象に
ピロリ菌検診が平成28年度からスタートしています。
このすばらしい取り組みの概要が日本ヘリコバクター学会誌に報告されていました。
佐賀県下の中学校3年生対象に
尿でピロリ菌チェック
陽性であれば、
便中ピロリ抗原で、再度、陽性であるか確認
陽性であればピロリ菌除菌
の流れです。
■中学校3年生のピロリ菌感染率
中学校3年生を対象とした佐賀県の胃がん撲滅プロジェクトでは
(引用:垣内俊彦、佐賀県における若年者からの胃がん撲滅プロジェクト、日本ヘリコバクター学会誌Vol19 No.2 2018年)
6994人中、ピロリ菌陽性は248人
中学校3年生のピロリ菌感染率は
3.5%!
極めて低い感染率でした。
医学部学生を対象とした検査結果が7-8%
医学部入学者の年齢が20才前後と考えると
20才前後の感染率が7-8%
佐賀県のプロジェクトの参加者が中学校3年生
15才前後の感染率が3.5%
20才以下の世代では、どんどん感染率が低下していることがわかります。
■中学校3年生を対象としたピロリ菌除菌プロジェクトの除菌成功率
ボノプラザン(タケキャブ)
アモキシシリン(サワシリン、アモリン)
クラリスロマイシン(クラリス)
の三剤併用療法をもちいています。
大人のピロリ菌と同じ方法です。
一次除菌成功率83%
二次除菌成功率100%
除菌に取り組んだ全員が除菌に成功しています。
ボノプラザン、アモキシシリン、クラリスロマイシンを用いた大人での一次除菌治療成功率は
90%前後です。
西宮市中島クリニックでの大人の一次除菌成功率は93%です。
大人にくらべて、小児の一次除菌成功率がやや低い印象ですが、
二次除菌は成功率100%とすばらしい結果です。
副反応は5.1%の生徒に認めたけれど、治療を要する重篤なものはなかったそうです。
副反応率は大人と同じく、軽微で安全な治療ということがわかります。
上下水完備、衛生状況改善によるピロリ菌激減
若年者に対する介入(ピロリ菌除菌)でのピロリ菌撲滅
今後さらに胃がんが減ることが予想されます。
ヘリコバクター・ピロリ起因の胃がん
撲滅される日は間近です。
ヘリコバクター・ピロリ起因の胃がん
が撲滅されたら、
頻度は低いながらも
幽門腺領域に好発する褪色陥凹印環細胞癌や
噴門部のSMT様胃底腺型の胃がん
などのピロリ未感染の胃がんが
最後の課題です。
胃がん撲滅まで、あと少しですね。