チェス、将棋や囲碁はコンピューターが勝てない分野と思われていたのがつい数年前。
■AI(人口知能: artificial intelligence)の進歩スピード
チェスの世界チャンピオンがコンピューターに敗れ
将棋もコンピューターが勝つ時代になり
最後の砦と思われていた囲碁でしたが、
人口知能AlphaGoが人類最強といわれている棋士、柯潔との三番勝負で3戦全勝と圧勝したのが、つい1年前です。
AI(人口知能: artificial intelligence)は驚くべきスピードで発達してきています。
2045年頃、いまから20年少しで、「シンギュラリティ」(技術的特異点)に達して、AIは人の知能を越すともいわれています。
パターン認識には異常な強さを発揮するAIですが、
0から1は生み出さないAIに全てができるわけではありません。
クリエイティブな仕事、チームを作るなど、
ヒトの能力が必要とされる分野は多々あり、
シンギュラリティは来ないのではないかと
私は希望的観測をもっています。
■医療とAI(人口知能: artificial intelligence)
各分野でAIが活用されるようになるのは当然のことです。
医療の分野も例外ではありません。
画像のパターン認識は、AI(人口知能: artificial intelligence)が得意とする分野です。
CTや病理検査など、画像診断の分野では
すでにAIがエキスパートドクター並の
診断を下している報告があります。
消化器の分野でも
がんセンターを中心として内視鏡診断における
AI活用が研究されています。
■胃カメラ大腸カメラとAI
将来的には、胃カメラ大腸カメラ時に、画像読影をアシストするAIは登場すると思われますが、胃カメラや大腸カメラは、撮影条件で画像に、かなりバラツキが出ます。
バラツキのある画像を、どのように判断するかが
クリアするべき最大のポイントです。
内視鏡検査の時は、
送気して、胃や大腸を膨らませて観察します。
これが基本なのですが、
癌を疑う病変があれば、逆に空気を抜いて、病変の形が変わるかどうか、堅さを判断したりもします。
病変の表面の状態、脱気したときの病変の堅さ含め
総合的に評価して、癌であるかどうか、さらにその深達度(どれぐらい深く病変が根をはっているか)を判断します。
撮影条件が一定で画像にばらつきがなければ、AIは活躍できますが、内視鏡写真は条件によりかなり印象がかわります。
検査担当医師の習熟度によっても撮影する写真が異なります。
そのバラツキを加味して画像判断するAIの登場が待たれるところです。
■胃透視(胃バリウム検査)画像のピロリ菌感染有無を判断するAI(人口知能: artificial intelligence)
胃カメラや大腸カメラの画像と対照的に、比較的各画像にバラツキが少ないのが胃透視検査(胃バリウム検査)です。
バリウム検査は、一定のパターンで画像を撮影します。
そのため術者による画像のバラツキが少ないのが特徴です。
これに着目して、バリウム検査でのAIの有効性を検討した結果が今年の2月に報告されました。
バリウム検査で、ピロリ菌の有無をAIが判断できるか
これを調べています。
(Citation: Togo R et al. Preliminary study of automatic gastric cancer risk classification from photofluorography. World J Gastrointest Oncol. 2018 Feb 15; 10(2): 62–70.)
2100症例、計16,800枚の画像を判断させています。
AI(人口知能: artificial intelligence)による
バリウム検査でのピロリ菌感染有無の判断
感度88.4%
特異度89.5%
の結果でした
論文にはAIがどこの部位を認識したかは書かれていませんが、私が勝手に想像するに、
ピロリ菌未感染では
胃前庭部粘膜の、細かく均一な微細な模様を呈します。
一方、ピロリ菌感染では
胃粘膜が、粗造に(あらく)なったり、不揃いになったり、顆粒状に目立ったりしてきます。
これらの差をAIが判断したのではないかと想像します。
あと、体部大彎のひだ(皺襞)は
未感染では、シュッと細く縦走しているのですが
ピロリ感染すると炎症で、太く、蛇行します。
これらの差も含め判断しているのかもしれません。
感度88.4%、特異度89.5%
感度、特異度とも90%近くあり、ピロリ菌の存在診断に関して、ほぼ実用レベルに達していると思われます。
画像診断におけるAIの進歩めざましく、
画像検査は、AIで診断支援するのが当然の時代になる日が近いですね。
■まとめ
・AI(人口知能: artificial intelligence)はパターン認識につよい
・AIの胃バリウム検査におけるピロリ菌感染有無の判断は感度88.4%、特異度89.5%とすばらしい