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C型肝炎ウイルスの感染経路(大人編)

C型肝炎ウイルスの感染経路についてです
 
C型肝炎ウイルスに感染している人の血液が、体の中に入ることで感染します。
C型肝炎が発見される前は輸血や血液製剤を介しての感染がほとんどでした。
抗体やNAT(核酸増幅検査)を用いた厳重な輸血や血液製剤の感染症チェックのおかげで、現在輸血による感染は激減しています。
 
輸血による感染経路がなくなった現在、
C型肝炎は激減、撲滅まで目前です。
しかし、C型肝炎の新規感染が少数ながらあるのが現状です。
その経路についてお話いたします。
 
参考記事
 
(引用:国立感染症研究所 IDWR 2011年 第21号速報
C型肝炎 1999年4月~2009年)
 
1999年から2009年の10年間に新規報告があった718例の感染報告のうち、
感染経路が270例で判明しています。
 
270例(男性151例、女性119例)の詳細は以下です。
 
・医療行為等に関連するもの(針刺し事故、透析、医療上の検査・処置、歯科治療、感染者検体、院内感染等)98例(35%)
 
・性的接触60例(21%)
 
・静脈薬物使用36例(13%)
 
・医療行為以外での針等の刺入(刺青、ピアス、カミソリ等)32例(11%)
 
・輸血/血液製剤30例(11%)
 
・鍼治療7例(3%)
 
・家族等感染者との接触5例(2%)
 
・母子感染3例(1%)
 
一番多いのは針刺し事故などの医療行為に関連するものなのです。
C型肝炎の患者さんに使った針や処置具を自身に誤って刺す、針刺し事故による医師や医療従事者の感染です。
使った注射針にキャップをしない(リキャップ)、感染性廃棄物の扱いなど病院の医療安全対策を再度確認する必要があります。
 
次に
性的接触
静脈薬物使用
刺青、ピアス、カミソリ等での針
と続きます。
 
知っておいていただきたいのは、ピアスや鍼灸治療でもC型肝炎ウイルス感染することです。
もちろんC型肝炎のみならず、より感染力の強いB型肝炎もピアスや鍼灸治療でも針を介して感染します。
 
当たり前です。
C型肝炎ウイルスは血液を介しての感染です。
人に一度使った針を、別の人に使うこと、あり得ないと思いますが、
もし、他人に使った針を次の人に使ったら感染源となります。
 
他人に使った針は、
紫外線殺菌や、
アルコールでの消毒をしても
ウイルスには無効です。
 
他人に使った針は、使わない
当然です。
 
まとめ
C型肝炎の感染経路
・輸血血液製剤の肝炎ウイルス抗体、NAT(核酸増幅検査)など入念なチェックにより、輸血による感染機会が激減しています。
・性的接触、静脈薬物使用、刺青、ピアス、カミソリ等での針などが主たる感染ルートです。

子供が6ヶ月間毎日、ビフィズス菌と乳酸菌をとった結果|感染症予防効果はあったのか

最近よく耳にする「プロバイオティクス」
体によい効果をもたらす生きた微生物のことです。

ビフィズス菌
乳酸菌
などです。

菌を殺す、antibioticsアンチバイオティクス(抗生物質)と
対比する言葉として提唱されたのが、
probioticsプロバイオティクスです。

ロタ腸炎などのウイルス性腸炎は、プロバイオティクスをのむと、下痢の期間が短くなり、はやく病気が治ることがわかってきています。

病気になってからではなく、元気な時からプロバイオティクスをとっておくと腸炎、風邪などを予防できるかを検討した報告があります。

(Citation: Laursen RP et al. Probiotics and Child Care Absence Due to Infections: A Randomized Controlled Trial. Pediatrics. 2017 Jul 3. pii: e20170735. doi: 10.1542/peds.2017-0735. )

290人の乳幼児(平均10ヶ月)を2つのグループに分け
・ビフィズス菌と乳酸菌を毎日6ヶ月間内服
・プラセボを6ヶ月間内服
を比較しています。

下痢の回数、期間
肺炎、気管支炎
中耳炎
医療機関を受診した回数

その他20項目以上を比較検討しています

結果は、プロバイオティクスをとっている子供、とプラセボ(偽薬)をとっていた子供と、どの項目でも差がありませんでした。

残念ながらこの研究ではプロバイオティクスを毎日とっても、期待する効果はありませんでした。

プロバイオティクスに効果がないと結論づけるのは尚早で

6ヶ月間という限られた期間の問題か、
投与されたプロバイオティクスの種類の問題か、
プロバイオティクスの量が少なかったのか、
さまざまな要因があります。
今後の研究成果に期待したいところです。

 

(参考記事)

潰瘍性大腸炎、抗生剤内服療法。抗生剤内服で病状が改善。

幼少期の抗生物質投与、こんなにも影響するものなのか。炎症性腸疾患発症率との関連

潰瘍性大腸炎にプロバイオティクス(善玉菌)は効くのか|プロバイオティクス VSL#3が有望

まとめ
ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスを日常的にとっても、ウイルス性腸炎や熱のかぜを予防するほどの効果は得られませんでした

熱中症が一番多いのは8月ではない

まだ7月なのに、過ごしづらい日が続いています。
西宮市、昨日の最高気温は29度、
今日の最高気温は31度、真夏日の予測です。

熱中症が一番多いのは8月ではなく7月です。

(引用:総務省消防庁平成27年の熱中症による救急搬送状況)

夏から連想するのは
蝉の声
夏の甲子園
うだるような暑さ

日本の、うだるような8月です。

熱中症は8月は非常に多いのですが、真夏よりも多いのが実は7月なのです。

急激に上がる温度に体が順応していないのが一因です。
急に気温があがるものの、体が暑さに不慣れで順応できていないのが7月です。

どんな人が熱中症になりやすかを調べた研究があります。
(Citation: Gardner J et al. Risk factors predicting exertional heat illness in male Marine Corps recruits. Med Sci Sports Exerc. 1996 Aug;28(8):939-44.)

軍隊に入隊した新入隊員訓練と熱中症の検討です。

熱中症になりやすいのは
・太っていて
・持久力がない人
です。想像通りの結果ではありますが。

特に肥満度BMI(Body mass index)が26を越すと要注意です。
BMI22になる体重が標準体重です。

暑さに弱い、太っていて、持久力がない方でも対策はあります。

この新入隊員訓練の最初には、熱中症のリスクが高かった、太っていて、持久力がない人も3ヶ月の訓練後には見違えるように暑さにつよくなります。

3ヶ月の訓練後には、たとえ太っていても、持久力がなくても、熱中症にかかりにくくなります。

トレーニングすれば、からだが暑さに慣れるのです。

(Wallace R et al. Risk factors for recruit exertional heat illness by gender and training period. Aviat Space Environ Med. 2006 Apr;77(4):415-21.)

話もどります、
暑さに体が慣れていない7月は熱中症になりやすいので、十分な睡眠、十分な水分補給をして過ごしましょう。

熱中症予防にスポーツドリンクがよいと思い込んでいる人いるようですが、スポーツドリンクには多量の糖分が入っていますのでご注意ください。

参考記事
・スポーツドリンクに含まれる糖分

・スポーツドリンクの取りすぎにご注意

熱中症予防に必要なのは、水分、ミネラルです。
そして、少量の糖分です。
ジュースのような多量の糖分は不要です。

 

自転車通勤は死亡率を下げる

座りっぱなしの生活が病気を増やしてしまうのは明らかです。
大腸がんも運動が予防になります
参考記事
運動で大腸がん予防|運動と大腸がんの関係

私は3ヶ月前から、
西宮市ドック読影など外勤のときは、
車での移動をやめ、
自転車で移動しています。
最近は車を使わない生活励行中です。

運動が体に良いのは分かっている。
でも、仕事で疲れて家に帰ってきてから、毎日ウオーキングに出かけるのは続かないものです。

糖尿病や高血圧を治療中の方には、通勤に二駅手前で降りてウオーキングを取り入れることを勧めています。

阪急甲東園駅が最寄りであれば、二駅前の西宮北口駅で降りて、二駅分の30分弱歩いて帰るだけで、週2時間以上ウオーキングができます。

通勤手段と健康に関することは海外でも関心が高いようです。

車通勤、徒歩通勤、自転車通勤
どれが、心血管疾患やがんを予防して、長生きできるか調べた研究があります。

英国での前向きコホート研究(prospective cohort study)です。
コホート研究ですので結果は客観性があります。
(Citation: Carlos A et al. Association between active commuting and incident cardiovascular disease, cancer, and mortality: prospective cohort study. BMJ. 2017 Apr 19;357)

26万3450人の参加者を
車や公共の移動機関(non-active)
徒歩通勤
自転車通勤
に分けています。

車や公共の移動機関で通勤する人と比べ、
自転車通勤は死亡率を相対危険度で59%
心筋梗塞などの心血管系の病気は48%に低下します。

自転車での通勤で、死亡率、心筋梗塞などの心血管系疾患の病気が半減するのです。

徒歩での通勤も、かなり効果あります。
死亡率はさがらないながらも、心筋梗塞などの心血管系の病気が36%減ります。

自転車での通勤効果絶大
徒歩での通勤もよし
という結果です。

さまざまな交絡因子を含め、国によって通勤事情はかなり異なるので、英国の話をそのまま日本に当てはめることとはできませんが、『Active commuting』体を動かすことが良いのは間違いありません。

むりのない範囲で、通勤手段を徒歩や自転車にかえてみてはどうでしょうか。

サプリメントで寿命はのびるのか

当院は消化器内科を専門としているので
患者さんからの相談で

「ピロリ菌調べた方がいいですか」
「大腸カメラ何歳から受けたらいいですか」
など胃腸に関わる相談は多いのですが

それとならんで、多いのが

「サプリメント飲んだ方がいいでしょうか」
とサプリメントやビタミンに関する相談です。

健やかに過ごしたいのは万人の望みです。
何かよいものがあれば、と思うのは当然です。

往年の名優が、サプリメントを愛用していると聞けば、期待する対象がサプリメントやビタミンに向かうのは当然です。

『サプリメント』
必要かどうか、判断する一助となる客観的に効果を判断したメタアナリシスの結果を紹介いたします。

情報があふれている時代、どのような情報を信用すればいいのでしょうか。

グーグルで「サプリメント」と検索すると
75,900,000 件
ヒットします。
その検索のトップページ、11記事のうち10記事はサプリメント通販サイトです。

サプリメントが必要かどうかgoogleの検索結果では判断つきません。

では、サプリメントを飲んでいる人に、感想を聞くといいでしょうか?

極めて主観的な答えが返ってくるだけです。

参考にするべきは、ランダム化比較試験(ランダムコントロールスタディ)、RCTです。

ランダム化比較試験とは、サプリメントを飲んだ人、飲まなかった人の2群に分けて、その効果を調べた検討結果です。

参考記事
マルチビタミンの心筋梗塞再発予防効果

医者が認知症予防のため12年間マルチビタミンを飲み続けた結果

ランダム化比較試験の結果だけでも十分です。

が、念には念をいれるため、ランダム化比較試験を複数集めてさらに吟味したのがメタアナリシス(meta-analysis)です。

サプリメントの効果をメタアナリシスしたものがあります。

Citation: Bjelakovic Goran et al. Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention: systematic review and meta-analysis. JAMA. 2007 Feb 28;297(8):842-57.

16,111本の抗酸化作用を有するサプリメントと消化器系がんに関連に関する研究報告から、68本のランダム化比較試験を抽出して詳細に検討しています。

ランダム化比較試験1本だけでも、ものすごい情報量なのですが、なんと68本ものランダム化比較試験を検討しています。

サプリメント群の死亡率への効果は
1.02; 95%CI, 0.98-1.06)

ランダム化比較試験全体のデータを合わせて効果を検討した結果は、サプリメント服用群と服用していない群で死亡率に差はありませんでした。

サプリメントで寿命のびない、という結論です。

話はここで終わらず、

βカロテン RR1.07
ビタミンA RR1.16
ビタミンE RR1.04

βカロテン、ビタミンA、ビタミンE服用では死亡率がアップした。
脂溶性ビタミンの長期服用には注意が必要です。

まとめ
抗酸化作用を有するサプリメント服用することで、寿命がのびることはなかった。

逆に、βカロテン、ビタミンA、ビタミンE服用では死亡率がアップしたので、ビタミンAやEなどの脂溶性ビタミンの長期服用には注意が必要です。

参考記事
・心筋梗塞再発が、ビタミンで予防できたか
・医者が認知症予防のため12年間マルチビタミンを飲み続けた結果

医者が認知症予防のため12年間マルチビタミンを飲み続けた結果

患者さんから
「疲れやすいのでビタミンのんだ方がいいでしょうか」
「何か元気になるビタミンください」
よく相談されます。

この質問にきちんと答えるため、
ビタミンが体にいいことを示す客観的なデータがあるかどうか、関連論文を調べています。

ビタミンは残念ながら、心筋梗塞再発予防
に『無効』のようです。
参考記事「心筋梗塞再発予防に高用量マルチビタミンを5年間服用し続けた結果|ランダムコントロールスタディー(RCT)で明かされる高用量マルチビタミンの効果」

では、ビタミンを飲んでいれば、『認知症』にならずに健やかに過ごせるのか。

マルチビタミンが認知症予防に効果があるかどうかを検討した報告を紹介いたします。

ビタミンには抗酸化作用など体にプラス作用があると期待されています。
認知症予防効果や如何に。

65才以上の男性医師5947人を対象にマルチビタミンの効果を調べています。

この研究がすばらしいのは、効果を厳密に評価するために、2群に分けています

1. マルチビタミンを服用群
2. マルチビタミンと思ってプラセボ(偽薬)を服用群

に分けて調べています。

しかも、ダブルブラインドです。

ダブルブラインドとは、この検討に参加したマルチビタミンを飲んでいる人は、本物のビタミンを飲んでいるかプラセボ(偽薬)を飲んでいるか知らない。

また、この検討をしている研究者自身も、誰が実薬(マルチビタミン)を飲んだのか、偽薬(プラセボ)を飲んだのか知りません。

これがダブルブラインドです。

効果を調べる時に、一番確かな検討方法は
・ダブルブラインド
・ランダムコントロールスタディー(RCT)無作為化比較試験
です。

ランダムコントロールスタディーとは、ある薬や治療を行ったもの行わなかったものの2群に無作為に分けて、どんな差がでるか時間をかけて調べる方法です。

ダブルブラインド・ランダムコントロールスタディーは、効果を調べるために最高の手法ではりますが、非常に時間と手間がかかるのが難点です。
さらには、2群に分けて効果を調べますので倫理的に出来ない場合もあります。

マルチビタミンの効果を調べるために5947人の男性医師を2群に分けて(ダブルブラインド、ランダムコントロールスタディーRCT)
・マルチビタミン内服
・マルチビタミンと思って空の錠剤(プラセボ)

12年間、経過観察、認知機能を評価しています。

Citation: Francine Grodstein et al. Long-Term Multivitamin Supplementation and Cognitive Function in Men: A Randomized Trial. Ann Intern Med. 2013;159(12):806-814.

結果は、マルチビタミン服用群とプラセボに認知力の差はありませんでした。

まとめ
残念ながら、マルチビタミンには認知症予防効果ありませんでした。

参考記事
・心筋梗塞再発予防に高用量マルチビタミンを5年間服用し続けた結果|ランダムコントロールスタディー(RCT)で明かされる高用量マルチビタミンの効果

『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡』CNNのニュース。目を向けるべきは『肝疾患を患っていたこと』|ビブリオ・バルニフィカスによる敗血症

CNN.co.jpニュースに
『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡 米男性』
目を引くニュースがありました。

この手のキャッチーなタイトルは、大概「釣り目的」クリックさせるために、大袈裟なことが多いんだよね、
と思いながらも読んでしまいました。

(Citation: headlines.yahoo.co.jp/cnn-int)

タトゥー彫って、5日目、海で泳いだ。
海に入った、3日後、発熱、両足の痛みで入院。
皮膚科黒ずみ変色、水疱形成、敗血症ショック。
人工呼吸器を装着、強力な抗生剤投与。
最初の入院から2ヶ月後に永眠。

タトゥー彫って、生傷ある段階で海に入って細菌感染、それが命取りになった経過です。

タトゥー彫ったあとの傷のがどれぐらいで治るか、全く経験ないので知りませんが、
タトゥー彫った程度の傷口からばい菌が入って、致命傷になることあるのだろうか。
記事を読んでの最初の印象です。

タトゥーを彫った面積はわかりませんが、もしタトゥーを彫った程度の傷で致命傷になるのであれば、
少しでもけがをしていたら、怖くて海に入れないことになります。

起因菌は『ビブリオ・バルニフィカス』と書かれています。たとえ傷があっても健康な人がビブリオ・バルニフィカスによる敗血症を起こすのだろうか。
と思いながら記事をよくよむと、

「慢性的な肝疾患を患っていた」
とあります。

ニュース的には『タトゥーを彫って海に入って感染』がキャッチーではあるのですが、

目を向けるべきは『背景に肝疾患をもっていること』です。

肝硬変の患者さんに、塩分をひかえる事や、適切な蛋白質の量など、食事指導をおこないます。

さらに、私は肝硬変の患者さんには、生魚や生ガキなどをひかえるようにも伝えています。

これは、極めて発症頻度は低いのですが、ひとたび起きると極めて致死率の高い『ビブリオ・バルニフィカス』による感染症をさけるためです。
『ビブリオ・バルニフィカス』壊死性筋膜炎や敗血症をひき起こします。

『ビブリオ・バルニフィカス』は健康な人に問題になることはなく、肝硬変や免疫不全の時に感染を起こします。

肝硬変の方が、生ガキを食べて『ビブリオ・バルニフィカス』に感染という報告が多いのが特徴です。

なぜ、肝硬変の人が感染するかは、

『ビブリオ・バルニフィカス』は汚染食物と一緒に腸管から吸収、
門脈を通って体に入る、
健康な人なら肝臓でトラップされ解毒され問題ないが、肝硬変があると、シャントとよばれる肝臓を通り抜けてしまう経路があり、シャントを通して全身に広がってしまうのが原因と思われます。

このCNNニュースの、タトゥーを彫った方も慢性な肝疾患を患っていたようです。

CNN.co.jpには飲酒量の記載がないので、CNNのオリジナル記事を読むと、

“To make matters worse, the man had chronic liver disease from drinking six 12-ounce beers a day.”
(Citation: CNN health. Man dies after swimming with new tattoo
Updated 0315 GMT (1115 HKT) June 3, 2017)

と書かれています。

12オンスビールを1日6本

1オンスは約29.6cc
12-ounce beersはビール350mlに相当
缶ビール1日6本、
毎日ビールを2リットルほど飲んでいたようです。

この方、アルコール性肝障害がなければ、タトゥー彫って海で泳いでも、不幸な転帰にならなかったのではないでしょうか。

このBMJ誌ケースレポートからの教訓としては、

肝障害があれば『ビブリオ・バルニフィカス』は皮膚からでも感染する。

私は『ビブリオ・バルニフィカス』の主な感染は、生ガキなどを食べて、消化管を介する感染経路の認識でした。この症例報告を読んで皮膚からの感染経路もあり得ることを知り驚いております。

(Citation: Hendren N et al. Vibrio vulnificus septic shock due to a contaminated tattoo. BMJ Case Rep. 2017 May 27;2017)

とは言え、皮膚からの感染経路は非常に特殊なケースだと思われます。
肝硬変の患者さんには、引き続き、生魚、生ガキなどの食事を避けるように食事指導徹底いたします。

まとめ
『タトゥー彫って海で遊泳、細菌感染で死亡』CNNのニュース。
目を向けるべきは『肝疾患を患っていたこと』
です。

心筋梗塞再発予防に高用量マルチビタミンを5年間服用し続けた結果|ランダムコントロールスタディー(RCT)で明かされる高用量マルチビタミンの効果

患者さんから
「疲れやすいのでビタミンのんだ方がいいでしょうか」
「何か元気になるビタミンください」
よく相談を受けます。

そんなすばらしいビタミンあれば、是非ともおすすめしますが、現実や如何に。

もちろん、胃切除後やベジタリアンなど、病気や食習慣の影響で特定のビタミンが欠ける「ビタミン欠乏症」には、必要なビタミンを補うことが重要です。

参考記事
ビタミン剤・サプリメントは必要か

ビタミンやミネラルには抗酸化作用など体にプラス作用があると期待されています。

健康に過ごしているひとが、ビタミンを摂取する意義はどこにあるのでしょうか。

ビタミンやミネラルを摂取することで、脳梗塞予防、心筋梗塞予防、がん予防など、何らかのよい『プラスの効果』を期待してのことです。

ビタミンの効果どうやって調べたらわかるでしょうか?

ビタミンを飲んでいる人に、のんでから元気になったかどうかを聞けばいいでしょうか?

ビタミン飲んでから元気になったと言う人がいたとすれば効果ありとしていいのでしょうか。

効果あるとは断定できないですよね。
なぜならば
薬には偽薬(プラセボ)効果とよばれる作用があり、飲んだだけで『効いた気がする』ものです。

では、ビタミンの効果を調べようとすればどのようにすればよいでしょうか?

ビタミンが効いたのか、単にプラセボ効果で効いた気がするだけなのかを調べるためには
ランダムコントロールスタディー(RCT)
とよばれる検討をすれば、客観的に判断できます。

2つのグループに分けます
1.ビタミンを飲み続けるグループ
2.ビタミンと思って飲み続けるが、本当は偽薬(プラセボ)だったグループ
の比較します。
1グループが、偽薬(プラセボ)の2グループより効果があれば、ビタミン効果ありと客観的に判断できるのです。

過去にもビタミンやミネラルの効果を調べた研究は多数ありますが、対象人数が少なかったり、プラセボ群との比較がなかったりと、客観的に判断できないものばかりでした。

多人数を長期間にフォロー、しかもビタミン服用群とプラセボ群に分けて評価した報告があります。

Ann Intern Med誌に発表された、マルチビタミンの効果を判定した研究を紹介いたします。

Ctation: Gervasio A. Lamas et al. Oral High-Dose Multivitamins and Minerals After Myocardial Infarction: A Randomized Trial. Ann Intern Med. 2013;159(12):797-805.

50才以上の心筋梗塞を起こした人を対象に、134の医療機関が協力して検討しています。
1708人を、
28種類の高用量マルチビタミン服用する群、
プラセボ(ビタミンが入っていない錠剤)
を服用する群に分けて比較しています。
平均フォロー期間55ヶ月です。

28種類の高用量マルチビタミンの内訳は
以下の内容です。

ありとあらゆる種類のビタミン、ミネラル
をミックスした、すばらしい組成となっています。

1日摂取用量
Vitamin A 25,000 IU
Vitamin C 1,200 mg
Vitamin D3100 IU
Vitamin E  400 IU
Vitamin K1  60 mcg
Thiamin (vitamin B1) 100 mg
Niacin 200 mg 1
Vitamin B6 50 mg
Folate 800 mcg
Vitamin B12 100 mcg
Biotin 300 mcg
Pantothenic acid  400 mg
Calcium 500 mg
Iodine 150 mcg
Magnesium 500 mg
Zinc20 mg
Selenium 200 mcg
Copper 2 mg
Manganese 20 mg
Chromium 200 mcg
Molybdenum 150 mcg
Potassium 99 mg
Choline150 mg
Inositol 50 mg
PABA ( para-amino benzoic acid) 50 mg
Boron 2 mg
Vanadium 39 mcg
Citrus Bioflavonoids 100mg

 
結果は、

この約5年間にもおよぶ検討の結果には
いい話と、残念な話があります。

まず、最初に
残念な話からすると、

5年間、28種類からなる高用量マルチビタミン・ミネラルを飲み続けた結果
『マルチビタミンに心筋梗塞再発予防効果、ありませんでした』

Kaplan-Meierでのグラフをみると、28種類からなる高用量マルチビタミンを服用した人たちの方がごくわずかに心血管イベントの再発率が低いようにグラフでは見えますが、プラセボ(偽薬)を服用している人と比べ、心筋梗塞の再発率に有意な差はありませんでした。

次に、
いい話をしましょう、
高用量マルチビタミン・ミネラル5年間服用しつづけても『副作用はありませんでした』

高用量マルチビタミン効果もなければ、副作用もないという、身も蓋もない結末でした。

まとめ
ランダムコントロールスタディー(RCT)で
高用量マルチビタミンの効果を厳密に評価したところ、
残念ながら、高用量マルチビタミンは心筋梗塞再発予防の効果ありませんでした。

参考記事
医者が認知症予防のため12年間マルチビタミンを飲み続けた結果
サプリメントで寿命はのびるのか

主治医は40歳未満の若手医師がいいのか。担当医師の年齢が入院死亡率に影響|高齢医師より若手医師の方が入院死亡率が低い

「かかるなら若手医師に? 患者死亡率、高齢医より低く」
「ベテランの医師ほど腕がいい」医療のそんな“常識”を揺るがしそうな分析調査の結果が5月16日付の「英国医師会雑誌」(BMJ)に掲載された
「ハーバード大論文 主治医が高齢になるにつれ死亡率上昇」

インパクトのあるニュース見出しの数々。
British Medical Journalに掲載されている原著を読んで診ました。

大切な体をあずけるので、いい病院、いい医師にかかりたいと思うのは当然です。

この分析結果でセンセーショナルなのは、30日以内入院死亡率が40歳未満の若手医師の方が中高年の医師より低かったことです。
ここだけを切り取って解釈すれば、新聞の見出し
「かかるなら若手医師に? 患者死亡率、高齢医より低く」
の通りです。

この研究論文の意義を深く理解するためのキーワードは
「ホスピタリスト」
「high volume physician たくさんの患者さんをを診ている医師」
です。
そのあたり後ほどお書きします。

主治医が若い先生で大丈夫でしょうか、
と患者さんから相談されることはあっても
年配の先生が主治医で大丈夫でしょうか、
と聞かれることはなく

医療の世界では、無条件に年齢が「印象」としてプラスに働くことは確かです。

医療は経験含めた技術、知識の上に成り立っているので、年齢=臨床経験数とすれば、若い医師より年配の医師がよい、との構図になりえます。

そんな、イメージに一石を投じるのが、Physician age and outcomes in elderly patients in hospital in the US: observational studyの統計的研究です。

(Citation: Tsugawa Y et al. Physician age and outcomes in elderly patients in hospital in the US: observational study. BMJ. 2017 May 16;357)

736,537人の65歳以上の内科系疾患で緊急入院患者の予後(経過)調べ、
入院30日以内の死亡率を担当医の年齢で分けています

40歳未満の医師 10.8%
40歳~49歳の医師 11.1%
50歳~59歳の医師 11.3%
60歳以上の医師 12.1%

入院30日以内の死亡率が低いのは、若い担当医師となります。
そして、60歳以上の医師になると急に死亡率があがる結果でした。
この結果からセンセーショナルな
「ベテランの医師ほど腕がいい」医療のそんな“常識”を揺るがしそうな分析調査の結果が5月16日付の「英国医師会雑誌」(BMJ)に掲載された
の新聞見出しになっています。

担当医の年齢により、患者さんの予後に影響出た結果、正直なところ、特別に意外な感じはしません。

この差を、若い医師の方がガイドラインなど標準治療を遵守する傾向にある、高齢の医師ほど自分の経験則、悪く言えば我流の治療するからなどとの理由づけはできるかもしれません。本当の理由(交絡因子)は不明ですが。

情報化がすすみ、治療法が急速に進歩する現代は、年齢を重ねることで勝手に知識が蓄積されるとは限らないことを示しているのかもしれません。

冒頭に書いた話にもどります。
40歳未満の医師 10.8%
40歳~49歳の医師 11.1%
50歳~59歳の医師 11.3%
60歳以上の医師 12.1%
この入院30日以内の死亡率の差をみて、当然の質問があります。
それは
若い医者は、軽症の患者さんを担当
ベテランは、経験がある分若い医師より、重症の患者さんを担当
そしてこの差が、アウトカム(死亡率)の差に出ただけではないか
若い医師担当患者さんの死亡率が低いのは当然ではないか
という疑問です。

確かに担当する患者さんの重症度が異なれば、結果が異なるのは当然です。

そもそも、比較にならないのです。

この疑問を払拭するのが
「ホスピタリスト」
のキーワードです。

「ホスピタリスト」
日本にはないシステムです。
日本の医師は、外来診療、救急当直、入院患者の診察すべてを行います。
アメリカには、「ホスピタリスト」とよばれる、入院専門担当医師がいます。

分業化、スペシャリスト化がすすんだ、アメリカならではのシステムといえます。
アメリカンフットボールをイメージしていただければよいかもしれません。ポジションにより、ライン、クオーターバック、ランニングバック、ワイドレシーバーなど役割が完全に分担されています。

「ホスピタリスト」は入院担当のスペシャリストです。

入院治療を専門とする医師「ホスピタリスト」にしぼって、今回の検討はおこなわれています。

「ホスピタリスト」は勤務担当時の入院患者さんを担当します。
結果、若い「ホスピタリスト」には軽症患者を担当、ベテランの「ホスピタリスト」には重症患者さんを担当させるなどの、振り分けがおきません。

受け持ち患者さんの重症度が、ランダム化(無作為化)できているのです。

「ホスピタリスト」に対象を限定することで、
受け持ち患者さんの重症度によるバイアス(かたより)を排除できています。

この研究の価値(信憑性)をたかめているのは「ホスピタリスト」に限定して検討した点です。

担当医師年齢によるアウトカム(30日以内死亡率)の差も興味深いのですが、注目すべきは担当医の年間受け持ち患者数別に解析した結果です。

年間の担当患者数で、入院患者さんのアウトカムを検討しています。
・low volume physicians 90人未満
・medium volume physicians 90-200人
・high volume physicians 201人以上

年間担当患者数が少ない、low volume physicians 90人未満の医師では
40歳未満の医師 12.7%
40歳~49歳の医師 14.6%
50歳~59歳の医師 16.0%
60歳以上の医師 17.0%
と年齢層毎に大きな差があります。

一方
年間担当患者数が多い、high volume physicians 201人以上の医師では
40歳未満の医師 10.7%
40歳~49歳の医師 10.9%
50歳~59歳の医師 10.8%
60歳以上の医師 10.9%

年間担当患者数が多い医師では、死亡率が低い結果でした。
さらに、年齢層別で治療成績に差はありませんでした

高齢医師よりも若い医師の方が、入院患者のアウトカム(入院30日以内死亡率)がよい。
高齢でも若い医師でも、年間たくさんの患者さんを診ている医師は、治療成績がよい。

与える印象は年輩医師のほうが安心感あるかもしれませんが、
若い医者だからダメ、
年輩医師だから安心、
のような単純なものではないといえます。

この研究論文から、医師の年齢が入院患者さんの治療成績に大きな影響を与える印象ですが、
深く読むと、
重要なことは、
医師の年齢よりも
技量、知識を含めた総合的な経験値のような気がいたします。

入院患者さんの予後(死亡率、再入院率)が担当医師の性別で差|女性医師の方が男性医師よりも入院患者さんの予後がよい

非常に興味深い報告です。
男性医師と女性医師で、患者さんの死亡率、再入院率に差がでるかどうか検討した報告があります。

女性医師が担当するほうが入院から30日以内の死亡率、再入院率ともに低い結果でした。
もちろん、死亡率も再入院率も低い方が望ましい数値です。

施設や治療方針で予後に差がでるのは当然ですが、担当する医師の性別も影響するものなのですね。

Citation: Tsugawa Y et al. Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians. JAMA Intern Med. 2017 Feb 1;177(2):206-213

アメリカの急性期病院で65才以上の130万人のデータを分析した結果です。
65歳以上の高齢者、およそ130万入院分のデータを主治医の性別で比較したところ、女性医師が担当した方が予後有意差をもって良好でした。

こういった検討の場合、必ずでてくる疑問点は、そもそもの患者さんの重症度は差がなかったかどうかです。

もし、男性医師の方が重症度が高い患者さんを担当していたとすれば、結果として、予後に差がでてくるのは当然です。そのような差がないことを示すために、患者さん側のバイアス、医師側のバイアスを排除して解析されています。

患者さん側のバイアスは、年齢、性別、病名、世帯収入の中央値、疾患など多数の要因を考慮しています

医師側のバイアスも、年齢、経験、結婚しているかどうか、などまで考慮しています。

そういった、
想定できるあらゆる患者さん側、
医師側のバイアス(かたよる要因)
を排除した結果でも、

女性医師担当の30日以内死亡率11.07%
男性医師担当の30日以内死亡率11.49%
でした。

P < .001と有意に女性医師担当の方が予後がよい結果です。

わずか0.42%の違いにみえますが、NNT number needed to treat(何人の患者さんを診ると、差がでるかの指標)が233です。
233人の入院で、1人の死亡に差がでると解釈できます。
この0.42%は大きな差です。

女性医師が男性医師より治療ガイドラインを遵守する傾向にある、などとも言われていますが、直接の理由は不明です。

一つ言えることは、診療スタイルのわずかな差が患者さんの予後の差につながるということでしょうか。