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便秘で脳卒中、心筋梗塞が増える|ひどい便秘で心血管疾患リスクは1.4倍

たかが便秘されど便秘。便秘慢性の便秘で困っている方は人口の16%、6人に1人が便秘で悩まれています。

■便秘の治療

トイレでいきんでも出ない。便がででもすっきりしない。便秘は不快でOQL(生活の質)を著しく低下させます。

刺激性下剤(ラキソベロン)や緩下剤(酸化マグネシウム)などの便秘治療が中心でしたが、数年前から新しい作用機序の便秘治療薬が開発されています。

従来の便秘治療は大腸で効く薬が中心でしたが、新しいタイプの便秘治療薬は小腸ではたらいて効果がでます。

薬が効くところ、作用点が違うので、従来の下剤で効果ない時にも効果が期待できます。刺激性下剤(コーラック)は腸を無理矢理動かして便を出すので、腹痛やお腹のしぶりを伴うことが多いのですが、新しいタイプの下剤は腹痛やしぶりが少ないのが特徴です。

従来型の便秘薬に加え、アミティーザ、リンゼス、グーフィス錠など新しいタイプの便通を改善する薬、症状に応じて、自分にあう薬を選択できる時代になりました。

参考記事 ●グーフィス(胆汁酸トランスポーター阻害薬)新しい作用機序の便秘薬がもうすぐ処方できるようになります。

●便秘に悩む人必見!便秘解消には角度と時間が重要なワケ

■便秘と脳卒中、心筋梗塞との関係

不快で生活の質を落とす(QOL低下)する便秘ですが、不快なだけでなく便秘は脳卒中、心筋梗塞など血管が詰まる病気を増やすことがわかってきました。

(Citation: Honkura K et al. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6)

宮城県大崎地域に住む「大崎国保コホート研究」40才~79才の男女45,112人を対象に13.3年間の心血管系死亡との関連を解析した結果です。

排便回数で「1日1回以上」「2~3日に1回」「4日に1回以下」のに分けて調べています。

13.3年のフォロー期間中2,028人が心血管疾患で亡くなり、排便頻度との関連を解析しています。

毎日便がでている人とくらべ、「2~3日に1回」、「4日に1回以下」の心血管死亡リスクは1.21(95%CI:1.08-1.35)、1.39(95%CI:1.06-1.81)

排便頻度「2~3日に1回」 リスク1.21倍

排便頻度「4日に1回以下」 リスク1.39倍

4日に1回も便がでない方は、脳卒中や心筋梗塞など血管系の死亡危険度が1.4倍にもあがります。

一般的にトイレでいきむと40mmHgぐらいはあがります。

たかが便秘、されど便秘、あなどれません。

■まとめ
・便秘で脳卒中や心筋梗塞など血管系の死亡リスクがあがる
・たかが便秘されど便秘、生活習慣改善、薬で適切な治療

大腸がん検診は何才までつづけたらよいのでしょうか|75才までは推奨、76才からは健康状態で判断

■がん検診は何才からはじめる

がん検診

胃がん検診、
大腸がん検診、
肺がん検診、
子宮がん検診、
乳がん検診さまざまな検診があります。

検診を始める年齢は、がんがぽつぽつと出てくる
40才前後がめやすです。

40才は目安で、一律ではありません。
子宮頸がん検診は20代30代の
かなり早い段階からの検診が有用です。
逆に肺がん検診は50代から推奨のデータもあります。

肺がん検診に関しては年齢以外も議論つきません。

タバコを吸う人、吸わない人一律に行うのか。
タバコを吸う人のみ対象とするのか。
さらには胸部レントゲンで行うのか、胸部CTで行うのか。

■何才までがん検診をうけるか

いつからがん検診を始めるか、がん検診の方法には過去実績の蓄積があります。

肺がん検診であれば
50才以上の
喫煙者(1日喫煙本数x年数が600以上)を対象とした
低線量CTでの検診
は明らかに死亡率を下がる効果があります。

いつから始める、どのような方法で行う、
に関してはデータが蓄積され明確な推奨recommendationがあります。

逆に検診をいつやめるか関してはあいまいです。
90才でがん検診、もちろ不要でしょう。
80才ならどうでしょう。

■大腸がん検診は何才までするのか

大腸がん検診をすることで、早期発見、死亡率が下がります。
便による大腸癌検診(便潜血検査)だけでなく、
大腸がん検診を大腸カメラ(内視鏡)で行い、
大腸ポリープを切除することで、
さらに大腸がんリスクが下がります。

大腸がん亡率リスクを下げることが明らかな大腸癌検診、
40才から50才以降、積極的に取り組むことは当然です。

効果が明らかな大腸がん検診ですが、
何才までつづけるとよいのでしょうか?

90才で大腸がん検診、もちろん不要です。
生命予後を考えると検診するメリットは皆無です。

60才ならどうでしょう。
もちろん生命予後を考えると
検診メリット十分にあります。

70才ならどうでしょう。

この質問に対する予防医学の先進国である米国のUSPSTF(US Preventive Services Task Force)米国予防医療専門委員会の答えを紹介いたします。

最新のデータに基づいて、根拠ある予防医学の情報を提供しています。

(Citation: https://www.uspreventiveservicestaskforce.org

大腸がん検診は75才までは、推奨度Aです。
推奨度Aは明らかな生命予後を改善、
大腸がんによる死亡率を低下させることが明らかであることを示しています。
75才までは迷うことなく、
積極的に大腸がん検診取り組むべき世代です。

76才以上はどうでしょうか。
76才から85才は推奨度Cです。
推奨度Cは、生命予後を改善するメリットは少ないながらもある区分です。
健康状態で個別に判断です。
今まで大腸がん検診を受けたことがない人、
健康状態が良好な人は大腸がん検診受ける価値あります。

■まとめ
・大腸がん検診は75才まで推奨
・76才から85才は健康状態による。健康であれば考慮。

大腸がん、代替医療/治療(Alternative Medicine)を相談されたら

便潜血陽性
貧血
大腸内視鏡(大腸カメラ)をうけるきっかけは
さまざまですが

大腸がんが内視鏡で見つかることがあります。

患者さんと、今後どこの施設で精密検査
そして治療に取り組んでいくか
話し合いの中で、

免疫療法やハーブなどの
標準標準治療以外の相談をうけることが
多々あります。

判断の一助となる報告がありますので、紹介いたします。

参考記事
●検便でわかる?20人に1人は大腸がんが便潜血で見つかる事実

●大腸がん検便検査(便潜血検査)『陽性』を放置するリスクを計算してみた

■代替医療/治療(Alternative Medicine)とは

ことばの定義としては、通常医療の代わりに用いられるすべての治療をさすのですが、通常医療の範囲が曖昧です。
通常医療としての標準治療は、手術、抗がん剤(ホルモン療法も含む)、放射線を単独もしくは組み合わせた治療とかんがえてよいでしょう。

それ以外の、免疫療法、温熱療法など、現在は標準治療として確立はされていないものの、効果を期待される治療は代替医療の範疇です。

温熱療法は、標準治療と併用して有効性を
示した報告などありますが、
併用した時に効果があったとの報告です。
単独治療として生命予後を改善しているわけではありません。

■標準治療と代替治療(Alternative Medicine)の生命予後を比較した報告

J Natl Cancer Inst医学誌に今年の1月報告された報告です。

(Citaton: Johnson S et al. Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival. J Natl Cancer Inst. 2018 Jan 1;110)

代替治療(Alternative Medicine)を選択した280人
標準治療を選択した560人
生命予後を
をさまざまな部位のがんで検討しています。

代替治療
標準治療
死亡リスクが代替治療の法が2.5倍
の結果でした。

乳がんは5.68倍
肺がんは2.17倍

治療の第一選択は
標準治療です。

この報告は、
stageII、stageIII
の転移のないがん患者さんを対象として検討してるところに意義があります。

余命数ヶ月と、癌が広がってしまった状態
であれば、
がんの治療よりも
痛みをとる、
病院より家で過ごす、
など他のことが重要になってきます。

この報告では、
がん根治をめざし。治療に取り組んでいく
stageII、stageIII段階を対象としており、
stageIVは含まれていません。

stageII、stageIII
の段階で
標準治療と代替治療の比較です。

■大腸がん、標準治療と代替治療(Alternative Medicine)の生命予後を比較した報告

全てのがんで比較すると、代替治療の方が2.5倍死亡リスクが高い結果でした。

大腸がんの死亡リスクは
代替治療は、標準治療の
4.57倍

肺がん
乳がん
と同じく

大腸がんでも
代替治療の方が、標準治療に比べ
死亡リスクが明らかに高いのです。

今後代替治療の研究がすすめば、
状況はかわる可能性ありますが、
現段階では、第一選択は標準治療です。

■まとめ
大腸がん、第一選択は標準治療です。
代替医療(Alternative Medicine)を第一選択とするのは、勧めがたい。とくにstageII、stageIII。

過敏性腸症候群(IBS)に有効な食事療法低FODMAP、ビフィドバクテリウム入りのプロバイオティクス併用を考慮

オーストラリア発の食事療法
過敏性腸症候群に有効な
低FODMAP食

参考記事
●過敏性腸症候群(IBS)に有効な食事療法低FODMAP、ビフィドバクテリウム入りのプロバイオティクス併用を考慮

■低FODMAP食とは

オーストラリアの
ピーター・ギブソン医師が中心となり提唱している食事療法です。

お腹のはり、腸の過敏は
腸内で発酵する物質を制限、
主に糖質を制限する食事です。

FODMAP(フォドマップ)は

Fermentable(発酵性の)
Oligo-saccharides(オリゴ糖)
Disaccharides(二糖類)
Mono-saccharide(単糖類)
and
Polyols(ポリオール類)
の略です。

■低FODMAP食の腸内細菌叢への影響

SF36やIBS-QOLなどのスコアで評価すると
過敏性腸症候群の症状を低FODMAP食は
有意に改善しています。

低FODMAP食は、過敏性腸症候群で生活困っている方にとって福音となりそうです。


(Citation: Whelan K et al. A Diet Low in FODMAPs Reduces Symptoms in Patients With Irritable Bowel Syndrome and A Probiotic Restores Bifidobacterium Species: A Randomized Controlled Trial.Gastroenterology. 2017 Oct;153(4):936-947)

低FODMAP食を4週間食べた人を調べると、
どうもビフィドバクテリウムが減ってしまうようです。


ビフィドバクテリウム、聞き慣れないことばですが
分かりやすくいえば、ビフィズス菌と思ってください。
善玉菌です。

ビフィドバクテリウムは、糖質
とくに、オリゴ糖を材料として
酢酸や乳酸などの
体によい物質を作ります。

低FODMAP食のOはOligo-saccharides、オリゴ糖のOです。
低FODMAP食では、オリゴ糖を制限します。
結果、善玉菌である、ビフィドバクテリウムが減ってしまうようです。

■低FODMAP食に、ビフィドバクテリウム入りのプロバイオティクスを併用したらどうなる

低FODMAP食に、ビフィドバクテリウム入りのプロバイオティクスを併用したら
ビフィドバクテリウムが減りませんでした。

低FODMAP食には、プロバイオティクスの併用を
考慮してもよいかもしれません。

低FODMAP食に関する、研究はスタートしたばかります。
今後の動向注視していきたいところです。

この研究で使われているプロバイオティクス
こんな成分です。
Streptococcus thermophilus DSM 24731
Bifidobacterium breve DSM 24732
B. longum DSM 24736
B. infantis DSM 24737
Lactobacillus acidophilus DSM 24735
L. plantarum DSM 24730
L. paracasei DSM 24733
L. delbrueckii subsp. bulgaricus DSM 24734

8種類ものプロバイオティクスが含まれています。

日本では売っていないのですが、
ヨーロッパではVivomixx
アメリカではVisbiome
の登録商標で売られています。

ネットで調べてみると
Visbiome High Potency Probiotic
60 Caps
$54.89

Visbiome 60錠 6000円ぐらいみたいですね。

まとめ
低FODMAP食は過敏性腸症候群(IBS)に有効な食事療法
低FODMAP食に関する研究は始まったばかり
低FODMAP食にはビフィドバクテリウム入りのプロバイオティクス併用を考慮

こんな記事も書いています

●潰瘍性大腸炎にプロバイオティクス(善玉菌)は効くのか|プロバイオティクス VSL#3が有望

タデ科の植物から抽出される生薬、青黛(せいたい)は潰瘍性大腸炎に効果があるのか

潰瘍性大腸炎の治療
青黛(せいたい)の話
始めて聞いたのが10年以上前患者さんからです

青黛(せいたい)を飲んでいるのですが、
通院先が遠いので
治っているかどうか、内視鏡を先生のところで確認
お願いできないでしょうか

せいたい?
何の話か全く想像つきませんでした。

漢方の一種なんですと、
患者さんが

5ASAを中心とした
潰瘍性大腸炎の
寛解導入治療
寛解維持治療
があるのに、

成分がよく分からない
得たいの知れない治療はどうだろう
正直な感想でした。

そんな思いとうらはらに、
青黛をのんでいて、当院で大腸検査
よくなっている方、何人かお会いしています。
自然経過なのか
青黛の効果か

■青黛とは

青は藍より出でて藍より青し
の藍
青黛は、藍染めなどの染料である、藍に由来します。
藍はタデ科の植物から抽出される生薬です。

中国で古くから青黛が、
抗炎症作用がある漢方として
つかわれていた歴史があります。

■青黛を服用している患者さんの内視鏡

青黛を扱っているクリニックで
診察を受けたあとに青黛を処方され、

治療経過の判断に必要な内視検査は、
当院のような内視鏡を専門としている施設で
受けている患者さんが多いようです。

青黛をのんでいる患者さんの内視鏡をした時に
大腸にびらん(浅い傷)や潰瘍が残っていて、全く効いていない方もいるのですが、

一方、ほぼ治っている状態の方。
さらには、大腸粘膜面が完全に正常の状態にまで治っている(寛解)方もあります。

そのような寛解になっている方に聞くと、

潰瘍性大腸炎の標準薬である、
ペンタサなどの5ASA製剤は全くのんでいない
青黛だけのんでいるとのことです。

自然経過で治っている可能性もありますが、
何人もの患者さんが、寛解になっている事実から
青黛、一定の効果ありそうです。

■免疫や粘膜修復に、青黛が関わる可能性

得たいの知れない青い粉の青黛ですが、
最近になり、作用機序が徐々に解明されてきています。

さまざまな細胞にある、芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor)とよばれる受容体の存在が昔から知られていました。

ただ、芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor)に何がくっくか(リガンドが何か)長らく不明でした。
最近の研究で、
インディゴやインディルビン
などの物質がリガンドといわれています。

青黛がこの芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor)のリガンドとして働く可能性が提唱されています。

芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor)を介して
免疫修飾や粘膜修復にかかわっている可能性。

芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor)に作用する物質を腸内細菌がつくるとの説もあります。
食事からとるトリプトファンを原料として腸内細菌がつくるようです。

(Citation: Quintana FJ et al. Aryl hydrocarbon receptor control of adaptive immunity.Pharmacol Rev. 2013 Aug 1;65(4):1148-61.)

青黛が潰瘍性大腸に効く可能性
青黛の成分はインディゴ
芳香族炭化水素受容体のリガンドはインディゴの可能性
芳香族炭化水素受容体は免疫や粘膜修復に作用する可能性

それぞれの点が線で
つながってきています

青黛が、
潰瘍性大腸炎の治療薬としてホントに効果があるのか
効果があるのであれば、どれぐらいの服用量が至適か
安全性の確認
さまざまな課題ありますが
今後の展開に注目していきたいと思います。

■まとめ
タデ科の植物から抽出される生薬、青黛(せいたい)
は抗炎症作用があるとして中国では古くから使われていた。
潰瘍性大腸炎への青黛の効果、今後の研究に期待

過敏性腸症候群(IBS)に有効な食事療法、低FODMAP|オーストラリア発の低FODMAP食(低フォドマップ食)が効果あり

腹痛や違和感に下痢、便秘、もしくは下痢と便秘を交互に繰り返す病気を「過敏性腸症候群」といいます。

大腸カメラで調べても、大腸に異常がなく、
大腸の動きに異常をきたす病気です。
ストレスやアルコール、香辛料などで症状が悪化、
自律神経を整える薬や、腸の動きを整える薬が
治療の中心となります。

■過敏性腸症候群(IBS)の薬

過敏性腸症候群は、便の性状で大きく3つに分かれます

便秘型
下痢型
下痢、便秘を繰り返す、混合型

治療薬
コロネル(ポリカルボフィルカルシウム)は便の水分を整える作用があり、下痢型、便秘型両方に効果があります
リンゼス(リナクロチド)は、便秘型
セレキノン(トリメブチン)は下痢型
イリボー(ラモセトロン)は下痢型に効果があります。

薬だけでなく、進学、就職、転勤など環境変化で過敏性腸症候群が悪化することがありますので、生活の指導も併せておこないます。

■過敏性腸症候群(IBS)の食事療法、低FODMAP食

最近、オーストラリア発の過敏性腸症候群に効果がある
食事療法が注目されています。
ピーター・ギブソン医師が中心となり提唱している食事療法、低FODMAP食です。

FODMAP(フォドマップ)は

Fermentable(発酵性の)
Oligo-saccharides(オリゴ糖)
Disaccharides(二糖類)
Mono-saccharide(単糖類)
and
Polyols(ポリオール類)
の略です。

腸内で発酵する、4種類の物質、主に糖類を制限する食事です。

1960年代からの研究で、腸内で発酵して、腸を刺激する各種の物質を減らした食事です。

(Citation: Gibson P et al. History of the low FODMAP diet. J Gastroenterol Hepatol. 2017 Mar;32 Suppl 1:5-7)

■過敏性腸症候群(IBS)の食事療法、低FODMAP食の効果

ピーター・ギブソン医師は
過敏性腸症候群の食事療法として
低FODMAP食を提唱しているだけでなく、
有効性を証明しています。
その結果をGastroenterology医学誌に報告しています。

過敏性腸症候群の患者さんに
・低FODMAP食
・普通のオーストラリア食
2種類の食事による腹部症状を比較しています。

この検討のスゴイところは、
ある人には、低FODMAP食、その後普通の食事
別の人には、普通の食事、その後低FODMAP食
また別の人には、低FODMAP食、その後普通の食事
と、片方の食事だけでなく、両方の食事を食べて比較しています。
クロスオーバー試験とよばれる方法です。

しかも、その食事を食べている過敏性腸症候群の患者さんは、最初にどちらの食事を食べたのかを知らずに比較しています(シングルブラインド)。

もしどちらの食を食べているか知っていたら、
低FODMAP食を食べているので、症状がよくなっていると感じたりする主観的な偏り(バイアス)が加わってしまいます。
この偏り(バイアス)をなくすために、どちらの食事を食べているか知らずに、お腹の症状をチェックしています。

クロスオーバー、
シングルブライド、
検査にて

過敏性腸症候群(IBS)に
低FODMAP食が有効であることが
明らかとされています。

(Cittaion: Halmos E et al. A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome. Gastroenterology. 2014 Jan;146(1):67-75)

低FODMAP食(低フォドマップ食)
この聞き慣れない食事療法
過敏性腸症候群による下痢、便秘で困っている方に朗報です。

■まとめ
過敏性腸症候群に、オーストラリア発の食事療法、低FODMAP食(低フォドマップ食)が有効

過敏性腸症候群IBSと便中カルプロテクチン値の関係

昨年末から(2017年12月)日本でも、
便中カルプロテクチンが測定できるようになりました。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の状態を便をしらべることでチェックできます。

(参考記事)
・カルプロテクチン、ちょっと気をつけた方がいい3つのこと|潰瘍性大腸炎とカルプロテクチン

・潰瘍性大腸炎の新たなバイオマーカー「便中カルプロテクチン」|客観的な数値で結果が得られる潰瘍性大腸炎の検査

カルプロテクチンの特徴

カルプロテクチンは、
便を採って測定する簡便な検査です。
好中球から分泌されるカルシウム結合タンパク質でです。
好中球の腸管への移行に比例してカルプロテクチン値が上昇します、
腸に炎症があると上昇します。

腸管の炎症鋭敏な数値で、
潰瘍性大腸炎など腸にキズが出来る病気が
落ち着いていれば低下
炎症が強ければ上昇
さらに、
潰瘍性大腸炎が悪化する前にも、値が高くなる特徴があります。
落ち着いていたカルプロテクチンの値が急に上がったときには、
食事内容など生活を改善して潰瘍性大腸炎が悪化することを予防したり
薬を増量して再燃を未然に防ぐなど、
治療に有用です。

カルプロテクチンの値は240μg/g未満が、基準値です

過敏性腸疾患と炎症性腸疾患の区別、カルプロテクチン値の関係

保険診療の適応は「慢性的な炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病等)の診断補助又は潰瘍性大腸炎の病態把握」です。
潰瘍性大腸炎やクローン病等以外には、保険診療でカルプロテクチンを測定できません。

過敏性腸疾患(IBS)とカルプロテクチンの話は、研究レベルの話です。過敏性腸疾患(IBS)に対して保険診療でカルプロテクチン測定は出来ませんのでご留意ください。

海外では、
潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群を鑑別(どちかの病気か判断)するのに
カルプロテクチンが活用できないか
研究されています。

(参考記事)カルプロテクチンによる、大腸カメラを極力しない試み|潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群の鑑別

潰瘍性大腸炎か過敏性腸症候群
判断つかない時
便カルプロテクチン測定して
・カルプロテクチン 150μg/g以上 大腸内視鏡(大腸カメラ)で精密検査
という診断アルゴリズム(診断手順)を提唱している方もあります。

内視鏡技術が発達していない国、
医療費が高すぎて大腸カメラを容易に受けられない国
ではカルプロテクチンをまず測定するのも
診断手順として、あり、かもしれません。

潰瘍性大腸炎か過敏性腸症候群の区別は、
大腸カメラで腸を直接調べれば分かることですので、
わざわざカルプロテクチンの値で判断する必要は
日本においてはありません。
大腸カメラで確認でよいでしょう。

過敏性腸症候群でもカルプロテクチンは軽度上昇

過敏性腸症候群は
便秘や下痢を繰り返す、
腸の動きが過敏になりすぎる病気です。

腸の粘膜にキズ(潰瘍)ができる、潰瘍性大腸炎やクローン病とちがい、粘膜は正常です。

粘膜が正常である、
腸の動き(蠕動)に異常がある
過敏性腸症候群では、
カルプロテクチンは正常だと思っておりました。

この報告をみるかぎりは、そうでもなさそうです。

(CitationMelchior C et al. Does calprotectin level identify a subgroup among patients suffering from irritable bowel syndrome? Results of a prospective study. United European Gastroenterol J. 2017 Mar;5(2):261-269.)

正常な方がカルプロテクチン値 20μg/g前後
過敏性腸症候群では 50μg/g前後

基準値が240μg/g以下ですので、
基準範囲内ではありますが、
過敏性腸症候群でやや高めの数値を呈しています。

ときどき、
過敏性腸炎の方で、明らかな病気はないものの、
ちょっとだけあれているところ(非特異的な発赤)
が散在していることがあります。

このようなごく軽度の炎症が、カルプロテクチンが少し高めの数値を呈している原因でしょう。

まとめ

・便中カルプロテクチンは炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の病状把握に有用
・過敏性腸疾患では、カルプロテクチンの値が基準範囲ないであるが、やや高めを呈する

中島クリニック

ガムを噛むことで、大腸カメラの前の前処置がよくなるのだろうか

精密な大腸検査のためには、大便を取り除く必要があります。
腸の中に便が残っていると、ポリープや病変が便で埋もれて見えなくなってしまうからです。

大腸カメラの前処置

検査の前に、モビプレップ、ニフレック、マグコロールなどの下剤を2リットル程のみます。
これらの液は体に吸収しないように調節されており、
飲んだら、
そのまま大腸にまでいって、腸の中を洗い流してくれます。

ニフレックなど前処置の液を2リットルも飲めば、多くの人はトイレに10回以上行って、腸の中は空っぽできれいになります。

空っぽになった大腸はこんな感じです。
https://www.nakajima-clinic.com/medical/coloncamera/

しかし、便秘が強い人でなかなか腸がきれいにならないことがあります。

ガムを噛むことと大腸の動きの関連

いかに腸の中をきれいにするかが大切な大腸カメラの前処置ですが、なかなかおもしろい試みを実際に研究した報告を見つけました。

大腸前処置の下剤を飲むときに
「ガムを噛む」
とより腸がきれいになるかどうかを検討しています。

大腸検査の前処置とガムを噛むことは一見全く関係がなさそうですが、実は関係があります。

ガムを噛むことで迷走神経を刺激する
迷走神経が刺激されると、腸の動きが活発になるのです

内視鏡検査から話はすこしはなれますが、
手術の後にがむを噛むと、
腸蠕動が活発になり、手術後のイレウス(腸閉塞)の予防になる、
入院期間の短縮につながると
いった報告もあるぐらいです。

単純なことですが、ガムを噛むだけで腸の動きが活発になるのです。

大腸前処置の下剤を飲むときに、ガムを噛む効果

この報告では
大腸前処置時にガムを噛んだ人の前処置スコア
6.2±1.4
大腸前処置時にガムを噛まなかった人のスコア
6.1±1.2
ガムを噛むことで、前処置の効果に残念ながら差がありませんでした。

差がありませんでしたが、
これは研究デザインの問題で、
前処置として2Lのポリエチレングリコールを飲んでいるので、すでに2Lのポリエチレングリコールで腸が十分きれいになっており、ガムを噛む、噛まないの差がでなかったと考えられます。

ポリエチレングリコールを1Lや1.5Lに減量して、前処置が不十分な状態でガムを噛む、噛まないを比較したら
差がでたかもしれません。

中島クリニックでの大腸カメラ前処置

当院では、当日の下剤に加えて、検査前日の食事を工夫しています。
前日の低残渣食が効いて、
ほとんどの方がマグコロールやモビプレップの1.5L~2.0Lで、十分に腸が空っぽになります。

ただ、数十人に1人程度ですが、
普段非常に便秘が強い方から、
下剤を2L飲んだけれど、トイレに2-3回しか行っていないです、と電話が入ることがあります。

その時に、今までは、
もう少し水を飲み足してください
部屋をうろうろと歩き回って、軽い運動してみてください
などと伝えていたのですが、
今後は、
水分摂取、軽い運動に加え、ガムを噛んでみてくださいと、
ガムを推奨してみることにします。

中島クリニック

グーフィス(胆汁酸トランスポーター阻害薬)新しい作用機序の便秘薬がもうすぐ処方できるようになります。

ながらく新しい薬の登場がなかった、便秘治療です。
ここにきて、新しい作用機序の便秘薬がどんどん使えるようになってきています。アミティーザ、リンゼス、グーフィスです。

頑固な便秘に悩んでいる方に朗報です。
自分の体にあう薬の選択枝が広がりました。

参考記事
便秘に悩む人必見!便秘解消には角度と時間が重要なワケ

30年ぶりの便秘薬登場ラッシュ

2012年にアミティーザ(ルビプロストン)が登場。ながらく新しい便秘薬の開発がなかったのですが30年ぶりです。
アミティーザは、小腸にあるクロライドイオンチャネルに作用して、腸内への水分分泌を増やし、便秘を改善します。

2017年にリンゼス(リナクロチド)が登場
グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体に作用します。
便秘型の過敏性腸症候群を改善します。

そして今年
2018年、グーフィス(エロビキシバット)が登場です。
全く新しい作用機序の便秘治療薬が認可予定です
(追記情報:グーフィス錠 2018年4月から認可され処方できるようになりました)

30年間、全く新しい治療薬がでてこなかった便秘の世界ですが、アミティーザ、リンゼス、グーフィスと
それぞれ全く作用機序が異なる便秘薬が開発されています。

作用機序が異なる
イコール
自分にあう薬の選択枝がひろがる。従来の便秘薬で効果が不十分で困っている方に朗報です。

グーフィス(エロビキシバット)の作用機序

今年春頃には認可される予定のグーフィス錠の作用機序について紹介いたします。

肝臓でつくられる胆汁酸が大腸に入ると、
大腸の中に水分、電解質を分泌させる
大腸の腸の運動を更新させる
ことが知られています。

この作用を利用して便秘を改善するのが、グーフィス(エロビキシバット)錠です。

回腸(小腸には空腸と回腸があり、口から遠い方の小腸です)に存在する胆汁酸トランスポーター(IBAT)とよばれる蛋白質があります。
この蛋白質は、食べた脂肪の吸収に関わる、胆汁酸を吸収します。

ちょっと回りくどい表現になってしまいました。
胆汁酸トランスポーター(IBAT)が胆汁を無駄に大腸に流れ込まないようにしています。
胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害すると、
胆汁が大腸に流れ込みます。
結果、便秘が改善するのです。

グーフィス錠は、胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害します。

グーフィスの特徴

・便秘を改善する効果が高い
治験データをみると
プラセボ(偽薬)が
週2回ほどしか便に行っていない。
3-4日に1回排便のペース

のに対して、グーフィスを朝1回10mg飲んでいるだけで
週6回も便にいっています。
ほぼ毎日便がでるようになっています。
良く効きます。

引用(グーフィス錠添付文書)

・もうひとつの特徴は、効果が落ちない

1年間(52週間)のみ続けても、便回数が週に平均6回と安定して効いています。

最初は効いていたのに、だんだん効かなくなった、ということが「ない」のがもうひとつの特徴です。

まとめ

・5年前から、まったく作用機序のことなる便秘改善薬が次々と登場しています。アミティーザ、リンゼス、そして今年認可のグーフィス
・2018年春頃認可予定のグーフィス錠は、胆汁酸トランスポーターを阻害するユニークな作用機序。便回数の改善効果が高いのが特徴です。
(追記情報:グーフィス錠 2018年4月から認可され処方できるようになりました)

大腸がんの便検査、便潜血検査結果の読み方|ドックや検診の便ヘモグロビン検査

ドックや検診で便を取る容器をもらいます。
2回取って提出してください、と言われる便の検査です。
便で何が分かるのか、
についてお話いたします。

■大腸癌の便検査(便潜血検査)はどんな検査

便潜血検査は、大腸がん便検査ともいわれる検査です。
大腸がんを早期に発見するために、
便を取って、便の中に入っている血液の有無を調べます。
目に見えるような血液はもちろんのこと、
目に見えない、
ごく微量の血液も検出します。

方法は簡単です。
1. トイレで便をする
2. 検査キットに付いている棒を便に刺して、便を取る
3. 検査キットを病院や検診センターに提出
4.違う日に2回便をとる

1週間ほどで、便に血液が入っているか


の結果が分かります。

■検査が有用(役に立つ)かどうかは「感度」「特異度」をみて判断する

大腸がんの便検査は、
検診を受けることで、大腸癌の予防につながることが証明されている、有用(役に立つ)検査です。
便の検査を受けるだけでなく、陽性(+)であったときに、大腸カメラで精査を受けて、早期に治療を受けることで大腸癌での死亡率をさげることにつながります。

参考記事:便潜血検査の効果|大腸がん検便検査で3割も大腸癌死亡率が下げられる

便潜血検査がどれぐらいの正確さ(感度)で大腸がんと一致するかをしらべた報告があります。

便潜血検査、大腸内視鏡(大腸カメラ)を同時にして
どれぐらい便潜血検査が役に立つか調べています。

(Citation: Li S et al. New immunochemical fecal occult blood test with two-consecutive stool sample testing is a cost-effective approach for colon cancer screening: results of a prospective multicenter study in Chinese patients. Int J Cancer. 2006 Jun 15;118(12):3078-83.)

検査が役に立つかどうかを調べる指標に「感度」「特異度」とよばれる指標があります。

「感度」はその検査をしたときに、ある病気を持っている人が、どれぐらいの率で陽性(+)となるかです。
感度は高ければ高いほどよい、検査です。

検査のよいわるいを判断する指標に
「特異度」
があります。
これは、病気がない人が、その検査を受けた時に、(-)となる率です。
もちろん「特異度」も高い方がよい検査です。

「感度」「特異度」ともに高い検査が、バランスのとれたよい検査です。

便潜血検査の感度、特異度はだいたいこれぐらいです。
感度、特異度ともに90%前後です。

2日法
感度 87.8%特異度96.4%
3日法
感度95.9%特異度89.2%

便をとって出すだけの簡便な検査としては、感度・特異度ともにバランスのとれた良質の検査です。

■大腸がんの便検査、2日法と3日法どちらがおすすめ

現在の主流は便を2回取って提出する2回法です。
3回取って出す検診機関もあります。

2回法と3回法の「感度」「特異度」は以下の数値です

2日法
感度 87.8%
特異度96.4%
3日法
感度95.9%
特異度89.2%

感度は2回法87%ですが、3回法は95%とすごく良くなります。大腸癌の発見率は3回にすることで高まります。
逆に3回法だと、特異度は96%から89%に落ちてしまいます。
「感度」だけでみると3回法の法がよいのですが、「特異度」とのバランスがよいのは2回法です。
そのため、現在の主流は2回法です。

■まとめ
・便潜血検査(大腸がんの便検査)は感度 87.8%、特異度96.4%と非常にバランスのとれた良質の検査です
・便潜血検査をうけることで、大腸癌の早期発見、大腸癌の死亡率低下につながります