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緊急現行犯逮捕 。アニサキス|原因不明じんましんアニサキスIgEチェック

■しめ鯖たべて、深夜にのたうち回る胃の激しい痛み

「先生、今日胃カメラしてもらえますか?この痛みアニサキスだと思うんです。夜中に痛みとじんましんが同時にでて、前にも同じ痛みあってその時と同じなんです」

アニサキスこの言葉を聞くと、内視鏡を専門とする医者なら、よっしゃ捕まえて、患者さんを痛みから解放。とテンションあがります。

意気込んで胃カメラ検査すると、予想通りアニサキス虫体を発見。現行犯逮捕、内視鏡鉗子で除去です。

これで患者さん、痛みから解放されます。

ここで注意することが1点。1匹捕まえて終わりではありません。大概2匹3匹と胃の粘膜に噛みついています。

胃内をくまなく観察すると、アニサキスやはり他にもいました。1匹見つけたら、そこで気を緩めないことが肝心です。

■しめ鯖、激しい胃の痛みでネット検索

ネット情報玉石混交です。どちらかと言えば、健康に関する情報玉よりも石が多いのでご注意ください。

「しめ鯖」「激しい胃の痛み」で検索するとこんなタイトルがトップ記事にでてきます。

・胃アニサキス症の痛みに対する治療 ・急性胃アニサキス症 ・刺し身につくアニサキス 強い痛みの波が特徴 ・アニサキス症って何? – 専門家によるコラム ・渡辺直美や庄司智春も苦しんだアニサキスの「意外な落とし穴」

渡辺直美さんもアニサキスに当たったことあるんだ、などと思わず、ゴシップ記事的なサイトを読んで、このブログ書きながら時間を無駄にしてしまいました。

話をもどすと、「しめ鯖」「激しい胃の痛み」一番疑われるのは、やはり胃アニサキス症です。

サバ、イカ、カツオなどの魚に寄生する、2-3cmほどの白い糸状の「きもちわる」形をした虫です。

■しめ鯖を食べた後のじんましん

胃アニサキス、胃粘膜に噛みつくと痛い病気ですが、痛いだけでなく、アレルギー症状を起こすことがあるのです。

しめ鯖を食べた後に、じんましん。

背の青い魚はよく当たると昔から言われています。

鯖にはアレルギーを起こすヒスタミンと関連のあるヒスチジンが多く含まれるため、と言われています。

■鯖でじんましんが出る原因は鯖に寄生しているアニサキスが原因

鯖でじんましんが出るのは鯖に含まれる成分が原因と信じられているのですが、じつはそうではないかもしれないのです

鯖が原因と思っていたら、鯖そのものでなく、鯖に寄生するアニサキスの成分が原因のことが多々あるようです。

粕谷先生はこの事に気づき、Lancet誌に1990年に既に報告されています。(Kasuya S et al. Mackerel-induced urticaria and Anisakis.Lancet. 1990 Mar 17;335(8690):665.)

鯖を食べた後に発症した11例のじんましん患者さんのアレルギー原因を調べています。

アレルギー物質を用いたスクラッチテストを行っています。

なんと11人全員、アニサキスから抽出した抗原陽性、しかも鯖抗原陰性だったのです。

鯖が原因と思われたじんましん、原因は鯖に寄生するアニサキスだったのです。

ほんと素晴らしい着眼点だと敬服します。

さらに、その後研究で、急性胃炎で受診患者さんのうち、内視鏡でアニサキス虫体陽性だった人の87.5%がアニサキス抗体陽性、内視鏡でアニサキス虫体みつからなかった人でも66.7%アニサキス抗体陽性と報告されています。

(Citation: Kasuya S et al et al. Significance of detection of specific IgE in Anisakis-related diseases. Arerugi. 1992 Feb;41(2 Pt 1):106-10.)

内視鏡を専門とする私たちは、アニサキスが胃粘膜に噛みついて、痛そうな現場を直接見ているがために、胃が痛むのは直接かみついていることが原因とおもいがちです。

胃痛がありながらも、アニサキスが内視鏡で見つからなかった人でも66.7%も抗体陽性のことから考えると、胃痛の原因としてアニサキスによるアレルギーがかなりの割合でおきるのではないかと推察されます。

お寿司など生魚を食べた後の、胃痛。アニサキス虫体が胃粘膜を噛みつくことによる痛み以外に、アニサキスによるアレルギーを鑑別診断として考えておくことも大切と感じた次第です。

胃アニサキス症を内視鏡で診断したら、アニサキスIgEもチェックです。もし陽性であれば、アレルギーを予防するために食生活の指導が必要となります。

■まとめ

・サバ、イカなどを食べた後の、七転八倒する胃痛の原因としてアニサキス症がかんがえられます。

・アニサキス症には、アニサキスが胃粘膜に直接噛みつくことによる直接の痛みとアレルギーによる痛み両方ありうります。

胃カメラ検診、胃がん死亡率を低下させる効果明らかに|胃がん健診にはバリウムと胃カメラどちらがおすすめ

胃がん検診で真っ先に頭に思い浮かぶのは、バリウム検査です。台の上にのって、右を向いたり、左を向いたり、ぐるっと回って胃を撮影する検査です。ドラマ白い巨塔で財前教授が自身の胃がんの診断をうけるのもバリウム検査でした。

胃がん検診といえば、バリウム検査(胃透視検査)でした。胃バリウム検査は胃がん検診として有効性が認められています。最近ではより精密な検診を行うため、バリウムではなく胃がん検診を胃カメラ(内視鏡)で行う施設も増えてきています。

■胃カメラと胃バリウム検査、検診はどちらがよいのでしょうか

胃バリウム検査はバリウムをのんで胃の形を撮影して、病気を見つける検査です。一方、胃カメラ検査は直接胃の中をカメラで観察して病変を調べます。白黒の画像である胃バリウム検査とカラーの映像で確認する胃カメラ、もちろん胃カメラの方が精密なことは明かです。

ドックで胃カメラと胃バリウム、選択できれば胃カメラをおすすめいたします。

■胃カメラ検診、胃がん死亡率を低下させる効果明らかに

胃カメラと胃バリウム検査、もちろん胃カメラの方が精密検査なのは直感的にだれもが理解できるところです。医学は直感だけではなく、きちんと効果が証明されることが大切です。実は、胃カメラと胃バリウム検査どちらがよいか比較した検討はありそうでほとんどなかったのです。

1600万人という大人数を対象とした韓国でのコホート研究、胃がん検診として胃カメラの方がバリウムに比べはるかに役に立つことがあきらかになりました。

(Cittaion: Jun JK et al. Effectiveness of the Korean National Cancer Screening Program in Reducing Gastric Cancer Mortality.Gastroenterology. 2017 May;152(6):1319-1328)

全く検診を受けていない人を1とすると胃カメラでもバリウムでも検診を受けている人の胃がんによる死亡率は0.79 (95% CI, 0.77-0.81)に低下します。検診を受けるだけで胃がん死亡率が20%もさがります。胃カメラでもバリウムでも何らかの検診は有効です。

胃カメラ検診でオッズ比0.53 (95% CI, 0.51-0.56) 、胃カメラを受けることで胃がんによる死亡率は半分に減ります。

バリウム検診のオッズ比0.98 (95% CI, 0.95-1.01) 、バリウムの胃がん死亡率抑制効果あるのの、わずかでした。

■胃カメラ検診の効果、1回受けた人、2回受けた人、3回以上受けた人の比較

興味深いのが胃カメラ検診を受けた回数と、胃がん死亡率の関係です。

検診を1回受けただけでもオッズ比0.60 (95% CI, 0.57-0.63)、40%胃がん死亡率低下。

検診を2回受けると、オッズ比0.32 (95% CI, 0.28-0.37)、70%死亡率低下。

検診を3回以上受けた人は、オッズ比0.19 (95% CI, 0.14-0.26) 、80%も胃がん死亡率低下、1/5に胃がん死亡率を減らす効果がありました。

胃がん検診における、胃カメラの効果明かです。単回(1回だけ)よりも、2回、3回と定期的に胃カメラを受けることで、胃がん死亡率をさらに下げる効果が高まります。

■まとめ
・胃カメラ検診、胃がん死亡率を低下させる効果あり
・ドックで、胃バリウムと胃カメラ検診迷ったら胃カメラを選択

胃カメラ検診で胃がん死亡率低下|胃がん死亡リスク30も%さげる効果あり、胃がん検診はバリウムより胃カメラが効果的

ドックでバリウムと胃カメラがあれば、どちらを受けられるでしょうか?

是非、胃カメラを選んでください。胃カメラで胃癌による死亡率が下がることがわかっています。

■胃がん検診

胃がんの9割以上はピロリ菌が原因です。ピロリ菌をもっていれば、ピロリ菌除菌が胃がんの予防に効果的です。ピロリ菌除菌は胃薬と、抗生物質2種類、合わせて3種類の薬を1週間内服することで除去できます。

ピロリ菌検査、ピロリ菌除菌治療とともに大切なのが『胃がん検診』です。胃がんは早期で発見すれば内視鏡で治療できます。進行胃がんで見つかっても、手術、抗がん剤治療で治癒を期待できます。とにかく、早期発見、早期治療が胃がんです。

胃がん検診として思い浮かべるのはバリウム検査でしょうか。バリウムをのんで胃を撮影する、胃透視検査です。最近では胃がん検診をバリウムでなく胃カメラで検査するドックや自治体も増えてきました。

胃カメラで行う検診の歴史はまだ浅く、効果を証明する論文が少なかったのですが、この数年胃カメラ検診効果を示す論文が次々と報告されています。

■胃カメラ、バリウム検診による胃がん死亡低下効果

胃がんと診断される3年前までさかのぼり、胃カメラで検診を受けた人、バリウム検診を受けた人、受けていない人を比べています。

胃がん死亡率で全く受けたことがない人を1として、胃カメラ検診を受けた人 0.695 (95% CI: 0.489-0.986) 、バリウム検診を受けた人0.865 (95% CI : 0.631-1.185) でした。

(Citation: Hamashima C et al. A community-based, case-control study evaluating mortality reduction from gastric cancer by endoscopic screening in Japan.PLoS One. 2013 Nov 13;8(11))

バリウムでは胃がん死亡率抑制効果14%程度でしたが、胃カメラ検診効果は31%と、胃カメラで胃癌死亡率を2倍以上下げる果が得られています。

バリウム、胃カメラ検診ともにすばらしい検診ですが、ドックでどちらか一方を選べるとすれば胃カメラをおすすめいたします。

■まとめ
・胃バリウム、胃カメラ検診ともに胃がん死亡率をさげる効果あり
・胃カメラはバリウムの倍以上有効、バリウムと胃カメラどちらを受けるか迷ったら胃カメラを選ぶ

経口骨粗鬆症薬で食道がんリスクが高くなる|ビスホスホネート製剤を長期服用している人は、胃カメラで食道チェック

食道がんのリスクとして、悪名高いのは、お酒とタバコです。とくにアルコール度数が高いお酒。

ウオッカなどは直接食道粘膜を刺激、障害して食道がんの要因となります。要注意です。

■お酒をのんで顔が赤くなる「フラッシャー」は食道がんハイリスク

お酒を飲んだら顔が赤くなる人は要注意です。アルコールを飲むと脱水素酵素により、体内にアセトアルデヒドが蓄積します。アセトアルデヒドを分解する酵素であるアルデヒド脱水素酵素が強い弱いでお酒に強い弱いがきまります。アルデヒド脱水素酵素が弱い人は、アセトアルデヒドを分解する力が弱く、お酒をのむと動悸がしたり、顔があかくなったりします。お酒を飲んで顔があかくなる人、「フラッシャー」は食道がんのリスクが高いことがわかっています。

■ビスホスホネート系薬剤とは

ビスホスホネート系薬剤は、骨を破壊する細胞(破骨細胞)の働きをおさえる薬です。骨は再生と破骨を繰り返してバランスをとっています、破骨を抑えて、骨をつよくする、骨粗鬆薬です。

骨粗鬆症の治療薬として有用な薬剤で、多くのかたが服用されています。毎日飲む製剤、週に1回の製剤、4週に1回の製剤などがあります。

ビスホスホネート系薬剤は服用方法が、他の薬と違い特徴的です。朝起きた時に(食事の前に)服用。コップ1杯ほど(約180ml)の多めの水で服用。薬が食道にのこらないように、薬を飲んだ後30分は横になないようにするひつようがあります。

服用方法が特殊であるため、十分な効果を得るためまた、副作用をおさえるために、正しい飲み方がひつようです。

経口ビスホスホネートには、ボナロン、ホサマック、ダイドロネル、ボノテオ、リカルボン、アクトネル、ベネット

特許が切れてジェネリック(後発品)としては、アレドロンサン錠(フォサマック、ボナロンのジェネリック)、リセドロン酸Na錠(アクトネル、ベネットのジェネリック)などがあります。

■経口骨粗鬆症薬と食道がんの関係

骨粗鬆症薬と食道がん、全く関係なさそうなのですが、関連があることがわかってきています。

(Citation:Green J et al. Oral bisphosphonates and risk of cancer of oesophagus, stomach, and colorectum: case-control analysis within a UK primary care cohort.BMJ. 2010 Sep 1;341:c4444. doi: 10.1136/bmj.c4444.)

2010年にBMJに報告されたケースコントロール研究で大規模な症例数からの最初の報告です。

経口ビスホスホネート製剤を服用している人は、服用していない人と比べ1.30倍食道癌が多かったのです。(95%CI 1.02~1.66)。

食道、胃、大腸それぞれの癌と経口ビスホスホネート製剤の関連を調べても、食道癌だけが相対危険度増多、胃がん、大腸がんは駅強ありませんでした。

BMJに掲載された論文はカルテからデータを抽出しており、処方箋枚数での、食道がんリスクも調べています。

処方箋枚数 1-9枚 相対危険度 0.93

10枚以上 相対危険度 1.93

1処方箋あたりの処方期間はまちまちですが、1処方箋約1ヶ月とするとビスホスホネート系薬剤を1年以上服用で食道がんリスクが高まることになります。

さらに、経口ビスホスホネート製剤の服用している期間にも比例して相対リスクは高まっています。

1年未満の服用 相対危険度0.98

1年から3年 相対危険度1.12

3年以上 相対危険度2.24

経口骨粗鬆症薬(ビスホスホネート製剤)でなぜ食道癌が増えるのかメカニズムは不明ですが、同じ消化管である胃がん大腸がんは増えないことから考えると、食道へのビスホスホネートの直接刺が食道がんのリスクファクターとなっているようです。

ビスホスホネート製剤服用は、服用後30分の起座(横にならない)指導を遵守していくことが大切です。服用方法遵守とともに必要なことは、1年以上長期間経口ビスホスホネート服用中の方は胃カメラによる食道の定期的な検診です。

■まとめ
・経口骨粗鬆症薬(ビスホスホネート製剤)食道がんのリスク高まる
・正しい服用、服用後少なくとも30分は横にならずに過ごすことの厳守
・胃カメラでの定期的な検診(食道がんスクリーニング)

逆流性食道炎に対するPPI(プロトンポンプ阻害薬)長期投与の影響|ビタミンB12、カルシウム、ビタミンDなどの 吸収障害はでるのか

■酸分泌を抑える薬開発の歴史

胃潰瘍、逆流性食道炎などの治療は胃酸を抑え、キズを治すことが治療の中心となります。その昔、昭和の時代は胃潰瘍、十二指腸の治療で手術をしていました。今では、H2ブロッカーやPPI(プロトンポンプ阻害薬)などの胃酸をしっかりと抑える薬が開発され、胃潰瘍、や十二指腸が治らず手術をすることは、まずありません。手術になるとすれば、潰瘍からの出血が止まらない、潰瘍が深くほれて穿孔(胃や十二指腸の壁に穴があく)などの緊急手術ぐらいです。

消化器、特に胃酸に関しての大きな転帰は1982年と1991年です。

H2ブロッカー(シメチジン)が開発されたのが1975年、本邦で薬として使えるようになったのが1982年です。この時代私はまだ学生で医者になっていませんので、シメチジン(タガメット)が使えるようになった時の感動を残念ながら知りません。胃潰瘍が手術する病気であったのが、薬で治る病気になったのです。

PPI(プロトンポンプ阻害薬)がH2ブロッカー登場から約10年後1991年に使えるようになりました。タガメット、ザンタック、ガスターなどのH2ブロッカーよりも、さらに強力にPPI(プロトンポンプ阻害薬)は酸を抑えてくれます。胃潰瘍、十二指腸潰瘍はもちろんのこと、胃酸分泌をしっかりと抑えるので逆流性食道炎にも非常によく効きます。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎治療において、H2ブロッカー登場1982年とPPI(プロトンポンプ阻害薬)登場1991年が大きな転換点です。もうこれ以上の胃酸をしっかりと抑える薬の登場はないだろうと思われていたのですが2015年、P-CAB ボノプラザン (タケキャブ)が開発されました。タケプロン、ネキシウム、パリエット、オメプラールなどのPPIより、さらにしっかりと胃酸分泌を抑えるのがタケキャブの特徴です。

■胃酸を抑えることによる、ミネラルの吸収障害

H2ブロッカーやPPIにより胃酸分泌をしっかり抑えることができるようになり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎は薬で治る病気になりました。

そんなにしっかりと、胃酸を抑えて体に影響はないのでしょうか?

PPI服用で、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症がおきやすくなる、PPIを服用していると衛生状況の悪い国へ旅行した際に下痢をしやすくなるなどの報告があります。

栄養に関して、胃は微量金属の吸収に大事な臓器です。鉄やカルシウムは胃酸でイオン化修飾を受けることで小腸で吸収されます。胃酸を抑えることで、理論的には、鉄欠乏性貧血やビタミンD不足がおこりうります。

■ネキシム(エソメプラゾール)を5年間服用して、ビタミンB12、ビタミンDなどのミネラルは低下するのか

逆流性食道炎にネキシム(エソメプラゾール)がどれくらい有効かを検討したLOTUS研究で5年間PPIを長期服用した際のデータの報告があります。

Citation: Lundell L et al. Long-term effect on symptoms and quality of life of maintenance therapy with esomeprazole 20 mg daily: a post hoc analysis of the LOTUS trial. Curr Med Res Opin. 2015 Jan;31(1):65-73)

胃酸分泌をおさえることで、理論的には鉄吸収不足やビタミン吸収不足が起こりうるのですが、LOTUS研究の結果からは、PPIを5年間服用しても、鉄、ビタミンB12、ビタミンDの低下はありませんでした。

ビタミン、ミネラルの低下はないようですが、留意する必要があるのは、ヘモグロビン(貧血の指数)がPPI内服前、1年後、3年後までは大きな変化はないのですが、5年目で少し低下しています。

難治性の逆流性食道炎などで、PPIを長期間服用する時には、時々、ヘモグロビン値(貧血の数値)、鉄、フェリチン(鉄の蓄えの指数)、ビタミンB12などは時々チェックが必要です。

もし、鉄、フェリチンなどの低下があれば、PPI休薬、もしくはH2阻害薬への変更を考慮する必要があります。さらに、PPIによる胃酸を抑えることでの鉄吸収低下以外の原因精査も大切です。大腸ポリープや大腸腫瘍などからの出血がないか、大腸カメラで確認です。

■まとめ
・PPI(プロトンポンプ阻害薬)長期服用のときは、貧血値(ヘモグロビン)、鉄、ビタミンD、ビタミンB12を時々チェックする

こどものピロリ菌感染経路|小児の80%は家族内感染

■ピロリ菌と胃がんの関係

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんと関連ピロリ菌は関連があります。最近ではピロリ菌が直接の胃がんの原因ではなく、ピロリ菌が感染することにより胃内の細菌叢の多様性が低下、結果として胃がんになるとの研究報告もあります。

正常胃粘膜→ピロリ菌感染→慢性萎縮性胃炎→腸上皮化生→胃がん

上記経過を経て胃がんが発生するのですが、直接の原因はピロリ菌ではなく、胃内細菌叢の低下が原因との説です。

正常胃粘膜→ピロリ菌感染→胃内細菌叢多様性低下→胃がん

参考記事
ピロリ菌と胃内常在細菌叢|ピロリ菌最新研究の潮流、キーワードはDysbiosis細菌叢の多様性低下

ピロリ菌感染による胃がんの直接の原因は、・ピロリ菌が胃に感染することによる、慢性胃炎の「炎症」・ピロリ菌が胃に感染することによる「細菌叢の変化」など諸説ありますが、いずれにしてもピロリ菌感染と胃がんは密接な関係があります。

参考記事
●ピロリ菌除菌による胃がん予防効果|治療効果を数値で比較してみる

■こどものピロリ菌感染率

胃がんとの関連があるピロリ菌ですが、よろこばしい事に、若年者の感染率が激減してきています。

高齢者は80%以上の方がピロリ菌をもっていますが、40才代前後を境に急激に感染率が低下しています。

こどものピロリ菌感染率は20才以下で10%以下、さらに中学生以下では5%以下とさがってきています。

ピロリ菌の感染はこどもの頃に感染します。こどもの頃、特に小学校に入学する前ぐらいの年齢で感染します。

衛生状況が非常によくなり、こどもの感染率が低下しているのです。

参考記事
●中学生のピロリ菌感染率は5%以下|ボノプラザン(タケキャブ)、アモキシシリン(サワシリン、アモリン)、クラリスロマイシン(クラリス)の3剤併用療法で一次除菌率成功率は83%

 

■こどものピロリ菌感染経路

患者さんから、「どこからピロリ菌に感染したのでしょうか」よく相談をうけます。

高齢の方であれば、上下水が発達していない、衛生環境が整っていない時代背景による、経口糞便感染です。井戸水など汚染した水からの感染が主なルートでした。

一方、上下水が完備され、衛生環境が整っている現代、どこからピロリ菌は感染するのでしょうか。

現在の感染経路は、口から口の感染が主なルートとなっています。

小児で80%は家族内感染と推定されています。80%のうち70%はお母さんからこども、10%はお父さんからこどもです。

(Citation:今野武津子 et al. 日本ヘリコバクター学会雑誌.4.20-24.2003)

80%は家族内感染ですが、残り20%は家族外感染のルートです。保育園や施設内などでの感染との報告もあります。

家族内感染さらに詳しくみると、離乳食の段階での感染、同胞感染(兄弟姉妹の年齢が近ければ、こども同士の感染)のルートも疑われています。

■父母、祖父母の感染率を下げる環境づくり

お父さん、お母さん、場合によっては祖父母からの感染ルートが主な感染ルートである、こどもにおいて、2つの対策をとることができます。

・お父さん、お母さん、祖父母のピロリ菌感染率を低下させる。子育て世代のお父さんお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんのピロリ菌有無をチェック。陽性であればピロリ菌除菌です。

これで、祖父母、父母からこどもへの感染ルートを断つことができます。

・離乳食を、常識ではあるのですが、お父さんお母さんから赤ちゃんへ口移しを絶対にしないようにしましょう。口移しをすることで、虫歯菌のみならず、ピロリ菌も赤ちゃんへ移してしまいます。

若い世代のお父さん、お母さんには赤ちゃん口移しすることは少ないのですが、問題となるのはおじいさ、おばあさん世代でしょうか。

おじいさん、おばあさん世代より上は、赤ちゃんの離乳食を大人がいちど口のなかで噛んであげていた世代です。離乳食の口移しは昔話、今は口移しは「しない」のが正解です。

■ピロリ菌検査方法

ピロリ菌が胃にいるかどうかを調べる方法として、胃カメラで直接胃の粘膜の組織をとって培養する、培養方がもちろん正確な方法法です。

その他、血液(抗体検査)、便(便中ピロリ抗原)、呼気テスト(風船をふくらます検査)など、さまざまな方法があります。

当院では、胃カメラにて癌の検診を行い、ピロリ菌を培養法にて検査します。ピロリ菌除菌後の、効果判定は便(便抗原)検査で施行しております。

その他、患者さんの年齢、病状に応じて、培養法、血液検査、便検査、適切な検査を選択して施行しています。

どの方法が適した方法かは、患者さんの病状、年齢でかわります。具体的な方法は主治医の先生にご相談ください。

■まとめ
・こどものピロリ菌感染率は喜ばしいことに低下している
・こどものピロリ菌感染経路は家族内感染が多い

ピロリ菌と胃内常在細菌叢|ピロリ菌最新研究の潮流、キーワードはDysbiosis細菌叢の多様性低下

オーストラリアの病理学者Warren博士と内科医Marshall博士が発見した胃にすみつくばい菌、ヘリコバクター・ピロリがLancet医学誌に報告されたのが1983年です。

ヘリコバクター・ピロリ菌が慢性胃炎をひきおこし、胃がんの発生と密に関連することが明らかになりました。

胃内は強酸性のため雑菌がすめないと思われた常識を覆し、ヘリコバクター・ピロリ菌を発見したしたWarren博士とMarshall博士に2005年にノーベル生理学医学賞が授与されました。

胃において、ヘリコバクタ・ピロリ菌の発見とともに医学がしてきた30年でしたが、ここにきて新たな展開です。

■ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん

ヘリコバクター・ピロリ菌がいない胃は、慢性胃炎がなく、非常にきれいです。一方ピロリ菌がいる胃は、胃粘膜全体的に赤く、ただれ、慢性の炎症が続きます。

慢性胃炎が続くと、胃の粘膜は胃よりも腸に近い形にかわってきます。これが腸上皮化生で、腸上皮化生は胃がんの前がん状態ともいえます。

正常胃粘膜→慢性胃炎→腸上皮化生→胃がん

ヘリコバクター・ピロリ菌が慢性胃炎をひきおこし、腸上皮化生に至り、さらには胃がんの発生につながることは明らかです。

逆にヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することで、慢性炎症が治まり、胃がんの発生がへります。

■ヘリコバクター・ピロリ菌による胃がん発生率は国によってことなる

日本を含む東南アジアはヘリコバクターピロリ感染率も高く、胃がんが多い傾向にあります。一方、アメリカやヨーロッパはヘリコバクターピロリ感染率が低く、胃がんは比較的まれな病気です。

国により胃がん罹患率に多い少ないがあるのは、単にヘリコバクターピロリ感染率の多い少ないと思われていましたが、それだけではないのです。

もちろん、ヘリコバクターピロリ感染率が低ければ、胃がんも少ないので罹患率と胃がん発がん率は大いに関係あります。

ヘリコバクターピロリ感染している欧米人と東南アジア人を比べてみても、欧米人は発がんが少なく、東南アジア人は高率に胃がんがみつかります。

この差はヘリコバクターでも地域によって種類に差があり、その発がん性に違いがあると、説明されていました。

ヘリコバクターピロリ発見から30年余り、ここにきて新たな展開があります。

■キーワードはDysbiosis(細菌叢の多様性低下)

何百年もの間、胃の中は強酸のため、細菌がすめないと思われた常識を覆し、30年前に発見されたのがヘリコバクター・ピロリ菌です。

次世代シーケンサーによる16S rRNA メタゲノム解析でどのような細菌がいるかを調べることができるようになりました。

次世代シーケンサーによる16S rRNA メタゲノム解析を胃粘膜で行うと、おどろいたことに、胃にも常在細菌叢があることがわかったのです。

少し前までは胃は、ピロリ菌感染か未感染のどちからしかないと考えられていました。私も、そのように思っていました。

次世代シーケンサーで調べると、強酸下の胃内に多数の常在細菌が棲みついていることがわかりました。

(Citation: Noto J, Peek RM Jr. The gastric microbiome, its interaction with Helicobacter pylori, and its potential role in the progression to stomach cancer. PLoS Pathog. 2017 Oct 5;13(10))

30年前には無菌と思われた強酸下の胃にピロリ菌がいることで驚き、近年、ピロリ菌以外の菌が胃に棲みついていることを知りさらに驚いています。

胃の細菌叢にも多様性があります。実社会と同じで細菌の世界でも多様性が重要です。さまざまな細菌がひしめきあって、多様性を保っているので病気にならず安定しているのです。

この多様性が胃細菌叢にもあり、ピロリ菌に感染すると多様性が低下するのです。

Dysbiosis(多様性の低下)が、胃がんの発生とかかわっているという説が浮上しています。

正常胃粘膜→慢性胃炎→腸上皮化生→胃がん

この流れは正しいのですが、ピロリ菌に感染していても、胃がんになる人、ならない人がいます。

胃がんになるならないの違いが、Dysbiosis(多様性の低下)の違いによるのではないか、が最新研究の新たな潮流です。

今後研究が進展すれば、胃がんになりやすい人の細菌叢パターン、胃がんになりにく人の細菌叢パターンが明らかにできそうです。

ピロリ菌に感染すると胃内Haemophilus属、Campylobacter conicisusが減少する報告もあり、細菌叢の変化が同定されてきています。

胃がん患者でLactobacillus coleohominis、Lachonospiraceが増え、逆にPorphyromonas、Neisseria属が減ることも分かってきています。

さらに、胃がんを抑制する胃内細菌の存在が特定できれば、胃がん予防のプロバイオテクス(良性細菌)の開発につながる夢のある話です。

胃がんを完全に予防できる時代は遠くなさそうです。

■まとめ
・ヘリコバクター・ピロリ菌感による胃内常在細菌叢の多様性低下(Dysbiosis)が胃がんの発生母地となる

ピロリ菌除菌治療、アモキシシリン(サワシリン)1日2回と3回どちらが効くのか|アモキシシリン1回500mg3回と750mg2回の比較

ピロリ菌治療は3種類の薬を1日2回7日間服用が標準治療です。
1日用量を2回に分けて朝夕食後ではなく、3回に分けて朝昼夕食後にしたほうが良く効く気がしますよね。
実際にはその答えは、YesでもNoでもあるのです。
抗生物質の服用回数についてのお話です。

■抗生物質には最適な服用回数がある

抗生物質には最適な服用回数があります。
大きく分けると
・1日1回が有効な抗生物質
・何回かに分けて飲んだ方がよい抗生物質
となります。

ニューキノロン系に代表されるような抗生物質の最高血中濃度が高い方が効く抗生物質は、1回に飲む薬の量を増やして、1日1回だけ服用します。

1回に集中してのむことで、血中濃度が高まりよく効くのです。
ニューキノロン系以外にアミノグリコシド系の抗生剤も濃度依存です。

一方ペニシリン系に代表されるような抗生物質は、最高血中濃度よりも、長時間安定して一定以上の抗生物質濃度を保っことで効果を発揮します 。
1日1回服用だと血中濃度が直ぐに下がってしまうので2回、3回、場合によっては4回に分けて服用します。

すごくざっくりとですが、まとめると
・ニューキノロン系やアミノグリコシド系は濃度依存、最高血中濃度が高い方が効くので服用回数を減らして1回の量を増やします。
・ペニシリン系は時間依存、最高血中濃度よりも安定した血中濃度が効果を発揮するので、服用回数を増やします。

■ピロリ菌除菌に用いる抗生物質は1日何回に分けて服用がよいのか

ピロリ菌除菌にはペニシリン系の抗生剤を使を使います。
ペニシリン系だけでなくエリスロマイシン系の抗生剤も併用しますが、ペニシリンにフォーカスをあててお話します。

ペニシリン系抗生剤は1日服用回数を多くした方が血中濃度がが安定して効果が高まります。
ペニシリン系抗生剤は通常1日3回から4回に分けて服用します。
例えば溶連菌で扁桃腺が腫れてペニシリン系抗生剤が必要な時は、1日3回場合によっては4回服用します。

でも、ピロリ菌除菌の時は1日2回です。

ペニシリンを1日4回に分けてピロリ菌除菌するのが理想ですが、1日4回に分けるとどうしても飲み忘れがでてきてしまいます。

理想を追い求め、胃酸抑える薬(PPI)を1日2回、クラリスロマイシンを1日2回、アモキシシリン(ペニシリン系)を1日4回服用、確かに除菌率少しはあがるでしょう。 しかし、1週間1日4回x7日、計28回のみ忘れなく服用はやや困難です。

そこで、アモキシシリンも他の薬と同じように1日2回服用として設定しているのです。

■ピロリ菌除菌、アモキシシリンを1日2回服用、3回服用の効果を比較

先週末行われた日本ヘリコバクターピロリ学会で興味深い報告がありました。 大分は遠くて参加できないので、抄録からのデータ紹介です。

(第24回日本ヘリコバクター学会学術集会抄録集)

ピロリ菌の1次除菌の時に アモキシシリンを1日2回に分けて服用、1日3回に分けて服用して除菌率を調べています。

飲む回数が2回、3回とことなりますが、1日の容量としては同じです。

アモキシシリン1日1500mgを
1回750mg2回と
1回500mg3回の比較です。

結果は予想通り、1日用量を3回に分けて飲んだ方が除菌率は高まるのです。

アモキシシリン服用回数での比較
1日2回での除菌率71.4%(180/252)
1日3回での除菌率81.5%(277/340)
(PPI+CAM+AMPC)

アモキシシリンだけ変則的に1日3回服用は有効です。

ただ、アモキシシリン以外の2剤は1日2回服用はなので、飲み間違えがおきたり、服薬コンプライアンス(正しく予定通り服用できるかどうか)が下がるのが難点ではあります。

きんちんと服用できる限り、アモキシシリンの3分割投与、効果は高いといえます。

■ボノプラザン(タケキャブ)使用除菌時のアモキシシリンを1日2回服用、3回服用の効果を比較

ペニシリン系の抗生物質(アモキシシリン)は同じ1日用量であれば2回より3回に分けて服用した方がよいのは上述したとおりです。この話には続きがあります。

胃酸分泌抑制剤を従来のPPIではなく、より強力に胃酸を抑え抗生物質の効きをよくするボノプラザン(タケキャブ)を用いた除菌でアモキシシリンの服用回数で除菌率を比較しています。

アモキシシリン服用回数での比較
1日2回での除菌率90.1%(471/523)
1日3回での除菌率92.2%(523/567)
(P-CAB+CAM+AMPC)

タケキャブを用いた除菌では、アモキシシリン服用回数が2回でも3回でも、ともに除菌率90%以上です。有意差(統計処理上での明らかな差)は2回と3回でありません。

タケキャブ(P-CAB)を用いた除菌において、アモキシシリン服用回数は気にする必要ないといえます。

除菌高率を高めるためにはアモキシシリンの2回ではなく3回の分割投与は有効なのですが、ボノプラザン(タケキャブ)のレジメンでは差がないのです。

ボノプラザンによる持続的かつ十分な酸分泌抑制下では、アモキシシリンが安定的に働くので3分割投与までする必要はないといえます。

西宮市中島クリニックでの1次除菌は、除菌率が高い、タケキャブ(ボノプラザン)を用いています。アモキシシリンも3分割ではなく、標準治療の2分割です。

■まとめ
・従来型のPPIを用いる除菌治療ではアモキシシリンの3分割投与が有効
・ボノプラザン(タケキャブ)を用いる治療ではアモキシシリンは2分割投与で十分効果がある

 

ピロリ菌3次除菌はグレースビット(シタフロキサシン)が有効|西宮市中島クリニックはタケキャブ、グレースビット、サワシリンを用いた3次除菌プロトコール

■ピロリ菌の除菌治療、1次除菌、2次除菌、3次除菌

ピロリ菌除菌治療は、胃酸を抑える薬と抗生物質を1週間服します。 ほとんどの方は1回目の治療(1次除菌)で消えます。1回目の治療で消えなければ抗生物質を変更して2回目の治療(2次除菌)を行います。 1次除菌は酸分泌を抑える薬PPI+抗生剤(アモキシシリン、クラリスロマイシン)の3剤を1週間服用です 2次除菌は酸分泌を抑える薬PPI+抗生剤(アモキシシリン、フラジール)の3剤を1週間服用です

上記1次除菌、2次除菌で100人中98-99人、ほとんどの方で消えます。抗生剤の耐性(抗生剤が効かなくなる)をもったピロリ菌の場合どうしても1次除菌、2次除菌で消えないことがあります。その場合3次除菌を考慮することになります。(注:1次除菌、2次除菌は保険診療ですが、3次除菌は保険適応外です)

■3次除菌のプロトコール

1回目、2回目の治療で消えない場合の治療どうするべきか。ピロリ菌はその名の通り「菌」です。「菌」なので抗生物質が治療の中心です。1回目、2回目で効かなければ、別の効く抗生物質を選択することになります。

3次除菌の抗生物質の候補として当初レボフロキサシン(クラビット)が用いられていましたが、シタフロキサシン(グレースビット)がピロリ菌によく効くことがわかりました。

当院でも以前から3次除菌はシタフロキサシン(グレースビット)を用いています。

・酸分泌抑制剤PPI ・抗生物質アモキシシリン(サワシリン) ・抗生物質シタフロキサシン(グレースビット)

上記3種類を1週間、朝夕、2回服用で70%以上の3次除菌成功率です。

■3次除菌除菌率レビュー

日本ヘリコバクター学会誌に3次除菌の成功率のレビューが掲載されていました。

3次除菌のキードラックはシタフロキサシン(グレースビット)です。ガチフロキサシン(ガチフロ)を用いている施設もありますが、主流はグレースビットを用いたプロトコールです。

3次除菌の成功率、幅があるものの70%から90.9%とグレースビットを用いたプロトコールで高い成功率です。

(浅岡他. 3次除菌治療の現状. 日本ヘリコバクター学会誌 Vol.20 N0.1 28-33)

内服日数は7日間の施設から14日間の施設まで幅がありますが、何れの施設も70%以上の良好な成功率です。内服期間7日間を14日間と長くしても除菌率がよくなるわけでもありません。内服期間よりも薬の選択、グレースビットを用いることが重要です。

■西宮市中島クリニックでの3次除菌除菌プロトコール

今後も3次除菌はシタフロキサシン(グレースビット)を用いて治療いたします。

以前は酸分泌抑制剤はPPIを用いていましたが、現在はより強力な酸分泌抑制効果があるP-CABボノプラザン(タケキャブ)をもちいています。

現在の中島クリニックでの3次除菌プロトコール
・酸分泌抑制P-CAB ボノプラザン(タケキャブ)
・抗生物質アモキシシリン(サワシリン)
・抗生物質シタフロキサシン(グレースビット)
上記3種類を7日間(1週間)服用です。

■まとめ
・ピロリ菌3次除菌はシタフロキサシン(グレースビット)を用いることで70%以上の高い治療効果がえられます。

400か800かそれが問題だ|ピロリ菌除菌クラリスロマイシン投与量、西宮市中島クリニックは800

■ピロリ菌除菌成功率比較、従来型胃酸分泌抑制薬(PPI)とボノプラザン(タケキャブ)

2015年2月認可、胃酸分泌を強力に抑えるボノプラザン(タケキャブ)の登場で、ピロリ菌除菌率が劇的に向上しました。

従来の胃酸分泌を抑える薬を使った治療での除菌率70%だったのが、タケキャブを使った治療で90%の方が消えるようになりました。

中島クリニックの治療データでも、従来型の胃酸を抑える薬を使った除菌成功率が69.8%だったのが、タケキャブの治療で92.5%です。

当院での標準的な一次除菌治療はもちろん、ボノプラザン(タケキャブ)+抗生剤2種類を用いた治療です。従来型の胃酸分泌を抑える薬(従来型PPI)と新しいタイプの胃酸分泌を抑える薬ボノプラザン(タケキャブ)どちらを用いるかに関して議論の余地はありません。ピロリ菌除菌に関して、ボノプラザン(タケキャブ)一拓です。

■抗生剤投与量400と800比較(従来型PPIを用いた治療)

ピロリ菌除菌治療薬には抗生剤の容量で400と800の2つの規格があります。クラリスロマイシンの1日用量を400mgと800mgの2種類です。

どちらの方が除菌率が高いかに関して過去の研究から一定の見解に達しています。400mgより800mgと多い用量の方が効きそうなイメージありますが、実際には400mgをもちいても800mgでも除菌率に大差はありませんでした。400mgでも800mgどちらでもOK、効果が同じなら少ない400mg用量でいいんじゃない、という考えが主流です。

ただ、これは従来型PPIを用いた除菌治療での話です。 新しいタイプの胃酸分泌抑制剤ボノプラザン(タケキャブ)に関しては400が800かの結論はまだでていません。

■400と800比較(タケキャブを用いた除菌治療)

タケキャブを用いた除菌治療でクラリスロマイシン用量400mgと800mgどちらをもちいる方がよいか結論はまだでていません。

消化器内科を専門としているDrに聞いても400mg派、400と800どちらでもいい派が半々。800mg派は少ない印象です。

個人的には800mg派です。中島クリニックでのボノプラザン治療実績が100例になった時に400mgと800mg比較したデータがあります。400mg除菌成功率85.2%、800mg除菌成功率92.5%でした。統計処理上は有意差でませんでしたが、400mgより800mgの方が治療成績よかったのです。

■西宮市中島クリニックで除菌時クラリスロマイシン800mgを用いる理由

私が、ピロリ菌除菌率が従来型PPIから新しいタイプの酸分泌抑制剤タケキャブ(ボノプラザン)にかえることで除菌率が改善する理由を解析した論文が、2016年に日本ヘリコバクターピロリ学会誌に掲載されました。

その中でクラリスロマイシンの薬剤耐性の度合いが除菌の成否に重要な点であることを発見しました。クラリスロマイシン薬剤耐性をもっているピロリ菌でも軽度の耐性程度であれば治療できるのです。

これには2つの条件が必要で、十分量のクラリスロマイシンが胃に届く(用量を多くする)こととクラリスロマイシンが効きやすいように酸分泌をおさえる(酸性下では抗生剤効かない)ことです。

この西宮市中島クリニックでの研究成果からクラリスロマイシンの用量は800mgが400mgに比べ望ましいのではと仮説をたてていました。

理論に基づく仮説にとどまらず、実際に中島クリニックでの治療成績を計算すると、タケキャブ(ボノプラザン)を用いた治療成績で400mg除菌成功率85.2%、800mg除菌成功率92.5%です。400mgより800mgの方が良好です。

ただ400mgと800mgどちらがよいかコンセンサス(共通見解)は出ていないので、個人的な治療方針として800mgを中心に治療していました。

■第24回日本ヘリコバクタープログラム抄録集、演題:P-CABを用いた1次除菌では、高容量のCAM使用がより高い除菌率を示す

ボノプラザン(タケキャブ)を用いるピロリ菌除菌治療、クラリスロマイシン用量800mgの方がよいだろうと個人的には考えながらも、確信をもてずにいましたが、800mgで治療方針でよいと確信をもてるデータに出会いました。

先日第24回ヘリコバクター学会のプログラム抄録集が郵送されてきました。

この学会なぜかいつも地方都市での開催です。今回は大分県。以前長崎の時もあったような。東京であれば新幹線で日帰りで参加するのですが、大分となるとさすがに日帰りはむりです。

旅行であれば、おんせん県、行きたいのですが土曜日半日仕事していますので、今回も学会参加は見送りです。最後に行ったのは、だいぶ前の神戸開催が最後かも。

学会に行けないのでせめても最新情報をキャッチアップするため、抄録だけは毎回熟読しています。興味深い演題を見つけました。

ワークショップ3 除菌率の向上を目指して WS3-11「P-CABを用いた1次除菌では、高容量のCAM使用がより高い除菌率を示す」 東京慈恵会医科大学内科学講座消化器科・肝臓内科、平和台クリニック

慈恵医大からの8施設共同研究結果です。 1798例のピロリ菌除菌治療率を集積した結果です。クラリスロマイシン800mgでの除菌成功率97.2%、40mgでの成功率88.2%。

多施設での研究結果でも、タケキャブ(ボノプラザン)を用いたピロリ菌除菌では400mgよりも800mgの方がよい成績で、当院の結果と同じです。

2年間の心のもやもやを吹き飛ばしてくれる素晴らしい結果です。やはり私の仮説は間違いでなかったことが分かりました。今後も800mgを中心に治療づけていくことにします。

■まとめ
・ボノプラザン(タケキャブ)を用いた除菌治療はクラリスロマイシン800mgが400mgより治療成績良好でした
・中島クリニックの方針は今後もクラリスロマイシン用量800mgで治療です