萎縮性胃炎とは?原因・症状・検査・治療を徹底解説
- たかの
- 8月30日
- 読了時間: 11分

萎縮性胃炎は、慢性に続く胃の炎症により胃粘膜が薄くなり、胃酸分泌や消化機能が低下してしまう状態です。とくにピロリ菌感染が関与する場合が多く、そのまま放置すると胃がんリスクが高まる可能性があります。
進行した萎縮性胃炎では、症状が目立たない一方で、腸上皮化生など粘膜に変化が生じやすく注意が必要です。慢性的な胃もたれや食欲不振が気になる方は、あらかじめ萎縮性胃炎について知ることで早期対策がとれるでしょう。
本記事では萎縮性胃炎の原因から検査方法、具体的な治療法や日常生活での予防・再発防止策までを解説します。基礎知識をおさえ、定期的な検査や生活習慣の見直しを行うことが健康維持の鍵になるでしょう。
萎縮性胃炎と慢性胃炎の関係
まずは萎縮性胃炎の元となる慢性胃炎とのかかわりを明確に理解することが重要です。
慢性胃炎とは、胃粘膜で長期にわたり炎症が続いている状態を指します。そのなかでも、ピロリ菌に長期感染しているケースでは胃粘膜のダメージが進み、より深刻な萎縮性胃炎へ移行していくことが多いです。萎縮が進むことで、胃の粘膜はもとの厚みを失い、胃酸の分泌バランスや消化機能にも影響が及びます。
また、慢性胃炎は無症状の場合もあれば、軽度の胃もたれや食欲不振、腹部膨満感などの症状が断続的に現れることもあります。こうした段階で医療機関を受診すれば、早期発見や対処が可能です。そのため、些細な症状でも軽視せずに検査を受けることが望ましいでしょう。
長引く慢性胃炎が移行する萎縮性胃炎は、胃粘膜の変化が進行して胃がんリスクを高める点で見逃せない存在です。自覚症状が乏しいほど発見が遅れる傾向があるので、こまめな内視鏡検査などで状態を確かめることが予防につながります。
萎縮性胃炎のメカニズム
萎縮性胃炎はどのような仕組みで発症し、進行していくのかを知ることで対処法が見えてきます。
慢性の炎症が続くなかで胃粘膜が徐々に薄くなり、正常な組織が減少するという点が萎縮性胃炎の特徴です。胃が自分自身を守るための仕組みも損なわれやすくなるため、刺激物や日常的なストレスによるダメージが大きくなりやすいです。
最初のうちは胃酸分泌が過剰になったり乱れたりすることもありますが、進行すると十分な胃酸が分泌されなくなるケースもあります。消化や殺菌の働きが衰えれば、他の疾患も誘発しやすくなるので注意が必要です。
萎縮に伴って起こる腸上皮化生は、胃粘膜が腸粘膜のように変化する状態で、胃がんリスクと関連が深いことで知られます。そのため、早めに胃の状態を把握し、原因に応じた治療や生活習慣の修正を行うことが望ましいでしょう。
ピロリ菌による萎縮性胃炎
萎縮性胃炎の多くは、ピロリ菌が引き起こすB型胃炎から進行するケースです。ピロリ菌は胃の内壁で慢性的に炎症反応を起こし、時間とともに胃粘膜が破壊され萎縮へとつながります。感染経路としては、幼少期に井戸水や家族間で共有された食器などを通じて感染することが多いと考えられています。
ピロリ菌による炎症は進行速度にも個人差がありますが、除菌を行わず長期間放置すれば、萎縮を加速させる要因になります。このため、早期に感染を確認し適切な除菌治療を受けることが重要です。除菌によって胃粘膜の状態が大きく改善することはありますが、萎縮がすでに進んだ部分については元に戻りにくいという報告もあるため、早期対応が肝心です。
また、ピロリ菌に感染している人ほど胃がんの発生リスクが高いことが分かっています。萎縮性胃炎になってからの除菌も大切ですが、感染の有無をできるだけ早く知り対処することで、より効果的に胃粘膜を守ることができるでしょう。
A型胃炎(自己免疫性胃炎)
萎縮性胃炎の一部は自己免疫性反応によって起こるA型胃炎と呼ばれます。これは自分の身体の免疫が胃粘膜の細胞を誤って攻撃してしまうことで炎症が慢性化し、結果的に萎縮につながるという仕組みです。B型とは異なり、ピロリ菌感染ではなく自己免疫が主たる原因となります。
A型胃炎では、鏡検査で胃粘膜の変化が見られるだけでなく、ビタミンB12の吸収障害などの合併症を引き起こすこともあります。また、貧血が起こりやすいのも特徴で、血液検査や症状の経過から疑われるケースが多いです。
自己免疫性が原因であっても、萎縮の進行を抑えるためには継続的な治療や生活習慣の改善が必要です。症状の現れ方がまばらで気づきにくいこともあるため、気になる症状がある方は早めに医師の診断を受けましょう。
萎縮性胃炎の主な症状とセルフチェック
萎縮性胃炎は特徴的な症状が乏しいこともあり、別の胃疾患と区別しにくい点も注意が必要です。
多くの場合、胃もたれや軽度の胃痛、食欲不振、げっぷなどの症状がみられます。しかし、これらはいずれも他の胃疾患でも起こりうる症状であるため、萎縮性胃炎と特定できるとは限りません。自覚症状があっても、慢性の変化はゆるやかに進行するため、見過ごしやすいのが実情です。
萎縮が進むと、胃酸が不足しがちになり、食後の消化不良や腹部膨満感を強く感じる場合もあります。食事量の減少が続くと栄養状態の低下にもつながるため、早めに医療機関で検査を受けるのが安心です。
セルフチェックとしては、長引く胃もたれや軽い痛みの頻度を観察することが挙げられます。ストレスや飲酒・喫煙などで症状が出やすい人は、萎縮性胃炎が進みやすい生活環境かもしれません。定期的に状態を確認し、症状が続くか悪化するようであれば早期に専門医へ相談しましょう。
萎縮性胃炎の検査方法
萎縮性胃炎を確定診断するには、適切な検査で胃粘膜の状態を把握することが欠かせません。
主に内視鏡検査と血液検査が中心となり、萎縮の程度や原因を究明するのに役立ちます。特にピロリ菌感染とも深い関連があるため、必要に応じてピロリ菌検査も併せて実施されます。
検査を受けるタイミングは、胃もたれや食欲の低下などが続く場合はもちろん、健康診断の二次検査で指摘されたときも見逃せません。萎縮性胃炎が既に進行している可能性もあるため、症状の程度にかかわらず胃カメラ検査を検討しましょう。
結果に基づいて具体的な治療プランや生活指導が行われるため、早期に検査を受けることで重症化を防ぎやすくなります。その際には医師の指示に従い、定期的なフォローアップを心がけることが重要です。
内視鏡検査(胃カメラ)の重要性
内視鏡検査は、胃の内部を直接観察して萎縮がどの程度進んでいるかを確認できる最も確実な方法です。異変があればその場で組織を採取して病理検査を行い、腸上皮化生などの状態も詳しく調べられます。
検査時には痛みや不快感を軽減するために、鎮静剤や経鼻内視鏡が選択される場合もあります。患者の希望や体調を考慮した検査法により、負担を軽くして正確な診断を得られるように工夫されています。
内視鏡検査は年に1回ほどのペースで受けると、萎縮の進行程度や新たな病変を早期に発見できます。とくにピロリ菌感染歴がある人や胃もたれが慢性化している人は定期的な検査が欠かせません。
血液検査・ピロリ菌検査
血液検査では、胃粘膜の状態を反映するとされるペプシノーゲン値やビタミンB12などの数値を確認することで萎縮の進行度を推定することができます。あわせて貧血や炎症の有無もチェックし、A型胃炎の場合には自己抗体の有無を調べることもあります。
ピロリ菌検査には、血中抗体の測定や尿素呼気試験、便中抗原検査など複数の方法が存在します。いずれの検査も精度が高く、感染の有無を早期に確認できるため、萎縮性胃炎が疑われる際には積極的に実施されます。
陽性判定が出た場合には、状態に応じて除菌治療が提案されることが一般的です。除菌に成功しても胃粘膜が完全に元通りになるわけではありませんが、さらなる萎縮や胃がんを防ぐうえで極めて重要です。
萎縮性胃炎の治療方法
萎縮性胃炎の治療は主に原因へのアプローチと症状緩和の対策に分かれます。
ピロリ菌感染がある場合には、まず除菌治療が優先されます。自己免疫が原因の場合には、症状緩和と合併症予防を念頭に薬物療法が行われることが多いです。どのケースでも、痛みや不快感をやわらげる薬物療法と並行して食生活や日常習慣の見直しを進める必要があります。
治療の目的は、萎縮の進行をくい止めることと、胃がんリスクをできる限り低減することにあります。早めに対応すれば、炎症がある程度コントロールされ、症状の軽快や再発リスクの低減が期待できます。
医師の方針によってはまだ症状が軽減していなくても続けて治療を行うことで、萎縮の進行を緩やかにすすめられます。いずれにしても継続的なフォローアップを受けることが重要であり、自己判断での中断は避けましょう。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌を発見したら、抗生物質と胃酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌治療を行います。大多数のケースで、一度目の除菌で成功する可能性が高いですが、失敗した場合は別の抗生物質レジメンによる再治療が検討されます。
除菌が成功すると、炎症の進行が食い止められ、胃がんのリスクも一定程度低下するとされています。ただし、萎縮が既に進んでいる部分が劇的に回復するわけではないため、定期的な検査とフォローが不可欠です。
除菌後にも胃カメラを定期的に受けることで、新たに生じる病変を早期に見つけられます。成功後1年後など、医療機関の指示に合わせて計画的に通院することが大切です。
薬物療法と生活習慣の改善
萎縮性胃炎の進行を抑えるためには、胃酸の分泌をコントロールする薬や胃粘膜を保護する薬を用い、症状を緩和することが一般的です。痛みや不快感があるときには早めに受診して、医師と相談しながら適切な薬を選択していきます。
あわせて重要なのが、生活習慣の見直しです。暴飲暴食や過度の飲酒、喫煙、ストレス過多などは胃粘膜のダメージを増大させ、萎縮の進行を加速させる可能性があります。まずは食事バランスの改善や規則正しい食事時間を意識することから始めるとよいでしょう。
さらに、睡眠不足や強いストレスも胃の機能を低下させる要因となります。自分に合ったリラクゼーション法を取り入れながら、適度な運動と十分な休息を心がけることで、薬物療法の効果を高め、再発を防ぎやすくなります。
萎縮性胃炎と胃がんリスク
萎縮性胃炎が長期化すると、胃粘膜に腸上皮化生が生じやすくなり、胃がんのリスクが高まります。
萎縮の進展とともに粘膜の防御機能も衰え、正常な細胞ががん化する環境をつくりやすくなります。ピロリ菌感染が関与している場合は特にリスクが高まるため、早期に除菌治療を行うことが望ましいです。
また、胃がんの発生には遺伝や生活習慣など複数の要因が組み合わさるケースも考えられます。萎縮性胃炎と診断された方は、よりこまめに内視鏡検査を受け、がん発生の兆候がないか定期的にチェックしましょう。
胃がんを早期に見つけるためには、年1回程度の検査を継続しながら、普段から胃もたれや体調変化のサインに敏感になることが大切です。万一がんが見つかった場合も、早期であれば治療成績は良好です。
予防・再発防止のための食事と生活習慣
萎縮性胃炎が進まないように、そして再発を防ぐためには毎日の習慣づくりが欠かせません。
まず、食事面では香辛料やアルコールなどの刺激物を控え、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。無理なダイエットや極端な偏食は胃の負担を増やし、再発リスクを高めます。タンパク質やビタミン、ミネラルを適度に摂取しながら、胃をいたわるメニューを意識しましょう。
生活面では睡眠を十分に確保し、ストレスを適切にコントロールする工夫が重要です。リラックスできる時間を確保する、防ぎきれないストレスは軽い運動などで発散するなど、自分なりの方法を持っておくと長期的な健康維持に役立ちます。
また、定期的な検査や医師のフォローアップを欠かさないことも再発防止には欠かせません。症状が出なくても、萎縮が進んでいる可能性はゼロではありません。早期発見と早期対処を徹底し、胃の状態を常に把握しておくようにしましょう。
まとめ・総括
萎縮性胃炎は、放置すると胃がんリスクを大きく高める可能性があるため、早期の発見と継続的なケアが不可欠です。
原因としてはピロリ菌感染や自己免疫反応が中心にあり、いずれのケースでも長期間の炎症が胃粘膜を萎縮させます。症状が軽妙で気づきにくいからこそ、定期的な胃内視鏡検査や血液検査が重要です。
除菌治療や薬物療法、そして食事やストレス管理を含む生活習慣の見直しによって、萎縮や炎症の進行を抑えることができます。定期的なフォローアップと適切な治療を続けることで、胃の健康を守り、将来的なリスク低減にもつなげられるでしょう。
自覚症状がなくても油断せず、自分の胃の状態を把握しておくことが大切です。少しでも不安を感じたら専門医を受診し、早めの行動を心がけることで、健康的な食生活と日常を維持できます。