左向きで寝ると逆流性食道炎が楽になる?睡眠姿勢と胃酸逆流の関係
- HEIWA SOTOMURA

- 4月10日
- 読了時間: 4分

逆流性食道炎とはどのような病気か
逆流性食道炎は、胃液が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症が起こることで胸やけや呑酸、のどの違和感や痛みといった不快な症状が現れる消化器疾患です。原因はさまざまですが、代表的なものとしては下部食道括約筋の緩みが挙げられます。この括約筋は本来、胃の内容物が逆流しないように食道と胃のつなぎ目をしっかり閉じている筋肉ですが、過度の腹圧、加齢、肥満、食道裂孔ヘルニアなどによってその機能が低下すると、胃酸が食道に上がりやすくなってしまいます。
また、食後すぐに仰向けで寝たり、前かがみになる姿勢、喫煙やアルコール、香辛料・脂肪分の多い食品の過剰摂取も、逆流を誘発する要因となるため注意が必要です。
胃酸逆流と睡眠姿勢の深い関係
なぜ左向きが推奨されるのか
人の胃は体の左側に位置しており、胃の中で分泌された胃液は重力の影響を受けて、左向きに寝ているときは下方に溜まりやすくなります。このとき、食道とのつなぎ目は胃の上部にあるため、胃液が食道に上がりにくくなると考えられています。実際に、胃カメラ検査でも、左側を下にした姿勢では胃内容物の逆流が抑えられ、食道粘膜の保護に働いていることが確認される場面があります。
右向きに寝てしまうと、逆に胃酸が食道の方へと移動しやすくなるため、夜間に胸焼けや吐き気、ゲップといった症状が出やすくなる可能性があります。したがって、就寝中の体勢は軽視できないポイントのひとつです。
左向きの姿勢によって期待される効果
左側を下にして寝ることで、胃液が自然に胃の底部へと留まりやすくなり、下部食道括約筋への圧力も軽減されるため、夜間の逆流を防ぐことができます。また、食道内に炎症がある状態でも、刺激が加わりにくくなり、粘膜の修復を妨げにくくなることも期待されます。結果として、睡眠時の不快感が減少し、睡眠の質が向上する可能性が高くなります。
左向きで寝れば逆流性食道炎は治るのか?
逆流性食道炎の根本的な治療には、薬物療法や生活習慣の見直し、場合によってはピロリ菌の検査・除菌、さらには胃カメラ検査などによる病変の診断と経過観察が必要です。そのうえで、左向きで寝ることはあくまで「症状の軽減を助ける補助的な対策」として効果が期待されます。
とくに、夜間に胸やけや呑酸などの症状が強く現れるタイプの方は、寝姿の工夫だけで症状が大きく変わることもあります。ただし、左向きの姿勢だけで完全に逆流が止まるわけではありません。胃液の分泌が過剰であったり、粘膜にびらんがあるような状態では、やはり医師による適切な診察と治療が必要となります。
症状が続く場合は早めの受診と検査を
逆流性食道炎は自然治癒が見込めるケースもある一方で、症状を放置したままにしておくと、食道の粘膜が慢性的に傷つき、バレット食道や食道がんといった合併症のリスクが高まる可能性があります。定期的な胃カメラ検査を通じて粘膜の状態を直接観察し、必要に応じて薬物療法や食生活の改善を組み合わせていくことが望まれます。
当院では鎮静剤を使用した内視鏡検査に対応しており、患者様の負担を最小限に抑えながら、逆流性食道炎を含む消化器疾患全般の診断・治療を行っています。症状にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
姿勢の工夫は“補助的な予防策”として有効
左向きで寝ることで、胃食道逆流症の夜間症状が軽減される可能性は医学的にも理にかなっています。とはいえ、それだけで病気が治るわけではありません。逆流性食道炎の原因は多岐にわたり、粘膜の状態、胃酸分泌の程度、自律神経のバランス、喫煙・飲酒・早食いなどの生活習慣、さらにはピロリ菌感染や便秘などの要因も複雑に関係しています。
症状が慢性化している、薬を飲んでも改善しない、食後や就寝時に胸やけがあるといった場合には、内科または消化器内科を受診して医師による適切な診断と治療を受けることが大切です。当院では一人ひとりの症状に応じた治療方針をご提案しておりますので、「これは逆流性食道炎かもしれない」と感じたときには、どうぞ早めにご予約・ご相談ください。



