医療コラム

2023.05.26内科全般

2019年三重県津市での麻しん集団感染|空気感染する麻疹ウイルス基本再生産数(R0)18の感染力

三重県ホームページに昨年末に三重県津市の民間団体の施設で開催された研修会の参加者49人から26人の麻しん患者さんが集団発生していることが報告されています。
海外からの麻しん持ち込み感染などの二次感染広がりは麻疹の定期ワクチンがなかった世代である30代が中心でした。今回は10代、20代の若い方が二次感染の中心となっていることが特徴的です。

ニュースによると重症化している方がいないとのことで何よりであります。今後の三次感染、四次感染と拡大しないことを願うばかりです。
願うと言うよりも、麻しん風しんのワクチンを皆が2回接種して、十分な抗体を持っていることが感染拡大を防ぐために大切です。

(Citation: 三重県ホームページhttp://www.pref.mie.lg.jp)

はしか(麻しん)の感染力、基本再生産数

病気の広がる力を数値化したものに基本再生産数(R0)という指標があります。
1人の患者さんが免疫をもっていない人何人に感染させうるかの指標です。
季節性インフルエンザのR0は2前後です。毎年流行するインフルエンザといえでも、たかだか2程度の数値です。
おたふくかぜ(ムンプス)は4-7 三日ばしか(風しん)6-7 水ぼうそう(水痘)は7-9とかなり強力です。
そして麻しんはR0は12-18と桁違いです。 一人の患者さんが12人から18人にも感染させる力をもっています。
なぜか、麻しんは空気感染しますので。飛沫感染するインフルエンザなどはとは広がり方が違います。
参考までに水ぼうそうも空気感染します。R0かなりの数値です。

三重県津市での二次感染、ワクチン接種歴

患者さん26人のワクチン接種歴がホームページに記載されています。
研修会に参加した10代から30代49人のうち、24人が麻しん集団感染しています。

20人がワクチン接種歴なしです。4人が1回のみワクチン接種です。
麻しん基本再生産数の12-18をはるかに越えて、津市での事例では1人の麻しん持ち込みが、24人にも感染しています。
さらに研修会ではしかに感染した方と接触した、2人が新たにはしか感染しています(2次感染)。
ワクチン未接種で麻しん抗体をもっていなければ、容易感染してしまうこと、さらに1回だけのワクチン接種では不十分なことが津市の報告から読み取れます。
麻しん風しんの定期接種は2回接種です。1回目の接種率が95%前後、2回接種率が90%が日本の現況です。
麻しん予防にはワクチン接種率を高めて備えておくことが肝要です。

なぜ麻しん予防にワクチンなのか その1 疾病リスク

麻しんが、軽い病気であれば罹って免疫をつけるのが一番。という考え方もありでしょう。しかし、麻しんは重症化リスクが高い、場合によっては麻しん脳炎、死亡に至ることもある病気です。
罹って免疫をつける発想はリスキー過ぎます。
今ほど栄養状態や衛生状態がよくなかった江戸時代はかなり死亡率が高く、麻しんは命定めともいわれていました。
栄養状態、衛生状態がよい現代でさえ500人に1人麻しん脳炎 1000に1人死亡リスクがあります。
ワクチンによる予防がゴールデンスタンダードです。

なぜ麻しん予防にワクチンなのか その2 二次三次感染リスク

高熱、発疹が出たらどうされますでしょうか?
病院行きますよね。
経験したことのない重症感を伴う発疹をともなう高熱がでれば、医師の診察を受けるために病院に行くかと思います。
病院にはステロイド内服、免疫抑制剤内服、持病をもった高齢者などが通われています。
基本再生産数(R0)18の空気感染する麻しんとの接触は、避けるべきことです。
麻しん流行が拡大すると、麻しん患者さんと持病をもっている患者さんとの接触機会がどうしても避けられないものとなってしまいます。
社会全体がワクチン接種による麻しん抗体を保持することで集団免疫(Herd Immunity)をもってして、流行しないようにすることが、大切なのです。

はしか(麻しん)に関する参考ブログ記事

海外からの持ち込みはしか。沖縄、埼玉、各地で起きています。2016年には中島クリニックのある西宮市でもインドネシアからの持ち込み麻しんが発生しています。
麻しんに関する参考ブログ記事です。

●はしか(麻疹)輸出国から輸入国になった日本のとるべき行動|はしか(麻疹)ワクチン2回接種率の向上

●はしか(麻疹)が流行ると受ける相談、はしかの抗体調べたほうがいいでしょうか?|麻疹FAQ

●埼玉県たて続けに4人がはしか発症|麻疹(はしか)はワクチンによる感染予防が基本

●「はしか」に関する誤解を解いておくよ|麻疹感染拡大の注意喚起も必要だが、ワクチンによる予防が基本中の基本

まとめ

麻しん感染予防のためにはワクチン接種が唯一の方法です。
ワクチン接種1回では十分に抗体価が得られなかったり、抗体が低かったりして予防効果が不十分なことがあります。
麻しん予防には、ワクチン2回接種が必要です。

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