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胃カメラ検査の鎮静剤と麻酔の違いについて

  • 執筆者の写真: HEIWA SOTOMURA
    HEIWA SOTOMURA
  • 5月2日
  • 読了時間: 24分

更新日:6月11日

中島クリニック院長の中島です。日々の診療において、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)は非常に重要な検査の一つです。この検査に対して「怖い」「苦しい」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。そのような不安を和らげるために、当院では適切な鎮静剤を用いた検査を提供しています。


今回は胃カメラ検査における「鎮静剤」と「麻酔」の違いについて詳しく解説し、安心して検査を受けていただくための情報をお伝えします。


この記事の目次

胃カメラ検査の鎮静剤とは

鎮静剤の基本的な役割

当院での鎮静剤使用の考え方

鎮静剤と睡眠の関係

鎮静剤の種類と使用方法

内視鏡検査で使用される主な鎮静剤

鎮静剤の投与方法

投与量の決定と調整

鎮静レベルの評価

鎮静剤と麻酔の違い

鎮静と麻酔の基本的な違い

内視鏡検査での使い分け

内視鏡検査で使用される局所麻酔

なぜ当院では鎮静剤を選択しているのか

鎮静剤を希望する方に多い不安とは

鎮静剤に関する一般的な不安

検査前の不安を軽減するための当院の取り組み

鎮静下での胃カメラ検査の流れ

検査前の準備

検査直前の処置

検査中

検査終了後

鎮静下の意識とは?ウトウトしている感覚?

鎮静状態での主観的体験

鎮静の深さと個人差

鎮静レベルの調整

検査後の注意点とリカバリー時間

検査後の回復過程

検査当日の注意事項

異常時の対応

高齢者のリカバリー時間

鎮静剤の副作用やリスク

一般的な副作用

リスク要因と対策

当院での安全対策

鎮静剤と麻酔の使い分け:当院の考え方

患者さん中心の選択

80歳以上の高齢者への対応

重篤な基礎疾患を持つ方への対応

鎮静剤による胃カメラ検査:メリットとデメリット

最後に:安心して胃カメラ検査を受けるために

当院からのメッセージ

胃カメラ検査を前向きに捉えるために



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胃カメラ検査の鎮静剤とは


鎮静剤の基本的な役割

胃カメラ検査で使用する鎮静剤は、患者さんの不安や緊張を和らげ、検査時の不快感を軽減するために使用するお薬です。睡眠薬と似た働きをしますが、完全に意識をなくすものではなく、いわゆる「うとうと」した状態をもたらすものです。このような状態を「意識下鎮静」と呼びます。

鎮静剤の主な目的は以下の通りです。

  • 検査に対する不安や恐怖感を軽減する

  • 咽頭反射(のどの違和感による反射)を抑える

  • 検査中の体動を少なくし、安全で正確な検査を可能にする

  • 検査中の記憶を曖昧にし、不快な記憶を残りにくくする


当院での鎮静剤使用の考え方

当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて鎮静剤の使用を検討しています。基本的には、希望される方には鎮静剤を使用した検査(鎮静下内視鏡検査)を提供していますが、年齢や持病などを考慮して、安全性を最優先しています。

特に80歳を超える高齢の方や重い持病をお持ちの方については、全身状態を慎重に判断した上で、鎮静剤の使用を控える場合もあります。これは、鎮静剤の影響による呼吸抑制や血圧低下などのリスクを避けるためであり、患者さんの安全を第一に考えた判断です。


鎮静剤と睡眠の関係

鎮静剤による状態は、自然な睡眠とは少し異なります。通常の睡眠では、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返しますが、鎮静剤による状態は、ちょうど昼寝をしているような浅い眠りに近い状態です。声をかけると反応できるレベルの意識は保たれていることが多いのが特徴です。

鎮静剤による効果は個人差があり、同じ量のお薬でも、ほとんど眠くならない方から、かなり深く眠ってしまう方まで反応は様々です。そのため、当院では患者さんの体重や年齢、過去の薬剤への反応などを考慮して、適切な量を慎重に判断しています。



鎮静剤の種類と使用方法


内視鏡検査で使用される主な鎮静剤

胃カメラ検査で使用される主な鎮静剤には、以下のようなものがあります。


1. ベンゾジアゼピン系薬剤

最も一般的に使用される鎮静剤で、ミダゾラム(商品名:ドルミカムなど)やジアゼパム(商品名:セルシンなど)が代表的です。これらは鎮静効果に加えて、筋肉の緊張を緩和する作用や健忘効果(記憶を曖昧にする効果)もあるため、内視鏡検査に適しています。

特にミダゾラムは作用発現が早く(静脈注射後1〜2分)、作用時間が比較的短い(30〜60分程度)ため、日帰り検査には適しています。また、健忘効果が強いため、検査の不快な記憶が残りにくいという利点があります。


2. プロポフォール

比較的新しい鎮静剤で、作用発現がさらに早く(30秒程度)、作用時間も短い(数分〜10分程度)という特徴があります。覚醒も早いため、短時間の処置には適していますが、呼吸抑制などの副作用にも注意が必要です。主に麻酔科医や専門的なトレーニングを受けた医師が使用することが多いです。


3. 鎮痛剤との併用

場合によっては、ペンタゾシンなどの鎮痛剤を併用することもあります。特に、処置を伴う内視鏡検査(ポリープ切除など)では、痛みを抑える目的で使用されることがあります。


鎮静剤の投与方法

鎮静剤の主な投与方法は以下の通りです。


1. 静脈内投与(静脈注射)

最も一般的な方法で、腕の静脈に点滴ラインを確保し、そこから鎮静剤を投与します。効果が速やかに現れ、必要に応じて追加投与も可能です。当院でも主にこの方法を採用しています。


2. 経口投与

検査前に錠剤やシロップとして飲んでいただく方法もありますが、効果の発現に個人差が大きく、効果の調整が難しいため、内視鏡検査では静脈内投与が一般的です。


投与量の決定と調整

鎮静剤の投与量は以下の要素を考慮して決定されます。

  • 年齢(高齢者ほど少量に)

  • 体重(体重に応じて調整)

  • 肝機能・腎機能の状態

  • 過去の鎮静剤への反応性

  • 持病の有無と種類

  • 併用薬の影響

特に重要なのは、一度に全量を投与するのではなく、少量から開始して効果を見ながら徐々に追加していく「滴定投与」の考え方です。これにより、過剰な鎮静による呼吸抑制などのリスクを最小限に抑えることができます。


鎮静レベルの評価

鎮静の深さ(鎮静レベル)は、通常以下のようなスケールで評価されます。

  • 最小鎮静(不安軽減):正常な反応があり、ほぼ通常の状態

  • 中等度鎮静:声かけに対して反応があり、呼吸・循環動態は安定

  • 深鎮静:強い刺激でのみ反応し、呼吸・循環動態の維持に注意が必要

  • 全身麻酔:反応がなく、呼吸・循環動態の維持には支援が必要

内視鏡検査では通常、中等度鎮静を目標としています。この状態では患者さんは声かけに対して反応できますが、検査自体の記憶は曖昧になっていることが多いです。



鎮静剤と麻酔の違い


鎮静と麻酔の基本的な違い

鎮静剤と麻酔薬は似ているようで、実は目的も作用も大きく異なります。主な違いは以下の通りです。


1. 目的の違い

  • 鎮静剤:不安や緊張を和らげ、不快感を軽減することが主な目的です。意識は完全になくなるわけではなく、程度の差はあれども何らかの反応が保たれています。

  • 麻酔薬:痛みを感じなくすること(特に局所麻酔)や意識を完全に失わせること(全身麻酔)が目的です。特に全身麻酔では、痛みの遮断、意識の消失、筋弛緩などを目的とします。


2. 意識レベルへの影響

  • 鎮静剤:軽度〜中等度の鎮静では、意識は保たれており、声かけに反応することができます。深鎮静になると反応が鈍くなりますが、強い刺激には反応します。

  • 全身麻酔:完全に意識がなくなり、どんな強い刺激にも反応しません。


3. 気道確保と呼吸管理

  • 鎮静剤:中等度鎮静までであれば、自発呼吸は保たれており、特別な気道確保は必要ありません。

  • 全身麻酔:気管挿管や喉頭マスクなどによる気道確保が必要で、しばしば人工呼吸管理が行われます。


4. 実施者と場所

  • 鎮静剤:適切な訓練を受けた医師(内視鏡医など)が、専用の検査室などで実施することができます。

  • 全身麻酔:通常は麻酔科医が手術室などの特別な設備がある場所で実施します。


内視鏡検査での使い分け

胃カメラ検査において、当院では基本的に鎮静剤を使用しています。これは以下の理由からです。

  1. 通常の診断目的の胃カメラ検査では、全身麻酔ほどの深い意識消失は必要ない

  2. 鎮静剤で十分な不安軽減と不快感の緩和が得られる

  3. 全身麻酔に比べて回復が早く、日帰り検査に適している

  4. 副作用やリスクが比較的少ない

一方、一部の医療機関では「麻酔薬」を使用していると表現する場合もありますが、実際には多くの場合、それは「深い鎮静」を意味していることが多いです。真の全身麻酔(気管挿管を伴うもの)は、通常の胃カメラ検査では行われません。


内視鏡検査で使用される局所麻酔

胃カメラ検査では、鎮静剤とは別に、のどの局所麻酔も使用されます。これは内視鏡の挿入時の不快感や咽頭反射を抑えるためのものです。一般的にはキシロカインスプレーやビスカスなどのリドカイン製剤が使用されます。

この局所麻酔は、のどの感覚を一時的に鈍らせるだけで、意識には影響しません。鎮静剤を使用しない場合でも、このような局所麻酔は通常使用されます。


なぜ当院では鎮静剤を選択しているのか

当院では、以下の理由から鎮静剤(特にミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系薬剤)を選択しています。

  1. 安全性のバランスが良い(適切な使用であれば副作用のリスクは低い)

  2. 適切な鎮静効果が得られる(多くの患者さんが「楽だった」と感じる)

  3. 健忘効果により不快な記憶が残りにくい

  4. 検査後の回復が比較的早い(多くの場合、30分〜1時間程度で日常生活に戻れる)

  5. 拮抗薬(フルマゼニル)があり、必要時に効果を打ち消すことができる

これにより、患者さんにとってより快適で安全な検査体験を提供することが可能となります。



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鎮静剤を希望する方に多い不安とは


鎮静剤に関する一般的な不安

鎮静剤を使用した胃カメラ検査を希望される方でも、様々な不安を抱えていることがあります。以下に多い不安と、それに対する説明をまとめます。


1. 「効きすぎて目が覚めなくなるのでは?」

鎮静剤は用量によって効果が調整できます。当院では患者さんの状態に合わせて適切な量を慎重に投与しています。また、使用するミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系薬剤は、効果が切れると自然に代謝されて体外に排出されます。さらに、万が一効果が強すぎる場合には、拮抗薬(フルマゼニル)を使用して効果を打ち消すことも可能です。


2. 「薬の副作用が怖い」

どのような薬にも副作用のリスクはありますが、内視鏡検査で使用する鎮静剤は長年の使用実績があり、安全性が確立されています。また、投与中は血圧、脈拍、酸素飽和度などを常に監視しており、異常があればすぐに対応できる体制を整えています。


3. 「検査中に何をされているかわからないのが不安」

鎮静下でも、完全に意識がなくなるわけではなく、声かけに反応できる程度の意識は保たれていることが多いです。また、医師や看護師が常に側にいて、異常がないかチェックしています。何か不安なことがあれば、検査前に医師や看護師にお伝えください。


4. 「依存性があるのでは?」

確かにベンゾジアゼピン系薬剤には依存性の可能性がありますが、それは長期間連続して使用した場合の話です。内視鏡検査での1回限りの使用では、依存症になる心配はほとんどありません。


5. 「検査後に運転できなくなるのでは?」

鎮静剤の影響は個人差がありますが、一般的に検査後24時間は車の運転や機械の操作、重要な契約の締結などは避けていただくようお願いしています。これは、判断力や反射神経に影響が残る可能性があるためです。検査当日は公共交通機関をご利用いただくか、ご家族に送迎をお願いすることをお勧めしています。


検査前の不安を軽減するための当院の取り組み

当院では、患者さんの不安を軽減するために、以下のような取り組みを行っています。


1. 丁寧な事前説明

検査前の診察時に、鎮静剤の効果や副作用、検査の流れなどについて丁寧に説明します。わからないことがあれば、どんな些細なことでもお気軽にご質問ください。


2. リラックスできる環境づくり

検査室は清潔で落ち着いた雰囲気を心がけ、BGMを流すなど、リラックスできる環境づくりに配慮しています。


3. 経験豊富なスタッフによるサポート

経験豊富な医師と看護師が検査を担当し、常に患者さんの状態に配慮しながら検査を進めます。不安な表情や仕草にも敏感に反応し、声かけや励ましを行います。


4. 個別対応の実施

特に強い不安をお持ちの方には、より時間をかけた説明や、必要に応じて段階的な導入(最初は鎮静なしで少しだけ挿入してみる、次回は鎮静ありで行うなど)も検討します。



鎮静下での胃カメラ検査の流れ

鎮静剤を使用した胃カメラ検査は、以下のような流れで行われます。実際の流れをイメージすることで、不安軽減につながりますので、ぜひ参考にしてください。


検査前の準備

1. 問診と同意取得

検査当日、まず問診が行われます。アレルギーの有無、現在服用中のお薬、前回の鎮静剤使用時の反応などを確認します。また、鎮静剤使用についての説明と同意を改めて確認します。


2. 検査着への着替え

検査を受けやすい服装(検査着など)に着替えていただきます。貴重品や眼鏡、入れ歯などの取り外しも行います。


3. バイタルサイン測定

血圧、脈拍、酸素飽和度などのバイタルサインを測定します。


4. 点滴ラインの確保

腕の静脈に点滴の針を刺し、点滴ラインを確保します。このラインから鎮静剤を投与します。


検査直前の処置

1. モニター装着

心電図、血圧計、酸素飽和度モニターなどを装着し、検査中の全身状態を常に監視できるようにします。


2. のどの局所麻酔

内視鏡挿入時の不快感を軽減するため、のどの局所麻酔を行います。キシロカインスプレーを吹きかけたり、ビスカスをうがいしていただいたりします。


3. マウスピース装着

内視鏡の挿入部分が歯や口腔内を傷つけないように、マウスピースを装着します。


4. 鎮静剤の投与

点滴ラインから鎮静剤を少量ずつ投与します。「眠くなってきましたか?」「リラックスできていますか?」などと声をかけながら、効果を確認します。適切な鎮静状態になったことを確認してから検査を開始します。


検査中

1. 内視鏡の挿入

左側臥位(左側を下にした横向きの姿勢)になっていただき、マウスピースから内視鏡を挿入します。


2. 観察と処置

食道、胃、十二指腸を順に観察します。必要に応じて、組織の一部を採取したり(生検)、ポリープを切除したりする処置を行うこともあります。


3. 声かけとケア

検査中も、医師や看護師が常に声かけを行い、状態を確認します。「大丈夫ですか?」「もう少しで終わりますよ」など、安心感を持っていただけるような配慮をします。


4. バイタルサインのモニタリング

検査中は継続して血圧、脈拍、酸素飽和度などのバイタルサインをモニタリングし、異常があればすぐに対応します。


検査終了後

1. 内視鏡の抜去

検査が終了したら、内視鏡をゆっくりと抜去します。


2. 回復室での観察

検査後は回復室で横になっていただき、鎮静剤の効果が切れるまで観察します。バイタルサインのモニタリングは継続して行います。


3. 覚醒の確認

徐々に意識が戻ってくるのを確認します。「お名前を教えてください」「何年生まれですか」など簡単な質問に答えられるか確認します。


4. 検査結果の説明

十分に覚醒したことを確認した後、検査結果について簡単に説明します(詳しい説明は後日の診察時に行うこともあります)。



鎮静下の意識とは?ウトウトしている感覚?


鎮静状態での主観的体験

鎮静剤を使用した際の体験は、人によって様々ですが、多くの患者さんからは以下のような感想が聞かれます。


1. 「ウトウトした感覚」

最も多いのは「昼寝をしているような感じだった」という表現です。完全に眠っているわけではなく、時々周囲の声や音が聞こえたり、何か言われれば反応できるような状態です。


2. 「時間の経過が早く感じられた」

検査中の時間感覚が曖昧になり、「気がついたら終わっていた」という体験をされる方が多いです。実際には30分程度かかる検査でも、「5分くらいだった?」と感じることもあります。


3. 「記憶が部分的に抜け落ちている」

検査の一部の記憶はあるが、全体の流れは覚えていないという場合も多いです。これは鎮静剤の「健忘効果」によるもので、不快な体験の記憶を残さないという利点があります。


4. 「夢を見ているような感覚」

鎮静状態では、夢と現実の境界が曖昧になることがあります。「何か不思議な夢を見ていた」という感想を持たれる方もいらっしゃいます。


鎮静の深さと個人差

鎮静剤の効果には大きな個人差があります。同じ量の鎮静剤でも、ほとんど眠くならない方から、深く眠ってしまう方まで様々です。この個人差に影響する要因としては以下のようなものがあります。


1. 年齢

一般的に高齢になるほど、少量で効果が強く出る傾向があります。そのため、高齢の方には慎重に少量から投与します。


2. 体重・体格

体重が少ない方は、少量で効果が出やすい傾向があります。投与量は体重に応じて調整しています。


3. 普段の飲酒習慣

アルコールを日常的に多量に摂取している方は、鎮静剤の効きが悪いことがあります。


4. 睡眠薬・抗不安薬の使用歴

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬を常用している方は、耐性ができているため効果が弱い場合があります。


5. 性格・不安の程度

緊張しやすい性格の方や、検査に対する不安が強い方は、同じ量でも効果が異なることがあります。


鎮静レベルの調整

当院では、患者さんの状態や反応を見ながら、適切な鎮静レベルになるよう鎮静剤の量を調整しています。一般的に目標とする鎮静レベルは以下の通りです。

  • 声かけに対して開眼や返答などの反応がある

  • 呼吸や循環動態が安定している

  • 不快感が軽減され、リラックスした状態である

過度な鎮静(深鎮静)は呼吸抑制などのリスクが高まるため、通常は避けています。一方、鎮静が不十分だと不安や不快感が残るため、患者さん一人ひとりに最適な鎮静レベルを見極めることが重要です。


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検査後の注意点とリカバリー時間


検査後の回復過程

鎮静剤の効果が切れる時間は、使用する薬剤の種類や量、個人の代謝能力などによって異なります。一般的なミダゾラムの場合、以下のような回復過程が見られます。


1. 初期覚醒(検査終了後30分〜1時間)

眠気が徐々に薄れ、簡単な会話や指示に従うことができるようになります。ただし、この段階ではまだ判断力や記憶力は完全には回復していません。


2. 中間回復(検査終了後1〜4時間)

日常会話や歩行などの基本的な活動はできるようになりますが、複雑な判断や危険を伴う作業はまだ避けるべき段階です。


3. 完全回復(検査終了後4〜24時間)

鎮静剤の影響がほぼなくなり、通常の活動が可能になります。ただし、個人差が大きいため、慎重を期して24時間は車の運転などを避けるよう指導しています。


検査当日の注意事項

検査当日は以下の点に注意していただくようお願いしています。


1. 移動手段について

検査当日は車やバイクの運転はできません。公共交通機関をご利用いただくか、ご家族やご友人に送迎をお願いしてください。タクシーのご利用も可能です。


2. 食事について

検査後、のどの麻酔が切れていることを確認してから(通常は検査後1〜2時間程度)、水分や食事を摂っていただけます。最初は少量の水から始め、問題なければ徐々に通常の食事に戻ります。


3. 活動制限について

検査当日は激しい運動や入浴(シャワーは可)は避け、安静に過ごしていただくようお願いしています。特に高所作業や危険を伴う作業は控えてください。


4. 飲酒について

検査当日の飲酒は避けてください。アルコールは鎮静剤の作用を増強し、呼吸抑制などのリスクを高める可能性があります。


5. 重要な判断や契約について

検査当日は判断力が低下している可能性があるため、重要な契約や意思決定は翌日以降に延期することをお勧めします。


異常時の対応

以下のような症状が現れた場合は、当院に連絡していただくか、救急医療機関を受診してください。

  • 強い腹痛や胸痛

  • 吐き気・嘔吐が続く

  • 黒い便や血便

  • 38℃以上の発熱

  • 呼吸困難

  • 意識障害

通常、これらの症状が出ることはまれですが、万が一の際に備えて連絡先をお伝えしています。


高齢者のリカバリー時間

高齢の方は、鎮静剤の効果が切れるまでの時間が長くなる傾向があります。これは肝臓や腎臓の機能が加齢とともに低下し、薬物の代謝・排泄が遅くなるためです。そのため、80歳以上の方には鎮静剤の使用自体を控えることもありますが、使用する場合は特に慎重な観察を行います。

また、高齢者は鎮静剤による転倒リスクも高まるため、検査後はベッドからの立ち上がりなどを看護師が介助するなどの配慮をしています。



鎮静剤の副作用やリスク

一般的な副作用

鎮静剤には様々な副作用の可能性がありますが、適切な使用であれば重篤な副作用は比較的まれです。一般的な副作用としては以下のようなものがあります。


1. 呼吸抑制

最も注意すべき副作用の一つで、呼吸回数の減少や浅い呼吸になることがあります。特に高齢者や呼吸器疾患を持つ方、肥満の方などでリスクが高まります。当院では、検査中は常に酸素飽和度をモニタリングし、必要に応じて酸素投与を行うなどの対策を取っています。


2. 血圧低下

鎮静剤により、一時的に血圧が低下することがあります。通常は臨床的に問題となるほどの低下は少ないですが、もともと血圧が低い方や、循環器疾患のある方では注意が必要です。


3. 奇異反応(パラドックス反応)

まれに、鎮静剤を投与すると逆に興奮したり、攻撃的になったりする反応が見られることがあります。これを奇異反応と呼びます。特に高齢者やアルコール依存症の方に見られることがあります。


4. アレルギー反応

どのような薬剤でもアレルギー反応の可能性はあります。皮膚の発疹や痒み、呼吸困難、血圧低下などの症状が現れた場合は、すぐに対応が必要です。


5. 筋弛緩作用による転倒

鎮静剤には筋肉の緊張を緩める作用もあるため、効果が残っている間の歩行は転倒リスクが高まります。そのため、完全に覚醒するまでは看護師が付き添うなどの配慮をしています。


リスク要因と対策

以下のような要因がある方は、鎮静剤使用時のリスクが高まる可能性があります。


1. 高齢(特に80歳以上)

加齢に伴い、鎮静剤の代謝・排泄が遅くなるため、効果が強く出たり、長く続いたりすることがあります。当院では高齢の方には原則として少量から開始し、必要に応じて追加投与するか、場合によっては鎮静剤を使用しない選択肢も検討します。


2. 重度の肝機能障害・腎機能障害

肝臓や腎臓は薬物の代謝・排泄に重要な役割を果たすため、これらの機能障害がある場合は鎮静剤の効果が増強・延長することがあります。検査前の血液検査などで機能を評価し、適切な対応を検討します。


3. 呼吸器疾患(COPD、睡眠時無呼吸症候群など)

もともと呼吸機能に問題がある方は、鎮静剤による呼吸抑制のリスクが高まります。これらの疾患がある方には、より慎重な投与と厳重なモニタリングを行います。


4. 心疾患・循環器疾患

重度の心不全や不整脈、重症の弁膜症などがある方は、鎮静剤による血行動態の変化のリスクが高まります。必要に応じて、循環器内科医との連携や、より安全性の高い薬剤選択を検討します。


5. 薬物相互作用

複数の薬を服用している方は、鎮静剤との相互作用に注意が必要です。特に中枢神経抑制作用のある薬(睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬、オピオイド系鎮痛薬など)との併用では効果が増強される可能性があります。


当院での安全対策

当院では、鎮静剤使用時の安全性を高めるため、以下のような対策を講じています。


1. 適切な患者評価と選択

検査前の診察で全身状態を評価し、鎮静剤使用の適否を慎重に判断します。禁忌や注意が必要な条件がある場合は、個別に対応を検討します。


2. 十分な設備と体制

酸素飽和度モニター、血圧計、心電図モニターなどの監視装置を完備し、万一の際に対応できる救急医療器材(気道確保器具、酸素、救急薬品など)も常備しています。


3. 専門的な研修と訓練

内視鏡医・看護師は鎮静剤使用に関する専門的な研修を受け、副作用や合併症にすばやく対応できるよう訓練を受けています。特に、日本消化器内視鏡学会のガイドラインに沿った安全管理を徹底しています。


4. 緊急時の連携体制

重篤な合併症が生じた場合に備え、近隣の高次医療機関との連携体制を整えています。


5. 個別化された鎮静プロトコル

患者さん一人ひとりの状態に合わせた鎮静剤の選択と投与量の調整を行い、画一的な使用は避けています。特にリスク要因がある患者さんには、より慎重な判断と対応を行います。



鎮静剤と麻酔の使い分け:当院の考え方


患者さん中心の選択

当院では、患者さんの安全と快適さを最優先に考え、以下のような方針で鎮静剤の使用を判断しています。


1. 個別化された判断

年齢、体重、既往歴、併用薬、過去の内視鏡検査での経験、不安の程度など、様々な要素を総合的に評価し、その患者さんに最適な方法を選択します。画一的なアプローチは避け、一人ひとりに合わせた対応を心がけています。


2. 患者さんの希望を尊重

「不安で怖いので鎮静剤を使ってほしい」「意識がある状態で検査を受けたい」など、患者さんの希望を尊重します。ただし、明らかに医学的に不適切と判断される場合(重篤な合併症のリスクがある場合など)は、その理由を丁寧に説明し、別の選択肢を提案します。


3. 段階的アプローチ

初めて内視鏡検査を受ける方や不安が強い方には、最初は少量の鎮静剤から開始し、反応を見ながら調整する方法を取ることもあります。これにより、過剰な鎮静を避けつつ、十分な不安軽減効果を得ることができます。


80歳以上の高齢者への対応

当院では、80歳以上の高齢者には原則として鎮静剤の使用を控える方針としています。その理由は以下の通りです。


1. 副作用リスクの増加

高齢になるほど、呼吸抑制や血圧低下などの副作用リスクが高まります。また、薬物の代謝・排泄能力が低下するため、効果が強く出たり、長く続いたりする傾向があります。


2. 潜在的な疾患のリスク

高齢者では、未診断の認知症や脳血管障害、心疾患などが潜在していることがあり、鎮静剤がこれらの症状を顕在化させたり悪化させたりする可能性があります。


3. 転倒リスク

高齢者は鎮静剤による平衡感覚の低下や筋力低下の影響を受けやすく、検査後の転倒リスクが高まります。

ただし、この方針は絶対的なものではなく、個別の状況に応じて判断します。例えば、以下のような場合は、十分な注意のもとで少量の鎮静剤を使用することもあります。

  • 極度の不安や恐怖心がある

  • 過去の検査で強い咽頭反射があり、検査が困難だった

  • 全身状態が良好で、合併症のリスクが低いと判断される


重篤な基礎疾患を持つ方への対応

重度の心疾患、呼吸器疾患、肝疾患、腎疾患などの重篤な基礎疾患をお持ちの方には、以下のような対応を行っています。


1. 専門医との連携

必要に応じて、それぞれの専門医(循環器内科医、呼吸器内科医など)と連携し、内視鏡検査および鎮静剤使用の適否について判断します。


2. 代替法の検討

鎮静剤のリスクが高いと判断される場合は、のどの局所麻酔のみで行う方法や、細径内視鏡(鼻から挿入する細い内視鏡)の使用など、代替法を検討します。


3. より安全な環境での検査

リスクが特に高い場合は、より高度な監視体制や救急対応が可能な医療機関(総合病院など)での検査を勧めることもあります。


鎮静剤による胃カメラ検査:メリットとデメリット

鎮静剤を使用した胃カメラ検査のメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。


メリット

  1. 不安や恐怖感の軽減

  2. 不快感の軽減

  3. 咽頭反射の抑制による検査の円滑化

  4. 患者さんの体動が少なくなり、より正確な検査が可能

  5. 健忘効果により不快な記憶が残りにくい

  6. 次回検査への心理的ハードルが低くなる


デメリット

  1. 呼吸抑制、血圧低下などの副作用リスク

  2. 検査当日の運転や危険を伴う作業ができない

  3. 回復のための時間が必要

  4. 高齢者や特定の疾患を持つ方では使用制限がある

  5. 追加の費用がかかる場合がある(保険適用外の場合)

これらのメリットとデメリットを総合的に判断し、患者さん一人ひとりに最適な方法を選択することが重要です。


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最後に:安心して胃カメラ検査を受けるために


当院からのメッセージ

胃カメラ検査は、胃や食道の病気を早期に発見し、治療につなげるための重要な検査です。しかし、多くの方が「怖い」「つらい」というイメージを持っていることも事実です。

当院では、そのような不安や負担を少しでも軽減できるよう、鎮静剤の適切な使用を含め、患者さん一人ひとりに合わせた検査方法の提案と丁寧な対応を心がけています。

鎮静剤は魔法の薬ではありませんが、適切に使用すれば多くの方にとって検査をより快適なものにする助けとなります。ただし、すべての方に適しているわけではなく、特に高齢の方や持病のある方には注意が必要です。

何よりも大切なのは、患者さんと医療者の間での十分なコミュニケーションです。検査に対する不安や疑問、希望などがあれば、遠慮なくお伝えください。私たちはそれらを丁寧に聞き、可能な限り対応させていただきます。


胃カメラ検査を前向きに捉えるために

胃カメラ検査に対する不安や恐怖を和らげるために、以下のようなことを心がけていただければと思います。


  1. 正確な情報を得る

インターネットやSNSには時に誇張された情報や古い情報が含まれていることがあります。不安な点は医師や看護師に直接質問するのが最も確実です。


  1. 過去の経験にとらわれすぎない

「以前つらかった」という経験をお持ちの方も多いですが、内視鏡検査の技術や機器は日々進歩しています。以前と同じだと決めつけずに、新しい経験として臨んでみてください。


  1. 検査の意義を理解する

胃カメラ検査は単なる不快な経験ではなく、自分の健康を守るための大切なステップです。早期発見・早期治療につながる重要な検査であることを意識すると、心構えも変わってくるかもしれません。


  1. リラックス法を活用する

検査前の数分間、深呼吸をしたり、好きな音楽を聴いたり、リラックスできる画像をイメージしたりすることで、緊張を和らげることができます。

当院では、これからも患者さんの立場に立った検査環境の提供に努めてまいります。「胃カメラ検査は怖くない」と実感していただけるよう、スタッフ一同、日々研鑽を重ねています。

どうぞ安心して検査をお受けください。あなたの健康をサポートすることが、私たちの最大の喜びです。


 
 

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