医療コラム

2021.11.01ピロリ菌、医療コラム

ピロリ菌を除菌した後も内視鏡(胃カメラ)での定期検診をすすめする理由

1983年に世紀の大発見がありました。

胃の中は強酸で細菌が生息することはないと思われていたのですが、ヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌が胃に生息することが発見されました。

されに、その後の研究でピロリ菌が胃がんの原因であることも特定されています。
今ではピロリ菌が胃がんの原因菌であることは常識となっていますが、それ以前は原因が不明でした。欧米人は胃がんが少なく、日本人は胃がんが多かったので遺伝的な違いが罹患率の差ではないかと言われていた時代もありました。

ピロリ菌は胃がんの原因

胃潰瘍の原因と考えられたピロリ菌が、胃がんの原因菌であることがわかりました。

ピロリ菌感染している胃→胃がん発生リスク高い
ピロリ菌未感染→胃がんリスク限りなく低い

ここまでは有名な話です。
胃がんの原因がピロリ菌なら、除去しよう!
これがピロリ菌除菌治療です。

ピロリ菌除菌治療の方法

ピロリ菌は名前に「菌」とついているように細菌です。
抗菌薬(抗生物質)が聞きます。

研究の結果、ペニシリン系抗生物質、エリスロマイシン系抗生物質が効くことがわかりました。
抗生物質を2種類、抗生物質を胃の中でよく効くように胃内pHを上げる胃酸分泌阻害薬の3剤を併用する治療が広くおこなわれています。

3剤による除菌治療1回で7割から9割の方が除菌できるよい治療法が確立されています。

3剤は
・ペニシリン系抗生物質、アモキシシリン(サワシリン)
・エリスロマイシン系抗生物質、エリスロマイシン(エリスロシン)
・胃酸分泌抑制剤PPIもしくはP-CAB(タケプロン、ネキシウム、オメプラール、パリエット、タケキャブ)
となります。

これら2種類の薬を朝、夕、1日2回、7日感服用します。

ピロリ菌治療ができないのは薬剤アレルギーを持っているときです。

ペニシリン系抗生物質、エリスロマイシン系抗生物質、プロトンポンプ阻害薬を過去に服用してアレルギーがでたことがある方は標準的な治療(一次ピロリ菌除菌)ができません。

治療の副反応は、下痢、軟便が5人に1人ほど置きますが、多くは軟便程度で下痢まで至ることはほとんどありません。

ピロリ菌除菌で発がんリスク低下

ピロリ菌が胃がんの原因 → ピロリを除菌 → 胃がん予防

との流れが予測されます。
実際除菌することで、ピロリ菌による慢性胃炎は劇的に改善します。

慢性胃炎が改善して、胃がんリスクは下がります。

しかし発がんリスクはゼロではありません。

たばこを吸っている人が、肺がん予防のためにたばこをやめるのと似ています。

喫煙 → 肺がんリスク上昇 → 禁煙 → 肺がんリスク低下

たばこをやめることで、肺がんのリスクは激減しますが、ゼロにはなりません。

これとピロリ菌除菌による胃がんリスク低下は同じように理解してよいでしょう。

一番リスクが低いのは、非喫煙者、次にリスクが低いのがたばこをやめた人、そして最もリスクが高いのが喫煙者です。

肺がんリスク
たばこを吸わない人 < たばこをやめた人 << たばこを吸い続けている人

ピロリ菌による、胃がんのリスクも同じです。

一番リスクが低いのは、ピロリ菌未感染の人(もともとピロリ菌がいない人)、次にリスクが低いのはピロリ菌除後の人、そして最もリスクが高いのがピロリ菌継続感染している人です。

胃がんリスク

もともとピロリ菌がいない人(ピロリ菌未感染) < ピロリ菌除菌後の人(ピロリ菌既感染) << ピロリ菌継続感染の人(ピロリ菌現感染)

ピロリ菌除菌の胃がんリスク

ピロリ菌除菌で
具体的に数字で示すと
ピロリ菌除菌後の胃がん発生リスク
年率0.3%ぐらいです。

年率0.3%というのは
除菌後、毎年1000人に3人から胃がんが見つかります。
多いと感じるか少ないと感じるかですが、ゼロではないのです。

ピロリ菌除菌の胃がんリスクは、胃粘膜萎縮度と関係する

ピロリ菌除菌後の胃がん発生リスク
年率0.3%ぐらいです。

この話には続きがあります。

ピロリ菌を除菌した人みんなが同じ発がんリスクではないのです。

胃炎が続いた結果、胃粘膜の萎縮が広がっているとその分リスクが高まります。

萎縮の広がりでの発がんリスクの年率は

萎縮が軽度(C-1、C-2) ほぼ0
萎縮が中等度(C-3、O-1) 0.26%
萎縮が高度(O-2、O-3)0.66%

全体でみると発がんは年率0.3%ぐらいですが、
高度の萎縮があれば0.66%に跳ねあがります。
逆に萎縮が軽度であれば、発がんリスクは0に近づきます。

ピロリ菌除菌後は胃粘膜の地図状発赤が胃がん予測因子

ピロリ菌を除菌すると、全体的に「赤くただれて」「むくんでいた」胃の粘膜が、赤みがとれて、むくみがとれて、すっきりとした粘膜にかわります。

ひどくただれていたところは、除菌後に地図状にでこぼことした赤くなっている形として残ります。この赤いでこぼこは地図状発赤とよばれています。
胃がひどくただれた(慢性胃炎が続いた)結果、腸上皮化成(胃の粘膜が腸のようになっている状態)となっているところが、除菌後地図状発赤となります。

地図状発赤があると、胃がんの発生率が高いことが多変量解析の結果からわかってきています。

地図状発赤があるかどうかは、胃カメラ(内視鏡)でみればわかります。もし地図状発赤があれば、より入念に胃カメラによる定期フォローを考えてよいでしょう。

除菌後は、1年に1回の胃カメラ検査をお勧めいたします。

まとめ

ピロリ菌除菌後も発がんリスクがあるので、定期内視鏡(胃カメラ)を勧めます。
発がんリスクは胃粘膜の萎縮程度で大きくことなります。
特に高度胃粘膜萎縮を指摘された方は入念なフォローが必要です。

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