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アルコールを愉しまれる方々へ残念なお知らせです。飲酒に適量はないとの報告|健康リスクはアルコール摂取量にしたがって上昇

百薬の長ともいわれるアルコール。一日の疲れを癒やすお酒。

私はお酒を毎日飲むわけではないですが、仕事が終わった後のアルコール最高ですね。

今までは、アルコールには安全域値(ここまでは飲んでもOKの量)があると言われていたのですが、最近の報告からはどうも安全域値はないようです。

■適度なアルコール量

1日1単位アルコールグラムにして10g、ビール1本、ワイン1杯程度なら肝臓で十分分解出来る量なので問題ない、むしろフレンチパラドッククスの言葉があるように、少量のアルコールは飲まないよりも健康によいとも言われていました。

しかし、Lancetの報告によると、少量のアルコールは百薬の長ではなく、飲んだ量に比例して健康に影響するようです。

アルコール好きの人へは、実に耳が痛い話です。

■ここまで飲んでもOKな、安全閾値とは

閾値という概念があります。これはこの量までは飲んでも大丈夫、それ以降は体に影響でますと線引きされる点のことです。

タバコをイメージしてみてください、タバコは安全域値がありません。

1本吸えば、1本分体に影響、20本吸えばさらに体に影響します。

アルコールは1合ぐらいまでなら適量、害はなし。2合3合となると体に影響するとの考えられてきました。表現をかえると、アルコールには閾値があると考えられていました。

しかし83報にもおよぶ前向き検討研究を解析したところ、どうもアルコールもタバコと同じく閾値が「ない」との報告です。

(Citation: Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies. Lancet. 2018 Apr 14;391(10129):1513-1523.)

■少量のアルコールは心血管イベントを減らす、しかし

心筋梗塞のところで、グラフが直線的に右上がりになっているのではなく、V字型になっているのがわかります。

少量のアルコールは心血管イベント、特に心筋梗塞を減らすというのは事実のようです。

ところが、脳卒中はじめ、癌のリスク含め他の病気は、グラフが直線的に右上がりになっています。

飲めば飲むほど、リスクがあがることを示しています。いいかえると、少量飲んでも健康に影響するのです。

■長年アルコールを飲む影響

1-15年どれだけの年数アルコールを飲み続けているかで健康リスクを評価しています。

Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1015-1035. doi: 10.1016/S0140-6736(18)31310-2. Epub 2018 Aug 23. Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. GBD 2016 Alcohol Collaborators.

飲む年齢に比例して右肩上がりに健康リスクあがってしまっています。

■アルコール飲酒が寿命を縮めるのか

週100gのアルコール量以下では、ほぼ寿命影響なさそうです。逆に200g(ビール2本、ワイングラス2杯)以上からは影響出始めます。

週350gアルコール以上のむ人(毎日ビール5本、ワイングラスにして5杯以上は目に見えて影響でますので、さすがに控える必要あります。

■まとめ

今までは、安全閾値があると考えられていたアルコールですが、最近の研究で安全閾値が「ない」とのことが分かってきました。

アルコール好きの方には耳の痛い話ですが、アルコールは飲んだ量に比例して健康リスクとなります。

朗報としては、週100g以下のアルコール量、毎日ビール1本やワイングラス1本程度では、ほぼ影響なさそうです。 しかし、200g(ビール2本、ワイングラス2杯)以上からは目に見えて影響でますので、飲むとすれば適量に、です。

C型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスク低下|1万例コホートで全死亡リスクが52%低下

1989年にアメリカのカイロン社によって発見されたC型肝炎ウイルス、インターフェロンを中心に治療が行われてきました。

2015年以降、直接ウイルスに作用してウイルスを消す治療が(インターフェロンフリー治療DAA)が使えるようになり、劇的な治療効果が得られています。

・ハーボニー(ソフォスブビル、レディパスビル)

・ヴィキラックス(オムビタスビル、パリタプレビル、リ・トナビル)

・エレルサ/グラジナ(エルバスビル/グラゾプレビル)

・マヴィレット(グレカプレビル、ピブレンタスビル)

などの内服薬です。

参考記事 ●マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプ|C型肝炎治療は12週間からさらに短縮され8週間治療時代へ

●2015年以降のC型肝炎治療はインターフェロンフリー治療(DAA)が主流

●いよいよ最終コーナーにさしかかったC型肝炎治療

■慢性肝炎の経過

C型肝炎治療をするのは、肝炎を治すためです。さらには慢性肝炎が続いた結果起きてくる肝がんの予防です。

正常肝臓→慢性C型肝炎→肝硬変→肝がん

慢性C型肝炎の段階でウイルスが消して、肝硬変、肝がんを予防するのがインターフェロン治療や現在主流のインターフェロンフリー治療(DAA)です。

インターフェロン治療は、肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることがさまざまな研究から分かっています。

■インターフェロンフリー治療(DAA)が肝細胞癌を増やす?

インターフェロン治療は、肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることがさまざまな研究から分かっています。

C型肝炎ウイルスを消し去るインターフェロンフリー治療(DAA)も肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることが予想されます。

ところが、その予想に反する報告が2016年スペインのバルセロナの研究グループから報告されました。肝細胞癌を根治治療した後に、インターフェロンフリー治療(DAA)でウイルスを消すと、肝細胞癌再発率が増える可能性を示す報告でした。

この報告は母集団が特殊であることと、症例数が限られていることから、DAA治療で肝がんが増えることがあるのかどうか、その後の研究結果を待つ必要がありました。

しかし、その後の多数の報告でDAA治療群で、治療していない群よりも、肝がん再発が減ることが分かってきました。

当初のスペインからの報告は杞憂に終わったのです。

■C型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが低下する

2012年から2015年にフランスの32施設で治療された10166例のコホート研究の結果がLancetに報告されました。

待望のコホートの結果です。

結果

全死亡リスクは52%低下 (adjusted HR 0.48, 95% CI 0.33-0.70)

肝細胞癌リスクは34%低下 (adjusted HR0.66, 95% CI0.46-0.93)

(Citation: Carrat F et al. Clinical outcomes in patients with chronic hepatitis C after direct-acting antiviral treatment: a prospective cohort study. Lancet. 2019 Feb 11. pii: S0140-6736(18)32111-1)

C型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが下がることが明らかとなりました

■まとめ

インターフェロン治療に比べ、格段に副作用が少なく、治療効果の高いインターフェロンフリー治療(DAA)です。

当院で施行したDAA治療、全員がSVR(ウイルスが消失している状態)となっております。

当初のスペインからのDAAで肝がん再発が増えるかもしれないとい話は杞憂におわり、コホート研究でC型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが下がることが明らかとなりました。

無症候性(症状のない)サルモネラ菌保菌の治療|無症候性サルモネラ陽性をみたら胆のうをチェック

腸炎ビブリオ、キャンピロバクターとならんで食中毒の原因としてサルモネラ菌、代表的な原因です。

サルモネラ菌はトリ、ブタなどの腸管に常在していますので、汚染された食べ物から容易に食中毒をおこします。

■職場の検便検査でサルモネラ陽性

嘔吐、腹痛、下痢、発熱あり病院受診。問診、触診で食中毒が疑われ、原因特定のため検便(便培養)したらサルモネラが原因であることが判明。というのが多くの場合です。

ところが、サルモネラには「保菌状態」があります。症状なにもないのに、検便(便培養)したらサルモネラ菌陽性がおこりうるのです。

健康で過ごしている人に検便検査をすることは病院やクリニックではありませんので、サルモネラ保菌状態が見つかるのは職場での検便検査です。

給食などの調理や食品関係の仕事についていると、食品衛生の観点から定期的に検便検査をおこないます。

元気に働いているのに、ある日突然呼び出され食中毒の原因であるサルモネラ陽性結果を告げられます。

「食中毒の菌が出てしまって、健康なのに」今後どうしたらよいのでしょうかと、相談にクリニックにこられます。

■サルモネラ感染症の治療

健康な方がかかる、食中毒としての軽症のサルモネラ感染症には、抗生物質による治療は必要ない場合がほとんどです。

逆に抗生物質の使用が、サルモネラの保菌を促してしまうことがあります。

とはいえ、全身状態、経過によって必要時は、クラビット、オゼックス、シプロキサン、ホスミシンなどを投与します。

乳幼児、高齢者、免疫不全状態(ステロイド内服中、抗がん剤投与中)は敗血症など重症化することがありますので、より慎重な治療が必要となります。

■無症候性(症状のない)サルモネラ保菌者の治療

職場の検便検査で見つかった、無症候性(症状のない)サルモネラ保菌どう治療するか。

症状がなくても食品関係にたずさわっているので、抗生物質による除菌となります。これは治療というよりは、社会的な理由からです。

クラビット、オゼックス、シプロキサンなどのニューキノロン系抗生物質やホスホマイシン系が治療の中心です。

施設に入所中に偶然見つかったサルモネラ保菌など食品にたずさわらず治療を急ぐ必要がない場合があります。抗生剤投与せず、ミヤBMなどの整腸剤で腸内バランスを整える治療をおこないます。西宮中島クリニックでも抗生剤を投与せず整腸剤で、サルモネラが陰性化(消える)を多数経験しています。

■無症候性サルモネラ、胆のうをチェック

サルモネラ菌陽性の時に、胆のうをチェックしておくこともポイントのひとつです。

胆石があると、抗生物質で治療して一旦消えても、しばらくしたら再度サルモネラ陽性になることがあります。

サルモネラ菌は胆石の表面に多糖類からなるバイオフィルム(バリアーみたいなもの)をつくって隠れます。そのため抗生物質が効かなくなるためです。

慢性のサルモネラ菌保菌者の8割に胆石ふくめ肝胆道系の病気が隠れているという報告もあります。

西宮市中島クリニックでも無症候性サルモネラの方は必ず、腹部エコーで胆石含め肝胆道系に異常がないかチェックしています。

個人的な印象ですが、肝胆道系疾患有病率8割の報告ありますが、実際にはそんなに多くないような。むしろ少数です。

胆石をもっているとサルモネラ菌、治療抵抗性なので胆のう摘出術が必要です。

■まとめ・無症候性(症状のない)サルモネラ菌陽性をみたら胆のうをチェック・胆石があり何度除菌治療しても陽性になるときは胆のう摘出術考慮

マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプ|C型肝炎治療は12週間からさらに短縮され8週間治療時代へ

C型肝炎治療薬マヴィレット配合錠、腎障害や耐性遺伝子変異があっても効果の高い、いわば優等生タイプの治療薬が先日製造認可を受け、早ければ年内にも処方できるようになります。

C型慢性肝炎は、インターフェロンフリー治療(インターフェロンを使わない治療)の登場により、100%近く治る病気となりました。

つい2年ほど前まで治療の中心だったインターフェロン治療に代わり
・ハーボニー(ソフォスブビル、レディパスビル)
・ヴィキラックス(オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル)
・エレルサ/グラジナ(エルバスビル/グラゾプレビル)
などが現在治療の中心となっています。

今月新たな、インターフェロンフリー治療薬が製造承認を受けました。
マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)です。

(Citation: https://www.healio.com/)
アメリカでは1ヶ月先行して8月にFDAの承認を受けています。

ひとことで、新しいインターフェロンフリー治療薬、マヴィレット配合錠をあらわすとすれば、
「優等生タイプ」
です。

参考記事
・2015年以降のC型肝炎治療はインターフェロンフリー治療(DAA)が主流
https://www.nakajima-clinic.com/2015/09/279/

・いよいよ最終コーナーにさしかかったC型肝炎治療
http://www.nakajima-clinic.com/2015/09/276/

従来のインターフェロンフリー治療薬、
効果は十分に高くすばらしい治療薬です。
しかし、
腎機能障害があるときには使えない
ウイルスジェノタイプが1b以外使えない
L31Y93耐性変異があるときには避けた方がよい
などなど、
薬によりそれぞれ細かい注意点があり、
患者さんの腎機能、C型肝炎ウイルスの耐性変異など全てを総合的に判断して、治療方法を決定する必要がありました。

しかし、マヴィレット配合錠は、これら全ての問題をクリアしています。
・腎障害があっても治療できる
・耐性変異をもっていても、効果がある
・ウイルスジェノタイプは1b含め、どのタイプでも効く(これをパンジェノタイプといいます)
さらには
・従来インターフェロンフリー治療が12週間だったのが8週間で終了する(注意:他治療で消えず再治療症例は12週まで延長可)
・過去に他の治療で消えなかった患者さんにも効果がある
と、どような背景、基礎疾患をもったケースでも効く、まさに優等生タイプの治療薬です。

(Citation: マヴィレット配合錠添付文書)

国内第III相試験のデータでは
初回治療では
ジェノタイプ1(日本人に最も多いタイプのウイルス)では、
腎機能が悪くても良くても、
耐性変異が有っても無くても、
慢性肝炎でも肝硬変でも、
8週間の内服で
99.1~100%の高い治療効果です。

(Citation: Mensa FJ et al. Glecaprevir and pibrentasvir for 12 weeks for hepatitis C virus genotype 1 infection and prior direct-acting antiviral treatment. Hepatology. 2017 Aug;66(2):389-397)

こちらは、海外のデータですが、
過去に別の治療で消えなかった方へのマヴィレット配合錠投与で
95%がウイルス消えています。

まとめ
・マヴィレット配合錠(グレカプレビル、ピブレンタスビル)は優等生タイプの治療薬
・腎機能が悪くても良くても、Y93耐性変異が有っても無くても、慢性肝炎でも肝硬変でも、8週間の内服で99.1~100%の高い治療効果

中島クリニックでは
C型慢性肝炎(ジェノタイプ1b:日本人に最も多いタイプ)
の治療を
・ハーボニー
・ヴィキラックス
・エレルサ・グラジナ
から選択して、患者さんの状態、治療中薬剤、L31Y93耐性遺伝子変異など総合的に判断しておこなっています。

今後は
・マヴィレット
も含め総合的に判断して治療法を選択することになります。

補足)ダクルインザ/スンベプラは治療効果、副作用の面から現在は使っておりません。
ジメンシーは特殊なケースで適応あると考えております。

『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡』CNNのニュース。目を向けるべきは『肝疾患を患っていたこと』|ビブリオ・バルニフィカスによる敗血症

CNN.co.jpニュースに
『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡 米男性』
目を引くニュースがありました。

この手のキャッチーなタイトルは、大概「釣り目的」クリックさせるために、大袈裟なことが多いんだよね、
と思いながらも読んでしまいました。

(Citation: headlines.yahoo.co.jp/cnn-int)

タトゥー彫って、5日目、海で泳いだ。
海に入った、3日後、発熱、両足の痛みで入院。
皮膚科黒ずみ変色、水疱形成、敗血症ショック。
人工呼吸器を装着、強力な抗生剤投与。
最初の入院から2ヶ月後に永眠。

タトゥー彫って、生傷ある段階で海に入って細菌感染、それが命取りになった経過です。

タトゥー彫ったあとの傷のがどれぐらいで治るか、全く経験ないので知りませんが、
タトゥー彫った程度の傷口からばい菌が入って、致命傷になることあるのだろうか。
記事を読んでの最初の印象です。

タトゥーを彫った面積はわかりませんが、もしタトゥーを彫った程度の傷で致命傷になるのであれば、
少しでもけがをしていたら、怖くて海に入れないことになります。

起因菌は『ビブリオ・バルニフィカス』と書かれています。たとえ傷があっても健康な人がビブリオ・バルニフィカスによる敗血症を起こすのだろうか。
と思いながら記事をよくよむと、

「慢性的な肝疾患を患っていた」
とあります。

ニュース的には『タトゥーを彫って海に入って感染』がキャッチーではあるのですが、

目を向けるべきは『背景に肝疾患をもっていること』です。

肝硬変の患者さんに、塩分をひかえる事や、適切な蛋白質の量など、食事指導をおこないます。

さらに、私は肝硬変の患者さんには、生魚や生ガキなどをひかえるようにも伝えています。

これは、極めて発症頻度は低いのですが、ひとたび起きると極めて致死率の高い『ビブリオ・バルニフィカス』による感染症をさけるためです。
『ビブリオ・バルニフィカス』壊死性筋膜炎や敗血症をひき起こします。

『ビブリオ・バルニフィカス』は健康な人に問題になることはなく、肝硬変や免疫不全の時に感染を起こします。

肝硬変の方が、生ガキを食べて『ビブリオ・バルニフィカス』に感染という報告が多いのが特徴です。

なぜ、肝硬変の人が感染するかは、

『ビブリオ・バルニフィカス』は汚染食物と一緒に腸管から吸収、
門脈を通って体に入る、
健康な人なら肝臓でトラップされ解毒され問題ないが、肝硬変があると、シャントとよばれる肝臓を通り抜けてしまう経路があり、シャントを通して全身に広がってしまうのが原因と思われます。

このCNNニュースの、タトゥーを彫った方も慢性な肝疾患を患っていたようです。

CNN.co.jpには飲酒量の記載がないので、CNNのオリジナル記事を読むと、

“To make matters worse, the man had chronic liver disease from drinking six 12-ounce beers a day.”
(Citation: CNN health. Man dies after swimming with new tattoo
Updated 0315 GMT (1115 HKT) June 3, 2017)

と書かれています。

12オンスビールを1日6本

1オンスは約29.6cc
12-ounce beersはビール350mlに相当
缶ビール1日6本、
毎日ビールを2リットルほど飲んでいたようです。

この方、アルコール性肝障害がなければ、タトゥー彫って海で泳いでも、不幸な転帰にならなかったのではないでしょうか。

このBMJ誌ケースレポートからの教訓としては、

肝障害があれば『ビブリオ・バルニフィカス』は皮膚からでも感染する。

私は『ビブリオ・バルニフィカス』の主な感染は、生ガキなどを食べて、消化管を介する感染経路の認識でした。この症例報告を読んで皮膚からの感染経路もあり得ることを知り驚いております。

(Citation: Hendren N et al. Vibrio vulnificus septic shock due to a contaminated tattoo. BMJ Case Rep. 2017 May 27;2017)

とは言え、皮膚からの感染経路は非常に特殊なケースだと思われます。
肝硬変の患者さんには、引き続き、生魚、生ガキなどの食事を避けるように食事指導徹底いたします。

まとめ
『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡』CNNのニュース。
目を向けるべきは『肝疾患を患っていたこと』
です。

B型肝炎ウイルスル量(HBV DNA量)が国際単位IU/mLに変わります

2016年からB型肝炎ウイルス量単位がcopies/mLからIU/mLに変わります。

B型肝炎ウイルス量は、copies/mLの単位が使われていました。
世界では国際単位(IU)が使われており、日本ではコピー単位が用いられていましたが、日本肝臓学会の指針で、国際単位(IU)へ移行することが決まりました。

20161027003426
(Roshe diagnostiscs資料)

Log表記で、従来の数値(copies/mL)からおおよそ0.76を引いた値が、国際単位(IU/mL)となります
しばらくは検査結果に、copies/mLとIU/mLが併記されますので、どちらの単位でのウイルス量か確認してください。

大切な数値
B型肝炎の特効薬である核酸アナログを導入するかどうかなどの基準に4と言う数値があります。4Log copies/mlをIUへ換算すると

 4 Log copies/ml = 2000IU/mL = 3.3 Log IU/mL
となります。

コピー単位から国際単位への移行、キロメートルとマイルの差ぐらい違和感ありますが、単位は慣れるしかないですね。

肝硬変とサルコペニアの関係|サルコペニアって何だ。筋肉量低下による生活の質が低下

兵庫肝疾患診療連携フォーラムに参加してきました。
肝疾患とサルコペニアがテーマでした。
「サルコペニア」聞き慣れない言葉ですが、sarco「筋肉」+penia「減少」を組み合わせた、「筋肉の減少」を意味することばです。1989年Irwin Rosenbergが加齢にともなう筋肉量の低下による生活の質の低下を提唱したのがはじまりです。

サルコペニアは、高齢者の骨折、転倒との関連、さらにはそれがきっかけで寝たきりになる、など、加齢現象と思われていますが、さまざまな病気でも進行します。

肝硬変でもサルコペニアが進行することが、最近の研究で明らかになってきました。

日本肝臓病学会でも、サルコペニア判定基準作成ワーキンググループが立ち上がり、サルコペニア判定基準(第1版)が今年発表されています。

20160925214547

一般社団法人日本肝臓学会サルコペニア判定基準(第1版)
筋肉量の減少は1年に0.5~1%程度が健常時ですが、
肝硬変での骨格筋減少量は年率2.2%と倍以上です。

しかも、サルコペニアが肝硬変の方の予後(寿命)と関連する報告もあり、
高齢者が生活の質(Quality of Life: QOL)をよりよく保つために運動が大切であるのと同じように、肝硬変でもQOLを保つために適度な運動が大切です。

余談ですが、40才ぐらいから、運動しないと筋力はどんどん落ちてきます。
研究報告によると、その低下率は1年に0.5%程度です。
年0.5%程度とはいえ、運動をしている人と、何もしない人では、数十年後には、積もり積もって大きな差になります。

高齢者のみならず、40才過ぎたら運動。
肝疾患をわずらっていても、適度な運動。
です。

注意:
腹水がたまったり、黄疸がでたりする、非代償性肝硬変の場合、安静が療養上必要です、運動をしてよいかどうかは、かかりつけの先生と相談してください。

中年必読。アルコールと脳梗塞の残念な関係

好評のアルコールシリーズ続編です。

 

アルコールは、百薬の長「ほどほどのお酒は、ストレス解消にも、体にもいい」と言われているがどうなのだろう。

 

僕も患者さんに聞かれ「タバコは1本吸ったら1本分害があるからダメ、アルコールは適量なら肝臓で十分に分解できるのでOKですよ」と言っていました。

でも、この後半部分を今後は改める必要あるかもしれません。

 

アルコールが百薬の長であればJカーブを呈することになる。

Jカーブとは、Jの形が示すように、

Jの左端すこし上がったところが「飲まない人」 「中」

Jの下の一番下がったUの部分が「適量のアルコールをのむ人」 「低」

Jの右I字型に上がる部分が「大酒する人」 「高」

 

もし、アルコールと健康の関係を調べて

「飲まない人」病気は少ない、

「適量飲む人」は「飲まない人」よりもさらに病気が減る

「大酒する人」は病気が増える

となれば、

少量のアルコールは寿命を延ばし、飲み過ぎると当然のことながら短くなる、Jカーブを形成することとなる。

 

運動と健康の関係はJカーブを描きます。

「全く運動しない」よりも、「適度な運動」は寿命を延ばします。しかし過ぎたるは及ばざるがごとしで「過剰な運動は」逆に病気のリスクを高めてしまいます。

 

お酒は飲み過ぎると、血圧を高くして、脳梗塞のリスクが高くなることが知られています。これは厳然とした事実ですが、もし適度なお酒が百薬の長とすれば、少量のお酒は脳梗塞を減らし、Jカーブを描くことになります。

これを調べた結果がStrokeという脳卒中専門医学誌に報告されています。

20160823225321

45~64才、12,433人を平均22年間、脳梗塞の発症率とアルコール飲酒量の関係を調べています。

グラフの左端が「飲まない人」

真ん中が「適量のむ人」

右側が「大酒する人」

愛酒家の期待する結果は、真ん中「適量のむ人」のリスクが下がるJ字型のグラフなのですが、右上に直線的に上がっていく曲線を描いています。

 

少量のアルコールは百薬の長ではなく、飲まないのが一番体によいと、

身も蓋もない結果でした。

なぜ必要なのか。B型肝炎ワクチン、ユニバーサルワクチネーション

東南アジア、南アフリカなど世界では、B型肝炎キャリア率が10%を超す国が多数あります。

日本は0.8%まで現在下がってきており、キャリア率は低い方ですが、まだ撲滅には至っていません。

 

20160820002232

どのようにしてB型肝炎が感染するのか、感染経路の話題を中心に、なぜユニバーサルワクチネーション(全員接種)が大切であるかお話いたします。

 

「ユニバーサルワクチネーション」って何と思った方はこの記事をどうぞ。

 

「予防接種、ユニバーサルかセレクティブか、それが問題だ」

「B型肝炎ワクチン、サクセスストーリー」

 

B型肝炎は、血液、精液などの体液を介して感染します。

 

母子感染、輸血(昔のB型肝炎をチェックしていなかった時代)、予防接種(昔の針を変えず接種していた時代)、針治療、入れ墨などです。あとは性感染です。

 

ボクが子供の頃はまだ、保健室に一列に並んで、同じ針で何人か続けて接種していました。30年ぐらいまえの話ですが。

今は注射の針、シリンジは使い捨てなので予防接種で感染することは絶対にありませんので、ご安心ください。

 

それぞれの感染経路を詳しく見ていきましょう。

 

母子感染→出生時にB型肝炎ワクチンとガンマグロブリンで予防できています。

予防接種→注射の針シリンジは使い捨てなので、この感染経路、今はありえません。

輸血→献血をB型肝炎抗原、抗体チェック、NATと言う精密な検査で調べているため、かぎりなくゼロに近い状況です。

性感染→大人になってからB型肝炎にかかっても、慢性化しません。例外の話は後ほど。

 

現在は、厳重に血液を介する、母子感染予防、輸血のチェックなどを行って、感染経路が断たれています。このように万全の対策をとっても、どこからもらったか不明のB型肝炎キャリアが約20-25%存在します。

これが、ワクチン接種の重要性を強調する1つめの理由です。

 

B型肝炎は大人になってからの感染では慢性化しませんので(例外の話は後ほど)、出来るだけ幼少期に全員がワクチン接種を済ませておくことが大切です。

 

B型肝炎は、大人になってからの感染は急性肝炎・劇症肝炎などを起こしますが、慢性化しないのが、すこし前までの常識でした。医学の教科書にもそう書いてありました。

しかし例外があることが明らかになってきました。

近年流行してきているジェノタイプA型とよばれるB型肝炎は、恐ろしいことに、大人になってからの感染でも慢性化することがあるのです。

これが、ワクチン接種の重要性を強調する2つめの理由です。

 

パートナーがB型肝炎キャリアであるかどうかは分からないものです。

ワクチンで抵抗力をつけておくことが大切です。

B型肝炎ワクチン、サクセスストーリー

待ちに待った、B型肝炎ワクチン「ユニバーサルワクチネーション」が2016年秋から日本でもスタートします。

 

「ユニバーサルワクチネーション」って何と思った方は前回ブログをどうぞ。

「予防接種、ユニバーサルかセレクティブか、それが問題だ」

 

 

20160818233352

「ユニバーサルワクチネーション」を導入してB型肝炎を激減させることに成功した国があるので紹介いたします。

台湾です。

 

台湾は国民のB型肝炎キャリア率が約20%、5人に1人がB型肝炎の社会問題を抱えていました。

そこで1986年から「ユニバーサルワクチネーション」全員接種を開始しました。

「ユニバーサルワクチネーション」導入10年後に、なんと小学校1年生のB型肝炎キャリア率を10.5%から1.7%と激減させることに成功したのです。

 

まとめ

・B型肝炎をワクチンで予防する大切さが、台湾の取り組みから分かります。

・日本でもB型肝炎「ユニバーサルワクチネーション」秋から開始です。