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毎日アルコールを楽しんでいる人の割合
ヘリコバクターピロリ除菌治療効果の検討をしたときに、喫煙歴、飲酒歴含め患者さんの生活習慣を確認したことがあります。
昭和を語るイメージの代表である、車、たばこ、アルコール離れが言われています。
外来通院中の患者さんの喫煙率は6%と非常に低いものでしたが、意外とアルコールを愉しまれている方は多く、毎日の飲酒(量は問わず)されている方は49%、2人に1人でした。
すみません、車に関しては病気と関係ないので問診していません。
喫煙率の著しい低下を認める一方、飲酒率は低下していないようです。
百薬の長とも言われるアルコール、適量はストレスを和らげてくれます。
飲み過ぎは、肝臓、膵臓に悪影響を及ぼすことはご存じの通りです。
依存性が思った以上に強いアルコール
アルコールにかぎらず、世の中の全てのことに依存症がおこりうると言われています。
ギャンブル、万引き、インターネット、ゲーム依存、最近は甘い物に依存性があるともいわれています。
本人が意図せず、だれもがなりうるのが依存症です。
依存性の強い物質トップ5
1位ヘロイン
2位アルコール
3位コカイン
4位バルビツール系薬剤(睡眠薬)
5位ニコチン
との報告があります。
なんとお酒は2位、タバコは5位です。
2010年Lancetの報告では
1位アルコール
2位ヘロイン
3位クラックコカイン
4位メタンフェタミン
5位コカイン
6位タバコ
アルコールが1位、タバコは6位です。
報告により差があるものの、ヘロイン並に依存性が強いのがアルコールです。
4項目だけのアルコール依存セルフチェック|簡便テストCAGE
アルコールを飲み過ぎて、翌日後悔するのは誰でもあることです。
これが毎日繰り返したり、日常生活に支障を来し出すとイエロー信号と言うよりもレッド信号です。
レッド信号になる前に
セルフチェックでアルコール依存になっていないかチェックすることができます。
アルコール依存症のスクリーニングテストであるCAGE問診票を紹介いたします。
重要な項目4つにしぼってあり、簡便に出来るのが特徴です。
1.飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか
2.他人があなたの飲酒を非難するので気にさわったことがありますか
3.自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことがありますか
4.神経を落ち着かせたり,二日酔いを治すために, 「迎え酒」をしたことがありますか
2点項目以上は要注意です。
もし2点あれば主治医の先生に生活習慣を相談してみましょう。
私は、幸い0点でした。
お酒好きな方なら1番は相当することが多いのではないでしょうか。
さすがに4番の迎え酒をするようになったら、アルコール依存度かなり高いと思われます。
10項目のアルコール依存スクリーニングテストAUDIT
AUDITは世界で広く活用されているスクリーニングテストです。
アルコール関連問題の評価に用いられる世界中で最もよく用いられているスクリーニングテストです。
依存症のスクリーニングテストとして用いることもあります。
アメリカ、オーストラリアなど6カ国の調査から作成された問診票で
国によるばらつきが少ないのが特徴です。
さきほどのCAGEよりは項目が多く10項目からなります。
この記事を書いていてオーストラリア人がお酒好きなことを思い出しました。
大学院生時代に、始めて英語で発表した学会がオーストラリアなのでその時のことをよく覚えています。
オーストラリアのケアンズで行われた国際学会ですが、前日の夜、宿泊先から歩いてダウンタウンに行くと、どこのお店も店内、道路に面して置いてあるテーブル席でお酒を楽しむ人であふれかえっていました。
翌日の発表を控え、早めに切り上げてホテルに戻り原稿を暗記するつもりでいたのですが、ついつい飲み過ぎてしまい、深夜にホテルに戻って寝るだけでした。
アルコールのお陰で、緊張せずにすみました。
もちろん当日は飲んでないですよ。
オーストラリアの温暖な気候、治安がよいこと、フレンドリーな民族性が相まって、アルコール好きが多いのでしょう。
機会がないのでその後はケアンズに行っていませんが、次回は仕事抜きで、のんびりと過ごしに行きたいと思っています。
10項目のアルコール依存スクリーニングテストAUDIT
の内容を紹介します。
該当する部分にチェックをつけてみてください。
1.あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか?
2.飲酒するときには通常どのくらいの量を飲みますか?
1ドリンク=純アルコール量9~12g
3.1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか?
4.過去1年間に、飲み始めると止められなかった事が、どのくらいの頻度でありましたか?
5.過去1年間に、普通だと行えることを飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?
6.過去1年間に、深酒の後体調を整えるために、朝迎え酒をせねばならなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?
7.過去1年間に、飲酒後罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか?
8.過去1年間に、飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?
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9.あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがありますか?
10.肉親や親戚・友人・医師あるいは他の健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?
この問診の特徴は、全てが1点ではなく、特に重要な問診項目9番10番が2点となっていることです。
「あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがありますか? 」
「肉親や親戚・友人・医師あるいは他の健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか? 」
この2つの質問です。
もAUDIT計算してみました4点です。
危険の少ない飲酒群、セーフでした。
AUDITの点数による解釈ですが
1-9点 危険の少ない飲酒群
10-19点 危険な飲酒群
20点以上 アルコール依存症疑い群
10点以上は要注意、20点以上は専門施設相談必要なレベルです。
身近に潜む依存症のわな
非常におおざっぱな分け方となるのですが
ローリスク飲酒
ハイリスク飲酒
アルコール依存症
と大きく3つに分けるとします。
おおよそ、ローリスク飲酒はAUDIT1-9点、ハイリスク飲酒は10-19点、アルコール依存症は20点以上のイメージです。
ローリスク飲酒 7400万人
ハイリスク飲酒 979万人
アルコール依存症 107万人と推定されています。
アルコール依存症は専門施設での加療が必要ですが、ハイリスク飲酒の979万人は飲酒のスタイルを変えることで依存から遠ざかることが望めます。
1回のアルコール飲酒量を減らすのが難しければ、週の飲む回数を減らす。
毎日飲むのを2日に1回にするのも効果的です。
私は診察の時に、アルコール性肝障害の方には、禁酒が理想ですが、まずは回数を減らすところから指導を始めています。
1回の量を減らすのは、お酒好きな方にはほぼ無理な印象です。
補足)アルコール性膵炎、これはアルコールを減らすなどの生ぬるい生活指導では不足です。
禁酒しかありません。
アルコール性の肝硬変も同じく、禁酒しかありません。
アルコールが好きな方は是非、CAGE、AUDIT問診票で依存度をチェックしてみてはどうでしょうか。
CAGE問診票2点以上、AUDIT問診票10点以上は自力で解決するのは困難です。
主治医の先生にご相談ください。